見出し画像

アダコテックのコア技術「HLAC」ってなに?

製造業×AIのアダコテックでAIエンジニアを務めている伊部です。アダコテックには創業時からエンジニアとして携わっています。
この度、2022年4月にアダコテックはシリーズBで11億円の資金調達を実施したことを発表しました。

このnoteでは、アダコテックのコア技術である「HLAC」について、詳しく解説していきます!

HLACってなに?

HLAC (Higher-order Local Auto-Correlation;高次局所自己相関)特徴は、産業技術総合研究所(以下「産総研」という)の特許技術で、画像の特徴を認識する日本発の技術です。

HLACが発明されたのは1978年ですが、近年ではコンピュータやカメラの高度化で画像を容易に扱えるようになり、画像認識へのニーズが高まったことで、2000年代中盤から本格的に実環境へ応用するための研究がされてきました。

発明したのは、大津の二値化の発明者でもある大津展之先生です。大津の二値化といえば、画像処理エンジニアであればきっと何気なくいつも使っている二値化の手法で、OpenCVであれば、cv2.THRESH_OTSU と指定している、二値化のためのいい感じのしきい値を求めるやつです。大津先生は、アダコテックの技術顧問でもあり、毎月1回行われる技術会議にてご指導をいただいています。大津先生の画像認識技術を扱っているベンチャーだと知って、弊社にJoinしたエンジニアもいるくらい、画像認識の領域において権威のある先生です。

HLACってどんな技術?

HLACは特徴抽出手法であり、多変量解析手法と組み合わせて使用します。

HLACを利用した認識技術の枠組み

HLACには3つの特徴があります。

  • 位置不変性 ・・・ パターンから抽出される特徴x は対象の位置に依らない(平行移動不変である)こと

  • 画面加法性 ・・・ 画面全体に対する特徴が個々の対象の局所特徴の和になること

  • 適応学習性 ・・・ 従来法のように特徴抽出がheuristic な手順として与えられ、認識課題が変わると再度構成法も変わるというのではなく、例からの学習によって課題に適した新特徴y が初期特徴x から最適に自動構成(合成)され、課題の変化にも構造を変えることなく適応的に最適化される汎用的な方式であること

HLACは下記の式で表されています。

高次局所自己相関関数の式

HLACは、下図のような 3x3 ピクセルの25種類のパターンを用いて検査したい画像をスキャンしていき、パターンの数を数えます。

HLACのマスクパターン

HLAC特徴と、汎用的な多変量解析手法を組み合わせることにより、異常検知、多クラス識別、計数など様々な分野に応用することができます。

異常検知手法の図

HLACは何に使えるの?

HLACは、さまざまな異常検知に活用でき、拡張すれば画像以外にも応用できます。

  • 画像 → 異常検知・他クラス識別・計数

  • 動画 → 異常行動検知

  • 音声データ → 異常音検知

  • センサデータ → 異常信号検知

アダコテックの社員が、HLACについてとてもわかりやすく説明した記事を書いているので、こちらもご覧ください。

ディープラーニングとはどう違うの?

AIといえば、ディープラーニング(深層学習)を思いつく人が多いと思います。では、ディープラーニングと、HLACを用いた検査技術では、どのような違いがあるのでしょうか?

用意するデータの数
HLACの場合は、正常データのみを学習に用い、枚数も100枚程度で学習することが出来ます。対して、
DLの場合は、正常データの他に不良データも必要で、10000枚ほどの大量の教師データが必要になります。

計算コスト
HLACの場合は、線形計算のみなので計算量も少なく、高速に学習することができ、GPUが不要のため、10万円程度のパソコンで計算できます。
DLの場合は、大量の計算資源が必要で、GPUを積んだ高価なコンピュータが必要になります。

説明可能
HLACの場合は、パターンで意味づけされていて、線形計算のみで処理されるため、説明可能なロジックとなっています。
DLの場合は、学習したモデルがブラックボックスになってしまい、どうしてそのような学習結果になったかわからないという問題があります。

アダコテックの技術の特徴

アダコテックはなぜ検品の自動化に取り組んでいるの?

目視検査の作業は、人の目でみて製品や部品にキズやヨゴレ、ヘコミなどがないかをチェックする作業です。これは、とても過酷な単調作業で、立ちっぱなしで一日8時間、何百何千個という部品に対してミクロン単位のとても小さな欠陥を見つける作業です。

万が一不良品を見逃したら大損失にも直結するため、検査員にとってはプレッシャーもかかります。また、単純そうな作業と思われますが、欠陥を見極めるのは難しく、とても長い経験が必要なので、匠の技と化している現場もあります。そして、人が検査することの欠点として、人によっても判断基準が違ったり、体調によっても判断基準が変わってくるため、検査結果にブレが出てきます。

さらに、圧倒的な人不足や高齢化など、検査を取り巻くさまざまな問題があります。

そのため、目視検査を自動化することで、定量的な基準で検査ができ、瞬時に判定できるなど、大きなメリットとなります。

なぜ、HLACの異常検知の技術が検品に最適なのかというと、まずひとつに、正常から逸脱しているものを見つけるというアプローチを利用している点です。異常というのは様々なものがあり定義するのは難しいのですが、正常から逸脱しているものを異常と定義しているので、良品サンプルのみで学習できます。不良品は、実際にはあまり出ない製品もあり、N数を集めるのはかなり大変ですが、HLACの技術では、作成したモデルが正しく判定できるかのテストにのみ不良品サンプルを使用しているので、たくさん集める必要はありません。

また、学習時・検査時の計算コストがとても軽いです。シンプルな線形計算と統計的手法でモデルを作成しているので、瞬時に計算できます。そのため、高価なハードは不要で、多数の検品をするタクトタイムが厳しい現場にも適用できます。

こういった理由から、HLACは検査の現場に非常に適した技術といえます。

最後に

今回はアダコテックのコア技術について紹介させていただきました!興味を持っていただいた方は、こちらのオンラインイベントもぜひ覗いてみてください。

アダコテックの技術顧問を務める、産総研の村川正宏先生をゲストとしてお迎えし、AIを社会実装していくために必要な観点についてお話しいただきます。

また、カジュアル面談も歓迎しておりますので、気になっていただいた方はお気軽にお申し込みください!
カジュアル面談はこちら


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?