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小説&ショートショート

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小説は主に短編です。フリー台本として、ご自由にお読みください。 (全部ではありませんが、「聴くっしょ!」にも投稿しています)
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#ショートストーリー

冬色のカーテン|掌編小説(#シロクマ文芸部)

「冬色のカーテンです。大切にしてね」  そう書いたメモと一緒に、白のレースカーテンが送ら…

トガシテツヤ
10か月前
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秘密の庭|掌編小説

 高校1年の時、3日間のオリエンテーション合宿というものがあった。福島県にある自然の家で、…

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迷い猫|短編小説

 帰宅すると、妻が「ねぇねぇ!」と手招きした。 「ガレージに迷い込んでたの」  妻の膝の…

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夜からの手紙|毎週ショートショートnote

「27年もの間、自分なりに務めを果たしたと自負しております」 俺の後任からの手紙だった。4…

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卒業アルバム|掌編小説

 ――谷松勲。  パッと見て「たにまついさお」と読めない漢字に「担任」という文字で、その…

トガシテツヤ
2週間前
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残り物には懺悔がある|毎週ショートショートnote

「おいおい、ガラケーかよ」 回収した不用品の中に、折りたたみ式の携帯電話があった。ガラケ…

トガシテツヤ
2週間前
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転がる石ころたち|短編小説

「あー、この曲、CMで聞いたことあるな。言うなよ? 当てるから」  カーオーディオから流れる軽快な音楽に、杉本は目を閉じて「うーん」と考え始めた。僕はそれを無視して「ローリング・ストーンズ」と答える。 「当てるって言ったじゃねーか!」  声を荒げる杉本を「どうせ当たんないよ」と一蹴した。 「しばらく会ってないうちに音楽の趣味が変わったか? あ、洋楽好きの彼女ができたとか?」 「そんなんじゃないって」  特に洋楽が好きというわけではないが、ローリング・ストーンズはたま

夏雲|掌編小説(#シロクマ文芸部)

 夏の雲がふよふよと漂っている。群れからはぐれて、地上まで降りて来てしまったんだろう。ふ…

トガシテツヤ
2か月前
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Into the Blue|掌編小説

 ――誰だ?  いつも学校帰りに寄り道する場所に、知らない人がいた。ぼーっと立って、海を…

トガシテツヤ
3か月前
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いちょうさん|毎週ショートショートnote

 ――ツイてない……。  下校中、自転車の後ろのタイヤがパンクした。自転車屋まで、ここか…

トガシテツヤ
1か月前
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恋文を読む人|掌編小説(#春ピリカグランプリ2023)

「あの人、ラブレター読んでる」  オープンテラスのカフェで、向かいに座っている妻が突然言…

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ジッポライター|掌編小説

 ――タバコとコーヒーってさ、似てるよね。  知り合った頃の、彼女の第一声だった。その時…

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いつもの月|掌編小説(#シロクマ文芸部)

「月の色がおかしい」  同僚はそう言って、突然立ち止まった。 「そうか? かなり明るいけ…

トガシテツヤ
3週間前
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金色の稲穂|掌編小説(#シロクマ文芸部)

 懐かしい色だった。  ――そうか。もうすぐ稲刈りか。  俺の地元では稲作農家が多く、そこら中、田んぼだらけだ。9月に入って稲刈りが近づくと、田んぼを埋め尽くす稲穂が、夕日を浴びて黄金色に輝く。その光景は、2023年にこの世を去った作曲家、ピアニストであるジョージ・ウィンストンのアルバム「Summer」を思い起こさせる。  都会に引っ越すと、田んぼなどというものからは無縁になるので、7年ぶりの帰省は、一瞬だけ別の国へ来たかのように錯覚した。  高校の時、周りのみんなが