【人事に効く論文】仕事へのノリが日によって変わるのは、気のせいではなかった!? → Resources and time pressure as day-level antecedents of work engagement.
Kühnel, J., Sonnentag, S., & Bledow, R. (2012). Resources and time pressure as day-level antecedents of work engagement. Journal of Occupational and Organizational Psychology, 85(1), 181–198.
1. 90秒で分かる論文の概要
仕事の要求度-資源モデル(JD-Rモデル)に基づき、ドイツの様々な産業の約150名の従業員に対して1日3回のサーベイを1週間続けた結果を分析した論文です。「毎日の仕事の要求度と資源の変動が、その日のワーク・エンゲイジメントに影響を与えている」という理論仮説が検証されました。仕事の要求度と資源、ワーク・エンゲイジメントは毎日変わり得る、という着眼がこの論文のポイントであり、具体的に検証されたのは以下の5つの作業仮説です。
(1) 従業員がある一日の仕事をコントロールできると感じている場合、その日のワーク・エンゲイジメントと正の関連がある
(2) 従業員のある一日の心理状態は、その日のワーク・エンゲイジメントと正の関連がある
(3) 従業員が仕事をコントロールできると感じている日において、その日の時間的プレッシャーはワーク・エンゲイジメントと正の相関がある。逆に仕事をコントロールできると感じていない日では、その日の時間的プレッシャーはワーク・エンゲイジメントと負の相関を示す
(4) 従業員が朝の時点でリカバリーを実感している場合、その日のワーク・エンゲイジメントと正の関連がある
(5) 従業員が朝の時点でリカバリーを実感している場合、その日の時間的プレッシャーはワーク・エンゲイジメントと正の相関がある
そして検証の結果、(5)以外、(1)~(4)の仮説がデータ分析によって支持されました。
2. 私的な解説/感想
この研究で設定された仮説はすべて、資源の一つとして”仕事のコントロール”・"心理状態"・”リカバリー状態”を置き、仕事の要求度の一つとして”時間的プレッシャー”を置いたものになります。Bakkerら(2007)にもあった、「仕事の要求度が高い状況において、仕事の資源がワーク・エンゲイジメントをブーストする(押し上げる)」がデイリーでも支持されるかどうかを検証するための工夫といえるでしょう。その結果として論文の流れが非常に分かりやすくまとまっており、特に以下のグラフが秀逸でした。日々の”仕事のコントロール(実線が低い、破線が高い)”と”時間的プレッシャー(横軸)”の”ワーク・エンゲイジメント(縦軸)”との関係が見事に見える化されています。
3. 読後の余談
この論文のデータの出所である1日3回の調査では、始業時にリカバリー状態(4項目)、昼に仕事のコントロール(4項目)・心理状態(3項目)・時間的プレッシャー(3項目)、終業時にワーク・エンゲイジメント(9項目)の計23項目を5稼働日連続でオンライン回答してもらったそうです。当初の参加者154名のうち、ちゃんと回答できたのは114名だったとか。うがった見方をすれば、時間厳守の調査に規律正しく回答できる母集団の結果、ととらえることもできるかもしれません。また、参加者の半数が人事部門の従業員であることも、少し気になります。
といったように、ケチをつけようと思えばきりがないのですが、読んでいてとても面白い論文であったことは間違いありません。ワーク・エンゲイジメントに興味がある人に是非おススメしたいです。
4. 関係性の高い論文
Xanthopoulou, D., Bakker, A. B., Heuven, E., Demerouti, E., & Schaufeli, W. B. (2008). Working in the sky: a diary study on work engagement among flight attendants. Journal of Occupational Health Psychology, 13(4), 345–356..
2022年2月5日 初稿作成
2022年2月8日 関連性の高い論文を追加