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2020年4月の記事一覧

ひとつのもの

「音楽に政治を持ち込むな」のなかにある愚かさは、政治への忌避感だけではない。「音楽に政治を持ち込むな」を批判し、音楽に政治を持ち込んでなにが悪いと言っているひとが、音楽と政治を分けていることの愚かさもある。 音楽は政治そのものだし、政治は文化・芸術を含んだわたしたちの生活そのものだ。それらをことさらに分けて考える必要はない。もちろん、あらわれ方を見ればそれぞれは別の姿をしているものだ。同じ場所にあるものがあらわれ方によってそれぞれの姿をしているのだけど、元は同じ場所にある一

良いところ悪いところ

ものごとの良い面と悪い面は、あちらの端とこちらの端にあって、ひとびとはそれをあっちからこっちへ走り、またこっちからあっちへ走りして、その振れ幅の大きさを強いられ続け、やがて疲弊してしまう。そして潰されてしまう。 そう感じたのはあの震災のあとのことだ。その振幅に耐えることは、たやすくない。震災のあと、さまざまな出来事や情報に一喜一憂させられ、やがて気持ちが潰れされていった。その振幅に耐えるために、こころを閉ざし、論理を捨てたひとをたくさん見た。 やがて違う感覚を持つようになった

母との会話

昨年の秋に実家に帰省したときのこと。2年あまり帰っていなかったのは、40代半ばも過ぎて大学院に通い始めて忙しくしていたからだった。父とも母とも頻繁に電話で話していたので、取り立てて目新しい話題があるわけではなかったのだけど。 二人きりになったときに、母が   ——これからは文章を書いて出したりしていくつもりなの? と尋ねてきた。大学院でつくった冊子に載せた文章を読ませようと父に送っていたりしていたので、そんなことを言いだしたようだった。うん、まぁそういうこともあるかもしれない