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【人事に効く論文】従業員のワーク・エンゲイジメントを高めるには、「個人の資源」の向上を図るべし! → The impact of personal resources and job crafting interventions on work engagement and performance.

Van Wingerden, J., Derks, D., & Bakker, A. B. (2017). The impact of personal resources and job crafting interventions on work engagement and performance. Human Resource Management, 56(1), 51–67.

1. 90秒で分かる論文の概要

仕事の要求度-資源モデル(JD-Rモデル)をベースに、個人の資源とジョブ・クラフティングへの介入施策によるワーク・エンゲイジメントとパフォーマンス(自己評価)への影響を検証した論文です。オランダの小学校の先生たちを以下の4つのグループに分け、介入施策が展開されました。
①個人の資源への介入施策のみに参加するグループ:26名
②ジョブ・クラフティングへの介入施策のみに参加するグループ:32名
③個人の資源とジョブ・クラフティングを組み合わせた介入施策に参加するグループ:26名
④介入施策に参加しないグループ:18名

介入施策の効果測定にあたっては、施策の実施前2週間と実施後1週間のタイミングで2回の調査が行われ、回答を完遂した102名分のデータ分析から以下の結果が導き出されました。
● 個人の資源への介入施策のみへの参加者(上記①)では、個人の資源が有意に向上し、ワーク・エンゲイジメントも有意に向上した
● ジョブ・クラフティングへの介入施策のみへの参加者(上記②)では、ジョブ・クラフティング行動が有意に向上した(ただし、「挑戦的な仕事要求度の向上」を除く)
● ジョブ・クラフティングへの介入施策のみへの参加者(上記②)および個人の資源とジョブ・クラフティングを組み合わせた介入施策への参加者(上記③)では、ワーク・エンゲイジメントとの有意な関連は見られなかった
● 個人の資源への介入施策のみへの参加者(上記①)とジョブ・クラフティングへの介入施策のみへの参加者(上記②)では、パフォーマンスとの有意な関連は見られなかった
● 個人の資源とジョブ・クラフティングを組み合わせた介入施策への参加者(上記③)では、パフォーマンスが有意に向上した

2. 私的な解説/感想

この論文は「個人の資源とジョブ・クラフティングへの介入施策には一定の効果あり!」と主張している訳ですが、それぞれどのような施策だったのか、論文内に記載がありました。簡単に紹介すると以下のような感じです。
個人の資源への介入施策:
全3回のセッションで構成し、第1回・2回を1日で開催の上、4週間後に第3回を実施。個人の資源として代表的な「希望」「楽観性」「自己効力感」「レジリエンス」を高めるため、以下の3つの演習を実施。
・自らのキャリア観や今後の抱負、最近の業務上の出来事を語り合い、認め合う演習
・互いに前向きなフィードバックを与え、受け取る演習
・ストレス要因を軽減し、レジリエンスを高めるための「断る」演習
ジョブ・クラフティングへの介入施策:
個人の資源への介入施策と同様に、全3回のセッションで構成。JD-Rモデルに基づき、「構造的な仕事資源の向上」「対人関係における仕事資源の向上」「挑戦的な仕事要求度の向上」「妨害的な仕事要求度の低減」に関して、第1回セッションで以下を実施。
・担当タスクの取り組み頻度や他者との協働性の分類による業務の棚卸し
・緊急度と重要度の観点に基づくタスクのラベリング
・自分の強み・モチベーションとタスクのマッチング
・担当タスクにおけるジョブ・クラフティングの可能性に関する議論とジョブ・クラフティング実践目標・計画の立案
その後、4週間を経て開催した第2回セッションにおいて実践計画の進捗を協議し、どのような経験があったかを共有。続く第3回セッションでは目標達成度について話し合い、今後もジョブ・クラフティングを続けていくにはどうすればよいかを協議

こういった研修・ワークショップを企画・運営する立場の者としては、ホントにこれでワーク・エンゲイジメントやジョブ・クラフティングが高まるのかな、と思わなくはないですが、データが示しているのできっとそうなんでしょう。

3. 読後の余談

この論文で導き出された結果には一部、腑に落ちない内容もあります。例えば「ジョブ・クラフティング行動がワーク・エンゲイジメントにはつながらなかった」とか。なぜこういった結果になったのか、その考察も論文では紹介されていますので、気になる方は原文を参照してみてください。
また、個人的には、個人の資源への介入施策にあった「断る演習」が気になりました。なにせ仕事を断るのが苦手なもので…

4. 関係性の高い論文

2022年2月23日 初稿作成

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