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小説&ショートショート

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小説は主に短編です。フリー台本として、ご自由にお読みください。 (全部ではありませんが、「聴くっしょ!」にも投稿しています)
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#創作

転がる石ころたち|短編小説

「あー、この曲、CMで聞いたことあるな。言うなよ? 当てるから」  カーオーディオから流れ…

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第12回自作小説の一節コンテストで最優秀賞を頂きました

ムカデに噛まれ、その翌日にはバイクで転倒し…。 冗談抜きで「お祓いに行くか…」と。 そん…

トガシテツヤ
1か月前
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夏雲|掌編小説(#シロクマ文芸部)

 夏の雲がふよふよと漂っている。群れからはぐれて、地上まで降りて来てしまったんだろう。ふ…

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ブルーハワイ|掌編小説(#シロクマ文芸部)

 かき氷を食べるカップルとすれ違う。さっき屋台の前を通ったら、「300円」となっていた。 …

トガシテツヤ
2週間前
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恋文を読む人|掌編小説(#春ピリカグランプリ2023)

「あの人、ラブレター読んでる」  オープンテラスのカフェで、向かいに座っている妻が突然言…

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空色の鉛筆|掌編小説(#シロクマ文芸部)

 新しい色鉛筆を買った。とは言っても、それは「空色」と書かれた1本の鉛筆で、黒色の芯が付…

トガシテツヤ
7か月前
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海へ還る|ショートショート

「いいねぇ」  初日は午前中の挨拶回りだけで終わり、午後からずっと海を見ている。小さい頃から海のそばに住むのが夢だった。それが「転勤」という形で叶った。  田舎町だが、スーパーもドラッグストアも病院もあるし、まぁ何とかなるだろう。買い物でもして帰ろうと思っていたら、商店街の端っこで後ろから「ねぇ」と声をかけられた。振り向くと、中学生くらいの少女がいた。僕がきょろきょろと辺りを見回すと、少女は僕に近づいて来て、服の袖の匂いをくんくんと嗅ぐ。 「お兄さん、潮の香りがする」

迷い猫|短編小説

 帰宅すると、妻が「ねぇねぇ!」と手招きした。 「ガレージに迷い込んでたの」  妻の膝の…

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Into the Blue|掌編小説(文披31題 3日目)

 ――誰だ?  いつも学校帰りに寄り道する場所に、知らない人がいた。ぼーっと立って、海を…

トガシテツヤ
1か月前
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海砂糖|掌編小説(#シロクマ文芸部)

「海砂糖を1つください」  僕がそう言うと、店主は眉をひそめた。 「あなた、海砂糖を一体…

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梅の実|掌編小説(#シロクマ文芸部)

 梅の花を見ると、亡くなった祖母を思い出す。  名前が「梅」だったんだが、それだけではな…

トガシテツヤ
5か月前
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夜を渡る風|掌編小説

 目が覚めて、窓から外を見ると、もう日が沈んだ後だった。  ――しまった。  夜の風が来…

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ラブレターFrom...(文披31題 7日目)

文披31題、7日目のお題が「ラブレター」とのことなので、過去作を貼っておきます。

トガシテツヤ
1か月前
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嘘|掌編小説(文披31題 6日目)

 息をするように嘘をついている。  兄がいるのに一人っ子だと言い、ペットはいないのに「白猫を飼っています」と言い、彼女がいないのに「彼女は海外出張中」だと言う。  誰にも迷惑はかからないし、困らない。だって、人って自分以外に興味なんてないんだから。 「嘘つくのって、体力使うよね」  彼氏と何かあったのか、隣の席の同僚の女性が疲れた顔で呟く。 「できれば嘘なんてつきたくない?」 「そりゃそうでしょ。疲れるし、めんどくさいし、いいことないわよ」  俺は「だよね」と同意す