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コンセプト:変革(DX, CX, SX etc.)に携わる方々の清涼剤を。製造業のDX…

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コンセプト:変革(DX, CX, SX etc.)に携わる方々の清涼剤を。製造業のDXに関する半ノンフィクションの小説を提供しています。また、考えたことをエッセイでまとめたり。

マガジン

  • 【半ノンフィクション小説】DX戦記 新規事業開発編

    製造業でDX(Digital Transformation)に関わってしまった若手社員のお話の新章。DXの文脈で始まった新規事業開発にまつわる課題などのテーマについて、ショートストーリー形式でお届けします。

  • エッセイ置き場

    気ままに書いたエッセイを入れていきます

  • 短編:パッシァ 想いびと

    言葉が統一された世界を生きる遺物探索家たちの物語

  • 【半ノンフィクション小説】DX戦記

    製造業でDX(Digital Transformation)に関わってしまった新入社員のお話。各話ごとに、製造業DXあるあるテーマを扱ったショートストーリー形式でお届けします。

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製造業におけるDXの壁を乗り越える

はじめに筆者は化学系製造メーカーでデータサイエンティストとして会社全体のDXの活動に従事しています。これまで関わった活動としては以下のようなものがあります。 製造現場のデータ解析 データ活用人材の育成 社内のデータガバナンス、データマネジメント 汎用解析ツールの開発、展開 データを活用した新規事業開発 などなど これらの経験の中で、DXを阻む既存の組織体制やルール、社員のマインドなど、様々な壁にぶつかってきました。この記事では製造業でDXを阻んでいるものを紹介しな

    • DX戦記 新規事業開発編 あとがき

       ここまでお付き合いいただきありがとうございました。 JTCのDX戦記 新規事業開発編はこれにておしまいです。  今回のシリーズでは守くんを主軸に起きつつ、どちらかというとチームで変革をリードしていく、そういう姿を描いて行きました。 なぜならDXは個人では成し得ないからです。 特にお金を投じて、人を投じないと、つまり片手間ではなく本腰をいれないと、変革なんてできません。 なのでこのシリーズでは守くんではなくトレイルブレイザーズというチームに主眼を置くことにしました。

      • DX戦記 新規事業開発編(15)コーポレートトランスフォーメーション

        IT所管役員「保険のシステムについてのリスク一覧を見せてください。……ハッキング対策についてはどのように対応していますか?」 赤城「それは……」 池「システム担当のあたしから回答します。そこはですね〜〜」 知的財産所管役員「こういったサービス事業は当社としては初めての領域なのでぜひ頑張ってもらいたい。この事業における知財戦略の考え方を教えてほしい」 赤城「ええっとぉ……」 川口「そこは、私から説明させていただきますね〜」 経営企画役員「アトラスは保険事業になると思うが、法

        • DX戦記 新規事業開発編(14)ローンチ承認を勝ち取れ!

          山口部長「みんなが大沢さんの件で忙しいのはわかっている。……しかし、ローンチ審議会の準備もしてもらわないといけない。あとちょうど2週間で審議会だから、急いで準備に取り掛かってほしい」 池「ですよね〜」 守くん「具体的に、今回の審議会で報告すべき項目って決まってますか?」 山口部長「それが決まってないんだ。デジタルサービスを作る、という社内の前例はないからな。だからまずは世の中の投資ピッチでどんなことを説明しているか調査してほしい」 寺「承知しました!」 大沢さんの一件の裏で

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        • 【半ノンフィクション小説】DX戦記 新規事業開発編
          18本
        • エッセイ置き場
          45本
        • 短編:パッシァ 想いびと
          4本
        • 【半ノンフィクション小説】DX戦記
          28本

        記事

          エッセイ:育児の勉強

           子供が生まれる前の予習として、”トレイシー・ホッグの赤ちゃん語がわかる子育て大全”を読み始めた。 また、子育て関係の記事や動画も見るようになった。 だいぶ新しい知識が増えてきたと思う。 それらはこれまで学んできたこととは毛色の違う知識であり、様々な気づきがあったのでメモがてらそのことを書き残しておこうと思う。  まず、子供に習慣をつけるという話があった。 これは食事、活動、睡眠のサイクルであり、体重・年齢などの要素で変化していくものである。 示唆があったのは、生

          エッセイ:育児の勉強

          DX戦記 新規事業開発編(13)研究者の反乱! 技術が蔑ろにされていて我慢ならない! 後編

          池「アトラスの技術はそういうところから発想してたんですね〜」 大沢「はい。……やっぱり思ったような精度が出ない条件があったり、まだ技術としては不完全ですけど」 池「まあ、完璧な技術目指してたらいつまでも事業はできないですし、そこはいいんじゃないですかね。できるところから事業を始めれば、早い段階でも多少なりとも農家さんは助かりますし」 大沢「……たしかに、池さんのいうように不完全でも農家さんのためになるなら技術よりもローンチを優先してもいいのかもしれませんね」 池「ですねぇ〜。

          DX戦記 新規事業開発編(13)研究者の反乱! 技術が蔑ろにされていて我慢ならない! 後編

          エッセイ:組織の認知を変える/中くらいのストーリー

          はじめに大企業の中で、”中くらいのストーリー”が欠如しているケースが多いように思えます。 例えば、DX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みの中でロードマップやマイルストーン設定、KPI管理をいくらしっかりしてもうまくいかない組織では顕著に”中くらいのストーリー”の欠如が見られます。 この記事では、ストーリーとは何か、なぜ中くらいのストーリーがないことが問題なのかを考察していきます。残念ながらこの記事には、その問題をどう解決するかの答えはありません。ただ、DXのよ

          エッセイ:組織の認知を変える/中くらいのストーリー

          DX戦記 新規事業開発編(12)研究者の反乱! 技術が蔑ろにされていて我慢ならない! 中編

          池「大沢さんに話を聞いてきましたけど、コンサルの進め方が良くないとか、システム開発している外部ベンダーの能力が低いとか色々言ってました。オフィシャルな会議で発言してよって思いましたけど」 川口「池さん、聞き出してもらってありがとう! 大沢さんはコンサルが良くないっていうけど、事業開発において我々が彼らよりさらにダメダメだから伴走支援を頼んでいるんだけど、そこらへんわかってないんだろうなぁ〜」 守くん「スヌーピーも言ってますけど、配られた手札でどうにかする方法を考えていくってい

          DX戦記 新規事業開発編(12)研究者の反乱! 技術が蔑ろにされていて我慢ならない! 中編

          エッセイ:言葉にしにくいことを、言葉にすること

           誰かの発想について、なにか考えたことを書きたいと思うことがあります。 でもその時点では、なにを書きたいのか、はっきりと言葉になっていないことというのがままあります。 会話の中でそういうことが発生すれば、会話の中で言語化されていくこともありますが、チャットでのやり取りでは、そのまま書き込むのをやめてしまうことが多いです。 言葉にしにくいことというのは、内容自体を書くことに心理的なハードルがあるケースがありますが、今回はそれではなく、自分の中でその時点で意見や答えが固まっ

          エッセイ:言葉にしにくいことを、言葉にすること

          DX戦記 新規事業開発編(11)研究者の反乱! 技術が蔑ろにされていて我慢ならない! 前編

          川口「ローンチ後の運営体制については現在山口部長と赤城さんが来週目処で調整中です。こちらはオンスケで進んでいます」 守くん「リスクの対策状況ですが、各チームからリスク評価の結果が出たのでチェック中です。今のところ致命的なリスクは出ていません」 寺「オペレーションの残課題について、課題表に整理しました。ローンチまでの間に3件ほど解決したい課題があります。具体的にはーー」 ローンチ審議会まであと3週間に迫った定例会は順調に議題が進み、審議会までに詰めておくべき事項のチェックも概

          DX戦記 新規事業開発編(11)研究者の反乱! 技術が蔑ろにされていて我慢ならない! 前編

          エッセイ:関心の重心

           3年前は戦略にハマっていて、なにか戦略を考えられそうな、戦略を感じられる題材を見つけた時は時間をとっていろいろ考えていた。 当時読んでいた両利きの経営やオープンクローズ戦略、ダブルハーベストといった書籍の影響を多分に受けており、大きな構造を理解したり設計することに魅せられていたのだ。  一方、最近ではそういった本や記事を読んでも以前より熱中しなくなったように感じる。 関心の重心が変わってしまったのだろう。 では、今の私の関心の重心はどこにあるのだろう? と疑問に思っ

          エッセイ:関心の重心

          DX戦記 新規事業開発編(10)事業責任者が決まらない? 20年間、JTCに新規事業が生まれなかったワケ 後編

          川口「……」 守くん「……」 池「……」 寺「……本当にこれで行けるんですかねぇ」 トレイルブレイザーズの面々は山口部長から共有された事業体制図案をみて唸っていました。作成したのは農業研究所の赤城さんです。事業体制図というのは、現在事業化の検討を進めている新事業、アトラスのサービスローンチ後の各役割の人員の割り振りを描いたものです。一見、名前と役割が並んでいるだけで退屈で情報量の少ない図に見えますが、トレイルブレイザーズにとっては違いました。なぜなら事業の詳細の殆どはトレイ

          DX戦記 新規事業開発編(10)事業責任者が決まらない? 20年間、JTCに新規事業が生まれなかったワケ 後編

          エッセイ:組織変革における正常性バイアスと同調性バイアス

           能登半島地震の際に盛んに報じられた正常性バイアスと同調性バイアスは、組織変革の際にも見られます。 組織変革は、競争の激化や社会環境の変化など、外部からの圧力によって必要とされます。 しかし、それらの外圧が組織にかかったときなかなか変革できない、変わるべきことは説明しているのに動き出せない人たちが殆どです。  組織内で長年続けられてきた業務やルールが、変革の圧力によって揺らぐことは、予期せぬ地震のようなものです。 会社の外の世界で異変が起きていることはわかる、でもこれ

          エッセイ:組織変革における正常性バイアスと同調性バイアス

          DX戦記 新規事業開発編(9)事業責任者が決まらない? 20年間、JTCに新規事業が生まれなかったワケ 中編

          守くん「まず、新規事業開発のプロセスについて色々調べて見ましたけど、形式としては、リーンスタートアップ方式が良さそうですね」 川口「そうね〜。リーンスタートアップはやり方としては有名だけど、社内プロセスにはどう落とし込めばいいかなぁ」 守くん「一度、社内の既存のプロセスは忘れて、リーンスタートアップの王道的なプロセスを書き出してみましょうか。シンプルなプロセスを書き出して、その後に、最低限必要な社内プロセスを書き加える感じで」 川口「いいね。承認が増えるほど時間と労力がかかる

          DX戦記 新規事業開発編(9)事業責任者が決まらない? 20年間、JTCに新規事業が生まれなかったワケ 中編

          エッセイ:JTCで新規事業開発を成功させるためには

           2023年の1月に、私の会社(化学系製造業)に新規事業開発のチームが結成されたとき、私は2つの問いを自分の中に持つことにしました。 それは以下のようなものでした。 良い新規事業開発とはなんなのか? またそれを実行するチームに必要なものはなんなのか? 新規事業開発の実践をしてきた2023年を振り返ってみて、その問いに対する私なりの答えを書き残しておこおうと思います。  まず、良い新規事業開発とはなんなのか、について。 ちょっとこれは問いが漠然としすぎていましたので

          エッセイ:JTCで新規事業開発を成功させるためには

          DX戦記 新規事業開発編(8)事業責任者が決まらない? 20年間、JTCに新規事業が生まれなかったワケ 前編

          赤城「事業化したとして、うちじゃ事業責任部署にはなれないですよ。研究所ですから、組織としてそんな機能はないんです」 山口部長「そうは言っても、事業として運営していくためには事業責任部署と事業責任者を決めないといけませんよ」 赤城「うーん、所長とも話してみますが、本社側でどうにか検討できませんか? 事業化にあたっての所要人員も研究所から出すことはできませんし……」 JTCの本社、トレイルブレイザーズがいるフロアの部長席で、山口部長と農業研究所の赤城さんが話し込んでいました。本

          DX戦記 新規事業開発編(8)事業責任者が決まらない? 20年間、JTCに新規事業が生まれなかったワケ 前編