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ビレリ・ラグレーン:Biréli Lagrène plays Loulou Gasté

ビレリ・ラグレーンが新しいアルバム "Biréli Lagrène plays Loulou Gasté" をリリースした。全編 3 分から 4分前後の親しみやすいメロディの曲、全12曲で構成され、リズムとリードのジプシーギター2本とアップライトのベースでシンプルに奏でる、素晴らしい一枚だ。

肩に力が入らず、すっかり余裕のある演奏がいい。

ルイ・ガステ Louis "Loulou" Gasté については、このアルバムで初めて知った。1908年生まれ1995年に死去、50年あまりの現役の間に約1200曲も作曲したということだ。

Wikipediaで見ると 1956年の "Pour Toi" について特別に取り上げてある。 ブラジルのシンガーソングライターMorris Albert が1974年に "Feeling"と題して英語で歌い自身の作曲としヒットしたのだ。1988年末になってようやく訴訟に勝ち、ルイ・ガステの作曲として認められたとのことだ。

"Pour Toi" は、このアルバムにも3曲目に収められている。

どうだろう。オリジナルの歌と比べると少し物足りなく思う向きもあるかもしれない。

ビレリ・ラグレーンといえばジプシージャズ、8歳でジャンゴ・ラインハルトのカバーで神童と呼ばれ、1980年に12歳でレコードデビューした超絶天才ギタリストだ。

私は確か1987年にエレクトリックギターやギターシンセをバリバリ弾いていた "Inferno" で初めて聞いたように思う。Bluenoteからのデビュー盤で弱冠21歳ながら大物ミュージシャンをバックに、曲も演奏も見事なアルバムだ。どの曲もいいが、タイトル曲の "Inferno" が特に気に入っていて、いまだによく聴いている。

ジャケットも洗練された野生感と天才感がいっぱいで魅力的だ。

続く1988年の "Foreign Affairs" もいい。前作に続いてエレクトリックなサウンドを推し進め、かっこいい。

このアルバムでは1曲目の "Timothee" もいい曲だ。思わず一緒に歌ってしまう。なんとベースも弾いている。

数年前に2018年のライブの動画を見つけたのだが、ステージでもベースを演奏していて、あまりに驚いたのと、サウンドがとても心地よかったのが良く、何度も視聴した。


とにかく、テクニックもすごいが、音楽の幅も広く、窮屈さを感じさせない。そしてビレリ・ラグレーン節というか、とにかくギターがよく歌っている。あまり多くのアルバムをリリースしていないが、ライブ演奏はずっとやっているようだ。

この音源は2016年のライブだけども、これも最高だ。2曲目の Stevie Wonderの Isn't She Lovelyも十八番で楽しめるが、なんといっても1曲目だ。サックスとのテーマのユニゾンにせよ、ソロにせよ、スリリング・緊張感たっぷりで圧巻だ。そして、とても楽しんでいる雰囲気がいい。

ピアノも加えたクインテットのライブもいい。

Sylvian Luc とのギターデュオも大好きだ。

去年ギターソロのアルバムもリリースしていて、こちらもなかなかいい。が、やはりこの人の真骨頂はジプシー・ギターだろう。

動画でもいろいろ上がっているが 2002年のライブが素晴らしく、度々視聴している。


最後に新しいアルバム"Biréli Lagrène plays Loulou Gasté" から1曲目の "Ma Cabane au Canada"のビデオクリップを貼っておこう。

好きな音楽を楽しんで演奏している、そんなリラックスした演奏でゆったりと聴ける。秋の夜長にぴったりのいいアルバムだ。


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