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vol.036「知らない領域でリスクを取ること:人生初のタキシード、詳細編。」

今春から学んでいるMFJ(マインドファッションジャパン、政近準子代表)のご縁で、ブラックタイパーティーに参加。
前段で、これも人生初体験、タキシードを調(ととの)えました。
事前の準備から仕立て時のご相談、完成品を受け取り装うまで、学ぶこと多く、詳細編としてシェアします。※勉強しはじめたての分野であり、記事内容を随時修正する可能性があります。
 

 

1.準備:初歩の予習とイメージづくり

およそ半世紀生きてきて、タキシードをきちんと着たことがない。もちろん買ったこともない。今回は、政近代表にご紹介いただき、大西慎哉さんの「Sloane Ranger Tokyo」で作って頂きました。

◆予習編:タキシードとはなにか。

パーティーに出ることがわかって、最初に考えたのは「タキシードを持ってない!」だった。(※「タキシードの準備だけ?」と間髪いれず政近さんに言われたのを、終了後の反省多々のときに思い出すことになる)

前回触れたように、ドレスコード「ブラックタイ」とは、タキシードをきちんと着用すること。タキシードは夕食時の準礼装で、「ディナージャケット」(英)という呼称がある。日本では多くの人が「タキシード」で認識していると思う。
 
以下は飯野高広氏『紳士服を嗜む 身体と心に合う一着を選ぶ』からの抜粋をもとに書きとめ。
 
・なぜ黒か
「人の個性を色に例えると青い人もいれば赤い人も黄色い人もいる。様々な色の絵の具を混ぜると黒に近づくように、日頃は思考も環境も各自全く異なる者たちが「今日はこの人のために特別に『同じ意思』を持ってこの場に集まった同志であり、感謝する」というメッセージを、混じった色=黒の服を着ることで示す」ということらしい。
日本では古来、たとえば喪服は白の時代が長く、黒の上下が冠婚葬祭の礼服になったのは、欧米の装いを"輸入"して"加工"したのだったと思う(※後ほど調べてみて追記します)。

・正礼装と準礼装
礼装には主に4種類、
 モーニング:今日における儀式の正礼装。
 ディレクターズスーツ:儀式の準礼装。
 イブニングドレスコード:宴の正礼装。
 ディナージャケット:宴の準礼装。タキシードとして知られる。
があり、イブニングドレスコードは今日ではほとんど見ない。タキシードがもはや宴の正礼装に限りなく近づいている、と補足がある。
飯野氏は「昼か夜かではなく、儀式か宴か で判断するのが正しい。たとえば閣僚の任命式で(夜の時間帯に行われるものの)儀式の正礼装であるモーニングで臨むのは大正解」と述べている。

本に書いてあるから間違いないとか、(唯一の)正解である、ということではなく、調べるか、教えてもらわなければ知らないことだ。
小学校から大学まで、授業では1秒も登場せず、いままで話題にのぼることすらなかったと思う。置かれた環境(家庭、国や文化)によって得られる知識が大きく違う、良い例だと思う。

予習のため仕入れた本たち
紳士服を嗜む 身体と心に合う一着を選ぶ』飯野高広著 
ビジネスの装いルール完全BOOK』MEN'S EX特別編集 
英国紳士の生態学 ことばから暮らしまで』新井潤美著 
いずれも「頭に入った」とはとてもいかず、流し見、または読みかけ。このように、初心者ステージで読む書籍は、「検索するためのキーワード」を増やすため、または「たしかあの本に載ってたはず」と思い出すために、手に取るものと、割り切って考える。 

◆百貨店での”偵察”で思ったこと。

「タキシード/ディナージャケット」が、そもそもどんな世界観なのか。家族の提案もあり、雰囲気・用語や感覚をつかむために、百貨店の礼服コーナーに立ち寄った。店員さんに話しかけ、いくつか初歩的な質問をしてみる。

一般に、買い物の値段が上がると、「この人から買いたいと思うか」の比重が高くなる。高級スポーツカーの営業担当が、納車日にバリっとしたスーツで運転して届けるのはそのためだ。
ここだけの話、会話してみて(その販売員さんが悪いとかではなく)、「あぁ、これは大西さんや政近さんのような人に依頼する人が多いはずだ」と思った。お値段も、百貨店のセミオーダーだから安い、というわけでもないのだ。

◆イメージづくり

大西さんのアドバイスで、「自分はどんなタキシード姿になりたいのか」、画像を検索、集めてみる(例:米アカデミー賞授賞式等)。「背のすらりと高い二枚目スター俳優」ではなく、ちょっと小柄で、脇役や悪役、三枚目の役もできて、でも正装すると格好いい。ダスティン・ホフマンやピーター・フォーク、ビル・マーレー、といった人たちだ。なんだかイメージが湧いてきた。


イメージを膨らませるためのGoogle画像検索


2.仕立て編:

この工程は、「目からうろこが落ちる」どころではない学びと気づきでした。どの程度触れてよいか確認しながら、まずはざっとあらましを書きます。

◆事前の確認:

イメージづくりに続き、同じく大西さんの助言に沿って、「何を手持ちで持っているか」「新たに調える必要があるのは何か」を、確認し、報告する。
※詳しくは割愛しますが、「これは持っているもので使えますね」「ご自身で安く購入することもできますよ」等など、非常に親切にアドバイス頂きました。

◆いよいよ、注文。

11月某日、銀座は「奥野ビル」4階、「Sloane Ranger Tokyo」にお邪魔した。
 
ブラックタイを構成する主な要素
・上着:ショールカラーorピークドラペル
・シャツの襟:ウィングカラーorレギュラーカラー
・シャツの本体:プリーツ(折り目)有りorプリーツ無し
・上着の中:ベストorカマーバンド
・ボウタイ:黒、絹
・カフリンクス:黒 ※日本では「カフスボタン」と呼ぶことも多い
・サスペンダー(ブレイシーズ)※ベルトは着けない
・ポケットチーフ:白(麻、絹等)
・靴:エナメルのパンプスが正式。黒革のストレートチップでもよい。
・靴下:黒のロングホーズ。絹製が正式。
・ストール※:上着の襟に沿って(コートの襟のすぐ下に)巻いて下ろす、等の使い方をする
・チェスターコート※:ぺらぺらの薄いステンカラー、またはトレンチコート等はNG。
※会場まで身に着け、手荷物として預けるもの
 
 
採寸いただきながら、サンプルのジャケットを装って確認しながら、進んでいく。選択肢がわかれるところでは、こちらの迷っているところ、わかってないと思うところをご質問し、詳しく解説いただく。大西さんは装いのルールだけでなく、英国の文化や歴史にもものすごく詳しくていらっしゃいます。「全体背景と意味」「選ぶ際のポイント」「意見、助言」をもらえると、人は決めることができる
おかげさまで、すごく納得感をもって、人生初タキシード(ディナージャケット)を無事に注文することができた。

◆残る準備。

注文から仕上がりまでのあいだ、アドバイスに沿って不足してるアイテムを調達していきます。
予算枠に従って、安価に済ませるもの、手持ちのもので充当するもの、これを機に買うものに分けて、手配する。
たとえば靴。これまで履いていたものは今回のディナージャケット(パンツ)のシルエットには合わない。また私の年齢やテイストからも、こういうタイプのものがいい。詳しく助言を頂いた。
靴と準礼装の関係など、なかなか書籍にも書かれてない。だいいち、私が地元の靴屋さんで靴を購入しても、大西さんは何も得するわけではないのだ。ものすごく親切な対応で、本当に感動しました。


百貨店に靴を見にいき(左)、確認して購入(右)

こうして、専門家の知見と経験でフルサポートいただきながら、それはできあがったのでした。

3.完成編:そして、装う!

12月17日、パーティー当日。忘れないよう前日に書きだしたメモで持ち物をチェック【写真】。予約しておいた時間に、ふたたびサロンへ伺う。

当日、忘れ物をしないためのメモ。

数日前に出来上がった"マイタキシード"を、手伝っていただきながら装っていく。ボウタイも練習が功を奏して、問題なく結べた。

ボウタイを結んで。ジャケットを着る前の格好も気に入っている

完成した一式を身に着けて、おどろく。 
サイズのフィット感。一流のプロに正統に仕立てて頂いた安心感。気後れしない感じ。初タキシード(ディナージャケット)という高揚感。
すこし大げさにいうと、鎧に包まれた騎士のような自信だ。

装いを完了し、すこし雑談をして、サロンの次のお客さまが来店されたのでお礼を言って辞去する。後で教えて頂いたところでは、そのお客さまが「今の方(=私)、タキシードを着こなされてましたね(格好いいですね)」と誉めてくださってたとのこと。タキシード歴30分(?)の出来事だから、もう明らかに作って頂いた装いそのものの効果だ。


完成したての装い <大西さん撮影>

会場ホテルまでの移動はコートを羽織ってたのだけど、隠したい感じではなく、見られてもいい、見てほしいぐらいの感覚だった。
袖を通してから会場に到着するまでのこの時間が、すでにひとつの価値体験だった。


会場での撮影


 



以上、人生初タキシード詳細編、リポートでした。

<※1/15 17時追記>
今回の各アイテムの選択。

・上着:ピークドラペル
・シャツの襟:レギュラーカラー
・シャツの本体:プリーツ(折り目)有り
・上着の中:カマーバンド
・ボウタイ:黒、絹
・カフリンクス:黒(オニキス)で安価なものをネットで購入
・サスペンダー(ブレイシーズ):黒
・パンツの裾:ワタリすこし広め
・ポケットチーフ:白(麻)所有していたものを使用
・靴:黒革のストレートチップ、正統派のシルエット(靴の写真右)
・靴下:綿の濃紺で代用。
・ストール:黒(ダークグレー)薄手のマフラーで代用。
・チェスターコート:通常のビジネスシーンでも使うことを考慮し、ネイビーを購入

全体を通じて、英国寄りの選択(カマーバンドはどちらかといえば米国で多く用いられる)+正統派・オーソドックスな形に仕立てて頂いた。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

【今回お世話になったテイラー様】
 Sloane Ranger Tokyo, 大西慎哉さん http://sloanerangertokyo.com/
 〒104-0061 東京都中央区銀座1丁目9−8奥野ビル403
 電話 03-6263-2230


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