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全知全能:ポルカドットスティングレイ「踊る様に」

9月7日にポルカドットスティングレイの4枚目のフルアルバム「踊る様に」がリリースされた。
いつも通りバラエティに富んだ曲ばかりなので、どんな感じか全体をざっと知りたい方は、YouTube で公開されているトレーラーを視聴するといいだろう。

シングルは、YouTubeのオフィシャルチャンネルでも聴けるし、Spotifyではこちらだ。

ポルカドットスティングレイ、以下ポルカとする、を初めて知ったのはたぶん2017年のみずほファイナンシャルのCMだったと思う。ファンとしては新参者の部類だし、それほど熱狂的なファンの部類とはいえないとも思うし、ライブにもまだ行ってないし、これまで記事に書こう書こうと思いながらも逡巡していた。しかし、4枚目のアルバムが昨日リリースされたので、記事にするいい機会だと思う。

リードギターのエジマハルシが素晴らしい。心地よく歪んだ明るい音色で勢いとスピードがありながらもコントロールがいいリードも聴かせるし、多彩な技を決めるバッキングではキレのいいリズムが小気味よい。ウネウネ系骨太ベースのウエムラユウキと、そつなく決めるドラムスのミツヤマカズマのリズムセクションがしっかりと緩急のある曲にメリハリをつけて好感。そして作詞作曲、バンドをリードするボーカルの雫(しずく)。4人編成で元気のいい若手のバンドだ。最近の若者らしくガツガツしていないところも好印象、それぞれの個性がよく表れているファッションもいい。

雫さん、一般の会社員でもメチャメチャ仕事できるだろうなというプログラムマネージャ的な雰囲気も好きなところだ。ショービジネスに振り回されるのではなく、自分たちでマーケティングして自らプロデュースする、そんな自信たっぷりの雰囲気が大好きだ。

それぞれの楽曲も音作り・演奏もとても気に入っているが、感情的なところがなくクールな歌詞がとてもいい。英語まじりで一見ばらばらで断片的な言葉が並ぶが、曲を通して聴いたときにいろいろな視点から様々に結びつくことができ、受け手によっていろいろな意味が浮き上がってくるように感じるだろう。そういう歌詞を私は好む。

なにしろ、それぞれの曲のあちこちで日曜哲学愛好家としての私がひっかかってしまう言葉が散りばめられている。

そこで、今日は私が特に好きなポルカの曲を10曲だけ選曲し、それぞれの歌詞から特に好きな部分をつまみ食いで引用しながら、紹介していこうと思う。



まずは、2015年の「夜明けのオレンジ」。上述のとおり、2017年に初めて知ったのだが、そのときに YouTube で検索しところ、まず参ってしまった曲がこれだ。歌詞全体が好きだが、今よりも少しまとまりがよくわかりやすいかもしれない。

もしも、僕が教祖になったなら今日から君は盲目さ
口を開けて待っていてくれ、信じるしかないんだから
・・・
目に見えないものにすがって
存在しない敵作っていることなんて
誰だって同じさ。
・・・

ポルカ「夜明けのオレンジ」



2017年の「エレクトリック・パブリック」もいい。

多くの人が同意すると思うが、この曲は、3'13" 歌詞の最後「YES!」が好きだ。ライブ・コンサートでは皆、声を合わせていることだろう。

・・・
夢の続きを知ってしまったこのまま
夢の後先なんか顧みる暇もないや
こうなってしまったよ 誰のせい
・・・
あのときからきっと終わりは始まっていたんだね
まだ認められないよサヨナラさ
・・・
君は正義さきっと顧みる暇もないや
こうなってしまった サヨナラさ 誰のせい
Yes!

ポルカ「エレクトリック・パブリック」



同年の「シンクロニシカ」、ビデオクリップのサムネが私の趣味だけでいうとイマイチだが、中身そのものはなかなかいい感じだ。臨死体験を夢で見ているようなそんな雰囲気がよく出ていると思う。

・・・
感覚を凝らしてくれ
夢の続きを目前にして
段々と怖くなったかい
今に見ていて頂戴

啓蒙が尽きたのかい
止まらぬ未知を差し置いて
さぁ爛爛と飽きもせずにさ
君を見ていたって仕方がない
そらいろの目が君を見ている
・・・
本当を歌ってちょうだい
・・・

このころ、雫が使っているギターが鶯色の Duesenberg めちゃめちゃカッコいい。3’12"くらいからの30秒ほどが一番好きなところで、何度も繰り返して見てしまう。 



しっとりとした曲というと、2018年の「リスミー」がいい。ビデオクリップはちょっとエキセントリックなところもあるが、妖しく怖く美しい仕上がりだ。

ハルシのギターがじっくりと聴かせる。

・・・
過ぎていった時間や人々を
ほんの少し後悔しながら
片手で、あるべきだった今日を探している
・・・
私たち曖昧に愛し合ってさぁ
いつの間にか夜にでもなってさ
夜風に乗せて不完全な今日を飛ばしている
・・・

ポルカ「リスミー」



「何があってもお前には負けないね」「お前ごとき」という言葉がぱっと耳にはいってくる2018年の「パンドラボックス」、会社でこういう気持ちで戦っている人もいるかもしれないし、SNSでの腹立つ匿名コメントとのバトルかもしれない。少し見当違いな受け取り方かもしれないが。。

私は、次のフレーズが特に気に入っている。

・・・
あいまいな概念に何度も踊らされているんだろう
端的で簡潔な解答が目の前にあっても
・・・

ポルカ「パンドラボックス」

ビデオクリップ全体が楽しめるが、このフレーズを聞くために聴いているところがあるかもしれない。仕事をしているときに、この部分が頭をよぎって鳴る場面も多い。



2018年では、もう一曲「ヒミツ」も素晴らしくよかった。テンポのいいリフのメインのメロディ、途中のポーズ、ブリッジ、と緩急のある曲の構成も見事だ。いつもながらの意味深な歌詞だが、スマートフォンやアプリ、ネットのイメージだと思う。

オリジナルもいいが、2019年11月に YouTube に上がっているライブ版もとても気に入っている。

・・・・
まばたきしている間に
世界がどうなっているとか
つゆも知る由のない私を見つめ返す
・・・

ポルカ「ヒミツ」



2019年の「DENKOUSEKKA」は、これまたさらにパワフルでメリハリある演奏が最高にいいが、めくるめく言葉の世界が全開だ。

こうやってたいのか?大人に辟易
生意気言って土下座
名は体を表す感じの
世の摂理に巻き込まれる
・・・
食らえや生粋の快感を
バカでも分かる正義さ
箱入り娘の大脳を開いてみたら宇宙さ
食らえや散々な根性論
思い上がりも大事さ
指名手配犯の感情は触れちゃいけない神秘さぁぁぁ

ポルカ「DENKOUSEKKA」



緩急が魅力な2019年の「女神」、ビデオクリップがさらにお洒落なつくりでいい感じだ。2017年以前の雫も登場して当時からの時の流れと変遷も感じさせる。

冒頭、「だって関西大学なんて案外ー」と聞こえる。ポルカあるあるで、実はこういうのも聴いていて密かに楽しいところだ。

・・・
運命ってきっとさ決まっているのかな。
ooh-ooh-hu-hu-hu-ooh
僕は僕のことばかりなんだいつも
ooh-ooh-hu-hu-hu-ooh
今でも
憂鬱だよ
君がどこかであの日の目で
見ている気がして
・・・
結局さ人間さ
「何か」じゃなきゃ
生きていけないのさ
・・・
僕の命ならいつでもかけられるのに
神様はきっと僕を選んでないな
・・・
だって曖昧半端な箇条書きの答えなんかいらない
何かひとつ、たったひとつ、輝くこの手で
・・・
教えて、いったいぜんたい僕は誰だ、神様は知りやしない
燃え尽きたい止まりはしない
例え君が僕を殺しても

ポルカ「女神」



2019年末の 「SQUEEZE」は、一転、小気味いいラップだ。ラッコズとのコラボのビデオクリップもリズムよく、軽快なリズムとギターのリフ、流れるようなサビとお得意のブリッジもいい。

煙に巻くような言葉がラップにうまく乗って面白い。「何にだってなってしまえばいいじゃん、ここに居ろって誰が決めたの?」

・・・
Super Star になれなくてもいい、ちょっと待って、本当にそれでいい?
・・・
イー・アール・サン・スーパーマン、4:3の青春
引き寄せられていく相対性理論で
・・・
Always 笑顔忘れないで
ドアを開けて外へおいでよ。
・・・

ポルカ「SQUEEZE」



2020年の化身も疾走感ある爽快な一曲だ。好きと嫌いが入り混じる愛しい人への矛盾した言葉があふれて出てくるような中に、反重力、というような単語が入るのがいい。

・・・
君が思うより夜は長い
・・・
歪ませたいほど綺麗な顔
I hate you
反重力?なんてね 嘘だ
All I need is you
もう降参したいよ
君に似た顔の化身が笑う声を聞いた

ポルカ「化身」

まだまだ書き足りないし、他にもたくさんいい曲があるが、このくらいにしておこう。

こうして聴き直してみて、全知全能という言葉が思い浮かぶ。2017年のフルアルバムのタイトルだ。


最近の若者の中には、これまで見なかったような凄い人がいる、と、あらためて感じてしまった。

「おじさんも負けてられないなぁ。」
「じいさんでしょ。」
「・・・別にいいじゃんか。」
「じいさんが頑張ると老害よ、老害。」
「ぐ...。」

これからもっともっとメジャーになっていくことだろう。これからも今までのようにたくさんの言葉を紡いでいってほしい。陳腐なメッセージや自己憐憫や自己陶酔、押しつけがましい感情、口当たりよく端的で簡潔な解答、そんな薄っぺらな言葉たちを駆逐してほしい。

もっとも、そんな私の思いとは関係なく、そのうちに彼らのマーケティングの対象から私がはずされてしまうかもしれない。



■追補

そういえば、2018年インスタでエジマハルシが「アートリンゼイのLive行ってきた」とアップしていた。

https://www.instagram.com/p/BpRwnxEnp_K/

やっぱり、何か通じるところもあるのだなぁ、と思った。

アート・リンゼイ(g)とピーター・シェラー(key)のユニット、アンビシャス・ラバーズは大好きで、1988年のアルバム "Greed" は当時擦り切れるほど聞いたし、35年近くもたった今でも愛聴盤だ。

どんな具合にギターを弾いているか、TVのライブだろうか、次の動画を見ると解説つきで見ることができる。


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