見出し画像

はじめに ーDaily Records についてー

2023年12月1日から毎日、日記を綴り始めてみた。

毎日(Daily)の自らの出来事や感じたことを、自分のために記録(Record)する。いわゆる日記。
その日の出来事や気持ちを振り返って咀嚼しつつ綴ることにより、内在するネガティブな感情は幾分和らぐ。
1日1日、たしかに自分はこの日も生きていたのだという事実を、自分のために刻み続けている。

日記を綴り始めた経緯

2023年3月から始まった休職生活。
心を擦り減らしていた。生きることの意味を見失っていた。生きてることに対して前向きに考えられなかった。

7月から始めた四国お遍路。
暑い時期だとか関係ない。職場のある大阪や、生まれ育った地元愛知から離れたかった。倒れたらそこまで。生きることへの執着はそれほどなかったのかもしれない。
四国の空気を吸いながら、黙々と遍路道を歩く。
時折、道中の見知らぬ人からの思わぬ声掛け、そしてお接待に心を打たれた。生き心地の良さを味わった。

休職中は読書に熱中した。遍路中も本は手放さない。
遍路道に書店があれば休憩も兼ねて立ち寄る。購入した書籍は荷物を大きく重くさせた。気持ちの良い負担であった。
遍路中に出会った書籍の中で最も心を動かされた作品の1つが、高知生まれの私小説作家・上林暁の傑作小説集『孤独先生』。

上林暁という作家の生涯は決して平穏なものではない。その中でも文学に対して向き合い続け、自らの生き様を作品(=私小説)の中に反映していった。
上林の故郷、現在の黒潮町はお遍路の道中にある。大方あかつき館に立ち寄ると、そこには半身不随の寝たきり状態の上林が亡くなる数日前まで左手でペンを持って書き続けた原稿が展示されてあった。
ただただ立ち尽くし、涙を流した。
文学に対する執念、そして命の雫の最後の一滴まで生き抜くことの美しさを強く感じた。

多くの人々や書籍との出会いに恵まれつつ、2023年11月上旬、四国遍路の満願を果たした。

『孤独先生』出版記念のトークイベントが2023年12月2日に大方あかつき館で催されることは、遍路途中に黒潮町に立ち寄った際に知った。出版に携わった方々が一堂に会する大変貴重な機会であり、このためだけに高知へ再び訪れることに迷いはなかった。

トークイベント前々日から黒潮町入りし、上林の生まれ育ったまちをゆっくり巡る。いまの自分と同年代の頃の上林は、奇しくも自分と同じ”キャリアブレイク”の真っ只中。約90年前、東京にある勤め先を退社して帰郷した上林がきっと何度も眺めていたであろう、同じ砂浜、同じ松原、同じ海が自分の目の前に広がる。上林と自分とを重ね合わせながら、『孤独先生』を読み返す。

トークイベント当日、質疑応答で挙手し、遍路中の『孤独先生』との出会いが自分にもたらした影響について、思いの丈を話した。閉会後、館長室に招かれ、ゲストの方々と言葉を交わした。打ち上げにもお招きいただいた。『もう僕らは仲間だ』とまで言っていただいた。

そうだ、僕には仲間がいるんだ。
これまで生きてきてよかった。
これからも強く生きていこう。

将来に対してなにか明るい光を感じた。
生きる意欲のみなぎりを感じた。


こうして上林の故郷で3日間を過ごす中で、いまの気持ちを忘れたくない、自分の実体験や沸き起こった感情を記録したい、という強い衝動に駆られた。
宿泊先のホテルのベッドに横たわりつつ、ふつふつと心に浮かんだ言葉をスマホに打ち込む。初めから日記というものを意識したわけではなく、ただ単なる備忘録程度の軽い気持ちでメモしていった。

次の日も、また次の日も、その日の体験や感情の記録をスマホに打ち込み続けた。
自分がこの先なにか行き詰ったとき、たとえば上林の故郷訪問時の記録を見返すことで再び生きる意欲のみなぎりを感じられるように。

毎日、懸命に生きている。
これからの未来を懸命に生きようとする自分のために、これまで懸命に生きてきた自分の日々の記録を残すのだ。


本日の1曲について

その日を象徴するような1曲を”本日の1曲”として記録する。

体験した出来事、抱いた感情のすべてを文章に残すことができるわけではない。
胸の奥に閉じ込めておきたいことだってある。
文章に残さずとも、”本日の1曲”を聴き返すとその日が蘇る。

”本日の1曲”には、その日を懸命に生きた自分が記録されている。
これまで懸命に生きてきた日々の積み重ねが「Daily Records」のプレイリストとなり、これからの未来を懸命に生きようとする自分を奮い立たせることもあるかもしれない。



下記は、1ヶ月ごとのDaily Recordsをまとめた記事です。
日付、その日の記録のタイトル、その日を過ごした場所が記されています。
本日の1曲をまとめたプレイリストも載せてあります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?