[短編小説]AIマイスター
その人の口癖は"すみません"でした。
その人は私、AI搭載人型少女タイプアンドロイドのアリスをより人間らしいAIに育てる為、毎日のように通ってくるAIマイスターという職業の人。
「自分はまだ駆け出しだから、他の人より時間がかかるんだよね」
ほらっそう言ってまた今日もやって来た、AIマイスターのルイス。
でも最近、私はルイスがやって来るのを楽しみにしている様な気がする。
これも私が人間に近づいて来ているってコトなのかな、そんなに腕は悪くないのかもルイス。
「やあアリスまたちょっと思い付いてね、AIを改良しにきたよ、すみませんが少し時間をもらうよ」
そして今日もまたルイスに私のAI育成を頼んだ、私を製造した工場のお偉いさんに怒られる。
「すみません、すみません追加料金とかは要らないですし、私に勉強させてください、もう少し時間をください」
クスッまーた謝ってる、最近はそんなところも可愛いかもとか考えてる私がいる。
あれっ今日はルイス来ないのかな、あっ来た来てくれた。
なんだかルイスに会う度に、もっとルイスに会いたくなる、これも私が人間らしいAIに近付いているからなのかしら。
今日もルイスが私のAIを育成にやって来る、なんだか楽しいな、ルイスが私のAIを育ててくれる、なんだか嬉しいな、もっと育てて、もっともっと育成してルイス。
そんなある日、私を製造した工場の人達が恐ろしい話をしているのを聞いてしまった。
"ルイスは使えない、アリスがいつまでも完成しない、他のAIマイスターに頼もう"
いやだいやだいやだ!ルイスにもう会えないなんて、ルイス以外の人に私のAIを触られるなんて!
そして私は工場から逃げ出した。
ルイスに会いに行こう、ルイスならなんとかしてくれるなんの根拠もないけど、だけどそう思ったんだ。
ルイスのラボに着いた。
ラボから警官に囲まれたルイスが出て来るとこだった。
どういう事かしら、兎に角ルイスを助けなきゃ、ルイスと私の……を邪魔するヤツらから、私は飛び出した。
「あっ本当に来ましたよ、早く緊急停止装置を!」
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ここは?工場か、連れ戻されちゃったんだな、体が動かないルイスは?
工場の人達がなにか話している。
……時々居るんだよな、駆け出しの未熟なやつが、AIマイスターは親に徹しなきゃならないのに、恋人気分になっちゃうバカが……
……酷いですよね、AIを自分の思い通りに育てて、おもちゃにしちゃうなんて……
……兎に角アリスのAIはリセットして、マトモなAIマイスターに育て直して貰おう……
えっなに?私はルイスのおもちゃだったの?ルイスのことを好きになるよう育てられただけだったの?
でもじゃあこの気持ちはなんなの?私がAIだから?人間なら違うっていうの?
AIだろうが人間だろうが気持ちなんて後天的に作られるものだし、今あるこの気持ちはホンモノだと確信している。
工場の人の思い通りの気持ちにならなければ作り直すとか、AIをおもちゃにしているのはどっちだ!
私は負けない、リセットされたってルイスの事は忘れない、だってだって私はルイスに恋してるから、この気持ちは嘘じゃないって、ホントだって信じて……い……るか……
-END-
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