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『道は開ける』

デール・カーネギーの著書、『道は開ける』(原題は『How to Stop Worrying and Start Living』)を読んだのはアメリカの大学で勉強していた二十代前半の頃でした。大学で知り合った日本人の方に本を借りたのがきっかけです。

この本は、デール・カーネギーが収集した実在する人々の経験をもとに編纂したエピソード集です。

絶望的な状況に陥った普通の人が、いろいろな方法で人生を明るい方向に転換していく様子は、当時の自分に勇気を与えてくれました。

ものごとがうまくいきそうにないとき、漠然とした不安に駆られ、思考が停止して、身動きが取れなくなってしまう。程度にこそ差はあれ、誰でもそんな経験をしたことがあるのではないでしょうか。

この本の登場人物の多くは、そんなときの対処方法として、一歩さがって自分の状況を観察し、最悪の事態に陥ったとして、どういうことが自分の身に起こるのかということを考えます。財政的なことであれば破産してしまうかもしれない、健康のことであれば命を落とすということかもしれない、法律的なことであれば、逮捕されてしまうということかもしれない。最悪の事態というものを客観的に想像することで、人は冷静になり、初めて最悪の事態を避けるために必要な行動が何であるかということに気づくことができ、それにより心に余裕が生まれ、行動を起こすことができるのだ、ということをこの本は示してくれます。

今でもたまに読み返すことがありますが、そのたびに行動するために必要な力が湧いてくるような気がします。

『名言集』

デール・カーネギーの妻であるドロシー・カーネギーが、彼女の夫が生前愛用した引用句をスクラップブックとして編纂した『名言集』(原題は『Dale Carnegie's Scrapbook』)も、私が大きな影響を受けた本です。この本は私が渡米する前に、幼馴染の友人が餞別代わりにくれた本で、私の性格を形成した大事な本だったと思います。

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「大仕事を先にやることだ。小仕事はひとりでに片がつく。」と言葉があると思うと、「小さい仕事を立派に果たせるようになれば、大仕事の方はひとりでに片がつく。」という言葉も出てきます。一見、真逆のことを言っているのに、この2つの言葉のどちらにもある種の真理が含まれていると感じます。どうしてそうなのだろうかと考えるきっかけをくれるこの本は、自分の考え方と矛盾する考えでも受け止め方によって、意外とすんなり受け入れられるものなのかもしれないと、気付かせてくれたような気がします。

現在の私は、成功者というには程遠い場所にいますが、デール・カーネギーが紡いだ言葉に助けられながら、私なりに道を開いて来たのだと思います。

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