メモ:リ・イマジネーションの世界とは

これは仮面ライダーディケイドについての私の解釈ですが、仮面ライダーディケイドの世界観って、仮面ライダー電王に登場した概念の「人の記憶が時間を作る」をベースにしていると、私は思っているんです。ただし、電王では人々=電王の登場人物でしたが、ディケイドでは人々=視聴者っていうメタ構造になっている……と、そんな感じで。

これを踏まえると、ディケイド、リ・イマジネーションの見方がちょっと変わるかな?  とか、そんなお話です。QA形式で書いていきます。

まず「世界の融合と、崩壊」とは何だったのか、ですが、これは、視聴者の記憶が薄れて「平成の仮面ライダーも、昭和の仮面ライダーみたいに、全部同じ世界なんだよね」と誤認したことで起きた現象だと言えます。
でも、本当は独立した作品なのに一纏めなんかにしたら、デコボコした醜いものが出来上がる……どころか、整合性が全然取れないので、破綻しますよね。こんなお話おかしい、ありえない、ってなります。物語が破綻する、成り立たなくなる、続けられなくなるってことは、登場人物の視点で見れば、世界の崩壊なのです。

視聴者の記憶が薄れる

ちょっと違うライダー達「リ・イマジネーション版」が誕生する
世界観がゴチャ混ぜになる

一纏め世界「仮面ライダーディケイド」が生まれ、放送スタート

それを見た視聴者が「おかしくね?」と思う

その影響で世界の崩壊が始まる


こんな感じです。全部視聴者のせいなんですね。
ということで、登場人物が世界の崩壊を止めるための行動とは、次のようになるのです。

世界崩壊の原因は物語の破綻だ。どうにかしよう

破綻の原因は、世界が混ざっているせいだ。

誤解を解こう!

9つの仮面ライダーには繋がりなんてないことを示そう

曖昧な記憶が生んだ、誤った仮面ライダーの認識「リ・イマジネーション版」を否定(=破壊)しよう


こんな感じです。
「貴方(ディケイド)は彼ら(リ・イマジネーションライダー)を破壊しなければならなかった」というニュアンスの発言が劇中にあったのは、こういうことなのです。

思い出してみてください。ディケイドとリ・イマジネーションライダーを対決させようと動いていた、鳴滝という人物がいたことを。鳴滝に「ディケイドは世界の破壊者だ」と吹き込まれて、リ・イマジネーションライダーが戦いを挑んでいたことを。
まあ、和解しちゃうんですが。

思い出してみてください。リ・イマジネーション世界を崩壊させようとする「本編では見たことなかった謎の強敵」がいたことを。そう、本編ラスボスが勝っちゃうとそれはそれで本編の記憶がおかしくなっちゃう可能性があるので、見知らぬゲスト怪人に出張ってもらっていたのです。
まあ、倒されちゃうんですが。

そうなんです。目論見は失敗したんです。
ディケイドがリ・イマジネーションライダーを否定・破壊せず、例のBGMとを流しながら「こいつだって良いやつだぜ」と肯定し、仲間にしてしまったのです。そして共闘し、ゲスト怪人を倒し、世界を存続させてしまうのです。大誤算です。

そこで、紅渡は強硬策に出ます。ディケイドを倒しにかかったのです。
「ディケイドが9つのリ・イマジネーション世界を肯定したせいで世界が滅んでしまう。そんなことは許さない。貴方を倒し、貴方の行い『リ・イマジネーション世界の肯定』を否定し、世界の崩壊を止める!」
そういう流れなのです。
まあ、全ライダー倒されちゃうんですが(劇場版)

もっとも、劇場版の門矢士はおそらく自分の「役割」を既に理解していたようです。本編でも偽悪的な振る舞いをしていた門矢士ですが、劇場版では露骨に悪っぽいふるまいをしていました。そうでもしないと優しい夏みかんが自分を倒しに来られないとわかっていたから、と見るのが自然でしょう。
果たして目論見通り、夏みかんは「新しい仮面ライダー・キバーラ」へと変身し、ディケイドを倒し、否定しました。要は門矢士の引責自害みたいなものです。

こうして「リ・イマジネーションライダーは本物とはなんか違う奴ら」「本物がどんなのだったか」が視聴者に知れ渡り、誤解が解けて、世界の融合は止まり、崩壊は免れました。
めでたしめでたし……とはならず。
門矢士が失われた悲しみは、癒えないのでした。

ただ、最初に書いたとおり、ディケイドでは「人の記憶が世界を作る」というルールが適用されています。これが、劇場版のクライマックスへと繋がっているんです。

ディケイドって、なんだかんだで半年間も放送しましたから、「ディケイドの物語」は視聴者の記憶に残りました。
視聴者の認識、今はどうでしょう?
リ・イマジネーションライダーは「本物と違うけれど、別個体として」きちんと、記憶されたのではないでしょうか?

剣道をベースにした五代雄介は、紫のクウガに変身すると装甲を生かしたどっしりとした立ち回りをする。
それに対して小野寺ユウスケクウガ・タイタンフォームのスペック通りにスピードを出したまま、器用に立ち回る。

そんな風に、対比することで、よりハッキリと原典を覚えつつ、リ・イマジネーションも記憶したのではないでしょうか。

そう、仮面ライダーディケイドの物語を通して「本物とは別に」リ・イマジネーションライダーたちも確立したのです。
そして、視聴者と、リ・イマジネーションライダーたちの記憶が「門矢士は、確かに存在したのだ」と肯定することで、門矢士は復活を果たすのです。

そう、倒されるための偽物だったリ・イマジネーションライダーは、確固たる別物として肯定され。
倒されるべき悪役となった仮面ライダー・ディケイドは、偽悪的なヒーローとして肯定されたのです。

これが、リ・イマジネーションライダーたちだったのだと、私は思います