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【人事に効く論文】ジョブ・クラフティング研修の効果 → The job crafting intervention: Effects on job resources, self-efficacy, and affective well-being.

van den Heuvel, M., Demerouti, E., & Peeters, M. C. W. (2015). The job crafting intervention: Effects on job resources, self-efficacy, and affective well-being. Journal of Occupational and Organizational Psychology, 88(3), 511–532.

1. 90秒で分かる論文の概要

ジョブ・クラフティングに関する介入プログラム(以下、プログラム)の効果を検証した論文です。
オランダの警察官を対象に設計されたプログラムを実施し、プログラム前後のサーベイ結果から以下の仮説が検証されました。
(1) プログラム参加者は、対照群と比較して、より高いレベルの a.成長機会、b.LMX(リーダー・メンバー・エクスチェンジ) を経験する
(2) プログラム参加者は、対照群と比較して、より高いレベルの自己効力感を経験する
(3) プログラム参加者は、対照群と比較して、a.ポジティブな感情のレベルが高く、b.ネガティブな感情のレベルが低くなる
(4) 週次のジョブ・クラフティングは、週次の a.成長機会、b.LMX、c.自己効力感、d.ポジティブな感情と正の関連を有し、e.ネガティブな感情と負の関連を有する

具体的にはデータ分析としてRM ANOVA(反復測定分散分析)が実施され、その結果、仮説(1)(2)(3)はいずれも支持されませんでした。ただし、対応のあるt検定を実施したところ、プログラム参加者は事前・事後で自己効力感・成長機会・LMXが高く、ネガティブな感情が低いことが確認され、対照群ではそのような変化は見られませんでした。つまり、仮説(1)(2)と(3)b.がt検定では支持されたといえます。
また、仮説(4)についてはデータ分析によってa.・b.・d.(成長機会・LMX・ポジティブな感情)の正の関連が支持されました。

2. 私的な解説/感想

ジョブ・クラフティングに関するプログラムによって、自己効力感などのポジティブな効果が確認された訳ですが、プログラム自体の概要も論文内で紹介されていました。いくつか特徴をピックアップすると以下の通りです。
● 管理職や参加希望者への事前インタビューを実施し、組織・個人のニーズに合致する内容を設計
● プログラム全体を、1日研修→4週間の実践→半日の振り返りセッションという流れで構成
● 1日研修の冒頭で参加者はJD-Rモデルを学習。その上で各自のタスク・仕事の要求度・仕事の資源を模造紙に記載しながら振り返りを行い、自らがジョブ・クラフティングしたいと思う職場の状況を確認。グループワークでその内容を共有した後、具体的な目標と計画を立案
● 4週間の実践の間、毎週末、前週の成果の振り返りを行い、次週に向けたコミットメントを明確にするよう、参加者に指示
● 最後の半日のセッションで、4週間のジョブ・クラフティング実践経験をグループワークで共有
ちなみにこれらの内容は、バンデューラの社会的認知理論に基づいているそうです。

3. 読後の余談

研修プログラムによる介入施策の効果に関する英語論文を読むのは初めてだったので、かなり骨が折れました。特にプログラムの解説やデータ分析に関する内容が難解で・・・。ただ、研修についても、しっかりと設計した事前・事後サーベイを実施すれば論文にできることを学べたのは大きな収穫でした。

4. 関係性の高い論文

2022年2月10日 初稿作成

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