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パトリシア・バストス:Patricia Bastos "Eu Sou Caboca"

ブラジル北部のアマゾン川河口近くのマパカ出身の女性シンガー、パトリシア・バストス、つい最近に2002年のアルバム "Pólvora e Fogo" のリマスター版がリリースされた。明るく澄んだゆったりとしたボーカルに、メローなギターとキーボード、サックスの柔らかい音もいい。'80s か '90s のジャジーな良質なAORといった趣の心地よい音で気に入っている。

是非、通しで聴いてほしいと思う。10曲目 Girassolや アルバムの最後の曲11曲目 Coração Cigano もいい。

1970年生まれというから私より少し年下、まだまだ若手だ。2002年のこのアルバムのあと、3-5年ぐらいに1枚のペースで計6枚のアルバムをリリースしているようだ。

3枚目のアルバム "Eu Sou Caboca"が、パーカッションを前面に出したアレンジだが、やはり柔らかいアコースティック楽器中心のアンサンブルでとても聴きやすい。アルバムタイトルは「私はカボッコ(アマゾン先住民の混血人種)」という意味だと、disk union の解説で知った。

これより後のアルバムは皆、独特のパーカッションによるリズムが全面的にフィーチャーされていてパトリシア・バストスのアイデンティティとなっているように思う。

2013年の "Zulusa"は、さらにパーカッションを前面に押し出したシンプルなバックが好感だ。


2016年の "Batom Bacaba" (バカバはアマゾンで自生する椰子の木、バカバを原料に作る口紅が Batom Bacabaということだ)は、もっとソフィスティケートされたアレンジになっていてより聴きやすい。土着の雰囲気は薄れているが、パトリア・バストスのボーカルのスタイルが生きた音作りで、楽曲はミステリアスな雰囲気が支配し、これもいい感じだと思う。

自身のルーツに忠実に、しかし、たんに民俗音楽を披露するというのではなく、自身のスタイルに昇華させて丁寧に作りこまれているように思う。そして、高音に自然に伸びる透明感のある歌声が魅力だ。

2021年の "Timbres e Temperos" は男性ボーカルも入って軽い仕上がりだ。

たぶん、同郷のアマゾン出身のミュージシャンを起用していると思うのだが、情報があまりなくよくわかっていない。前3作に負けず劣らず素晴らしい作品であることは間違いないと思う。

世界中を自転車で一人で旅している浅地さんはアマゾンにいるらしい。こちらの記事を読て写真を見ながら聴くといいかもしれない。


最後に、去年にリリースされたシングル、Cristovão Bastosのピアノとのデュオで "Yarica"をお届けしよう。是非、皆に聴いてほしい歌声だ。 



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