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【人事に効く論文】ジョブ・クラフティングは従業員に幸せをもたらすのか? → The impact of job crafting on job demands, job resources, and well-being.

Tims, M., Bakker, A. B., & Derks, D. (2013). The impact of job crafting on job demands, job resources, and well-being. Journal of Occupational Health Psychology, 18(2), 230–240.

1. 90秒で分かる論文の概要

ジョブ・クラフティングをJD-Rモデルに紐づけ、仕事の要求度と資源の観点から、従業員によるどのようなジョブ・クラフティングがWell-Being(ワーク・エンゲイジメントと職務満足の向上、およびバーンアウトの低減)につながるかを研究した論文です。オランダの化学工場勤務者を対象に3度のサーベイが実施され、そのデータ分析から4つの仮説が検証されました。
①構造的な仕事の資源に関するジョブ・クラフティングは、実際に資源を向上し、結果としてWell-Beingにつながる
→ ワーク・エンゲイジメントについては支持され、職務満足とバーンアウトについては部分的に支持された
②対人関係における仕事の資源に関するジョブ・クラフティングは、実際に資源を向上し、結果としてWell-Beingにつながる
→ 支持された
③挑戦的な仕事の要求に関するジョブ・クラフティングは、実際に挑戦的な要求を向上し、結果としてWell-Beingにつながる
→ 支持されなかった。ただクラフティングそのものは、ワーク・エンゲイジメントの向上とバーンアウトの低減に有意だった
④阻害的な仕事の要求に関するジョブ・クラフティングは、実際に疎外的なな要求を低減し、結果としてWell-Beingにつながる
→ 支持されなかった 

そして、上記の仮説検証の結果から、ジョブ・クラフティングは仕事の資源の向上に寄与し、それが従業員のWell-Beingにもつながるようだ、と結論付けています。

2. 現場目線の解説/感想

少し前提となる理論のおさらいをしておきましょう。
仕事の資源(Job Resources)には、構造的な仕事の資源(Structural Resources)と対人関係における仕事の資源(Social Resources)の2種類があります。構造的な資源には「能力開発」や「自律性向上」などがあり、対人関係における資源には「周囲からのサポート」や「上司からのコーチング・フィードバック」などが相当します。
また、仕事の要求度(Job Demands)にも、挑戦的な要求(Challenge Demands)と阻害的な要求(Hindrance Demands)の2種類があります。挑戦的な要求には「職務責任の重さ」「時間の緊急性」「多い仕事量」があり、阻害的な要求には「管理上の煩わしさ」「感情的な葛藤」「組織的な政治」「仕事資源の不足」「役割上の葛藤」「過多な役割」が含まれます。
この論文では、仕事の資源×2、仕事の要求度×2のあわせて4種類のジョブ・クラフティングの有効性が検証され、結果として、仕事の資源×2に関するジョブ・クラフティングが有効であるっぽいことが分かりました。ただし、仕事の要求度に関するジョブ・クラフティングが有効でないと否定されたわけではありません。この研究からは有効であると言えなかっただけです。そのあたりは今後のさらなる研究が求められる、ということです。

3. 読後の余談

この研究では、1か月に1回の頻度で計3回の従業員サーベイが行われています。また、初回のサーベイ結果については、個々の回答者へのフィードバックも実施されたようです。そこまでしてデータを集めてようやく、いくつかの仮説の支持/不支持を検証することができる。研究の大変さを実感できる論文でした。

4. 関係性の高い論文

2022年2月1日 初稿作成

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