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小説&ショートショート

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小説は主に短編です。フリー台本として、ご自由にお読みください。 (全部ではありませんが、「聴くっしょ!」にも投稿しています)
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#短編小説

転がる石ころたち|短編小説

「あー、この曲、CMで聞いたことあるな。言うなよ? 当てるから」  カーオーディオから流れ…

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恋文を読む人|掌編小説(#春ピリカグランプリ2023)

「あの人、ラブレター読んでる」  オープンテラスのカフェで、向かいに座っている妻が突然言…

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海へ還る|ショートショート

「いいねぇ」  初日は午前中の挨拶回りだけで終わり、午後からずっと海を見ている。小さい頃…

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迷い猫|短編小説

 帰宅すると、妻が「ねぇねぇ!」と手招きした。 「ガレージに迷い込んでたの」  妻の膝の…

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海砂糖|掌編小説(#シロクマ文芸部)

「海砂糖を1つください」  僕がそう言うと、店主は眉をひそめた。 「あなた、海砂糖を一体…

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梅の実|掌編小説(#シロクマ文芸部)

 梅の花を見ると、亡くなった祖母を思い出す。  名前が「梅」だったんだが、それだけではな…

トガシテツヤ
5か月前
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夜を渡る風|掌編小説

 目が覚めて、窓から外を見ると、もう日が沈んだ後だった。  ――しまった。  夜の風が来る前に買い物に行こうと思ってたのに、さすがに今からだと間に合わない。冷蔵庫を開けて中を確認していると、ドンドンと玄関のドアを叩く音がした。 「毎度どうも!」  前掛けをして、大きな水色の箱を背負ったカエルが玄関の前に立っていた。 「助かるわ。すっかり寝過ごしちゃって……」 「ええ、そんなことだろうと思ってましたよ」  私が「はは」と苦笑いすると、カエルは背負っていた大きな箱をド

始まりはいつも夜|掌編小説(#シロクマ文芸部)

 ――始まりはいつだって夜から。  僕らが真っ暗な海の底から、小さな泡粒と一緒に生まれた…

トガシテツヤ
4か月前
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桜色の季節とダメダメな私|掌編小説(#シロクマ文芸部)

 ――桜色の季節?  とんでもない。私にとっては、まさに暗黒時代の幕開けだ。 *** 「…

トガシテツヤ
4か月前
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キガラシの花|掌編小説(#シロクマ文芸部)

「春と風に中てられたんだな。何とも運が悪い人だ」  診療所に運ばれてきた若い女性を見なが…

トガシテツヤ
5か月前
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クラス委員長のラブレター|掌編小説

「ちょっといい?」  図書室で本を読んでいると、クラス委員長が隣に座った。 「え……何?…

トガシテツヤ
5か月前
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死人歩き|掌編小説(#シロクマ文芸部)

 閏年――2月29日、実家に帰省した。  怪訝そうな顔で「なんで今日なん?」と言う母を無視し…

トガシテツヤ
5か月前
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青写真と赤写真|掌編小説(#シロクマ文芸部)

 ――青写真が撮れたら注意しろ。  あるSNSの、煽り感たっぷりの見出しに、「はいはい」と…

トガシテツヤ
6か月前
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イルカになる日|掌編小説(#カバー小説)

椎名ピザさん主催の、参加者同士で作品をカバーし合う「カバー小説」という企画で、かずみんさんの「イルカになりたい」をカバーさせて頂きました。 かずみんさんの「イルカになりたい」はこちらです。 「イルカになる日」 その生き物がイルカだと、すぐに分かった。  ――へぇ、イルカって実在するんだ。  子供ながらに、ずいぶんと冷静だったと思う。  海面からひょいっと顔を出して私を見ていたイルカは、キーだかキューだか、言葉で言い表せないような音を発して、海の中へと消えた。  翌日