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ソフィア・レイ:Sofia Rei "Coplas Escondidas"

アルゼンチン出身の歌手ソフィア・レイ(Sofia Rei)と、ペルー出身のベース奏者ホルへ・ローダー(Jorge Roeder)のデュエット、2023年リリースされたアルバム "Coplas Escondidas" が 素晴らしかった。是非、聴いてほしい。

かすかな哀愁を秘めた明るめの表情豊かな発声で、自在に音階を駆け上がり駆け下りる。ホルへ・ローダーの息のいい卓越した演奏もいい。素晴らしいデュオだ。

またまたムジカテーハの記事を貼っておこう。

ホルへ・ローダーは1980年ペルー生まれ、新進気鋭のギタリストであるジュリアン・ラージと共演していたので知ってはいた。一方のソフィア・レイも同年代のようだ。二人は2001年にアメリカのニューイングランド音楽院で学び、以来20年以上の音楽的パートナーシップを築いてきたということだ。

これまでの彼女のアルバムも、2005年のデビューアルバム "Ojala" から、ホルヘ・ローダーがベースを弾いている。今回は満を持してのデュエットということのようだ。

2021年のアルバム "Umbral" を聴いてみると、力強いボーカルとコーラスとともに、複雑なリズムが重層するパーカッションやシンセサイザーのアンサンブルも心地よい。

アコースティックな音とエレクトリックな音がうまくミックスし、アルゼンチン、ペルー、ボリビア、中南米の民俗音楽とジャズ、ポップスのエッセンスをブレンドしたようなメロディとサウンド、これはいい。惚れてしまった。

彼女は10弦のチャランゴ (*2) を弾きながらのパフォーマンスを見せる。2021年のNPR の Tiny Desk (Home) Concert をリンクしておこう。

UMBRALから3曲、"Un Mismo Cielo" (The Same Sky), "Negro Sobre Blanco" (Black On White), "Escarabajo Digital" (Digital Beetle)をライブで披露している。

歌唱力もさることながら、自身の声をリアルタイムでサンプリングしたり、イフェクトをうまく使って演奏に厚みを持たせるなど、電子楽器も使いこなしている様子がよくわかる。

経歴などは official site の "About"を読むといいだろう。

2005年の "Ojala"でアルバムデビューし、以来、4年おきくらいのペースで2023年まで計6枚のリーダー・アルバムが出ている。

2009年の "Sube Azul"や、2012年の "De Tierra Y Oro" あたりは、もっとアコースティックでシンプルなアンサンブルで、

 
2014年の NPR Tiny Desk Concert では "De Tierra Y Oro" から 3曲、"La Gallera," "La Llorona," "Todo Lo Perdido Reaparece" を演奏している。

奥のほうで弦楽器を弾いているのは JC Maillard (JC マイヤール)で、SazBass (*2) や Godin のガット・ギターを弾いている。

JC Maillard

二人は、2019年リリースのジョン・ゾーンのアルバム "The Book Beri'ar, Vol.1" でも共演している。ジョン・ゾーンはアヴァンギャルドな音楽が好きな人にはよく知られていると思う。私も1980年後半くらいに知って以来、よく聴くが、今に至るまで精力的に活動を続けている。ただし、なにしろ多作すぎるので追いかけることはできていない。

まさかソフィア・レイがジョン・ゾーンのアルバムにボーカルで参加しているとは驚いた。

中近東・オリエントの雰囲気がある楽曲がどれもいい。一曲目の冒頭でノックアウトだ。SazBass とパーカッションをバックに複雑なメロディを自由に音程を行き来する歌がいい。


2017年の "El Gavilan" は、この年に生誕100周年を迎えたチリのビオレータ・パラの名曲に取り組んだものだということだが、自身のボーカルをサンプリングを駆使して多重に重ねつつ、ディストーションの効いたエレクトリックギターの音が絡み、こちらもアヴァンギャルドなテイストがある。

ギターは Marc Ribot (マーク・リボ)、こちらもジョン・ゾーンに繋がるフリー・ジャズ、アヴァンギャルド系のギタリストだ。

これらのキャリアを経て "Unbral" や "Coplas Escondidas" のような素晴らしい作品が出来たのか、と、今また感動を新たにしている。

 "Coplas Escondidas"から、もう一曲。1分55秒程度の小品 "Ask Me Now"

聴けば聴くほどますます惚れる。

次のアルバムが出るのは2026年とか2027年だろうか。今から楽しみでしょうがない。


■注記
(*1) チャランゴはウクレレによく似た楽器だが、2弦ずつ複弦の5コースで計10弦が標準だという。伝統的にはアルマジロの背中の甲羅を使って共鳴胴にするので、バックが深い丸みを帯びた形状となる。最近は動物保護の観点から木製の共鳴胴のものが主流になっているということだ。木製であっても形はアルマジロの甲羅を模している。

チャランゴとは - Kencharango

(*2) サズといえばトルコやバルカン半島、ペルシャ、アゼルバイジャンに分布する伝統楽器だ。JC Maillard の SazBass はカスタム品の8弦のエレクトリック・アコースティック(2弦の複弦の4コースのようだ)で、小さな三日月状のサウンドホールが見た目にも美しい。

本文に貼った2014年のNPR Tiny Desk Concert の動画の 17'38"から実演も交えた本人による解説を視聴できるので興味深い。

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