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【人事に効く論文】「何を」よりも「誰に」が重要? ワーク・エンゲイジメントへの介入施策はどうあるべきか → Building work engagement: A systematic review and meta-analysis investigating the effectiveness of work engagement interventions.

Knight, C., Patterson, M., & Dawson, J. (2017). Building work engagement: A systematic review and meta-analysis investigating the effectiveness of work engagement interventions. Journal of Organizational Behavior, 38(6), 792–812.

1. 45秒で分かる論文の概要

ワーク・エンゲイジメントへの介入施策に関する論文です。仕事の要求度-資源モデル(JD-Rモデル)を参考に20の先行研究がメタ分析され、以下の内容が示唆されました。
● ワーク・エンゲイジメントへの介入施策には、①個人の資源構築タイプ、②仕事の資源構築タイプ、③リーダーシップ研修タイプ、④健康増進タイプの4つがある
● ワーク・エンゲイジメントへの介入施策の効果は小さいものの、ポジティブな結果につながる
● 介入効果がどの程度持続するかは不明。ワーク・エンゲイジメントとその下位因子である「活力」は介入直後の方がフォローアップ時よりも大きな効果を示し、他の下位因子である「熱意」と「没頭」はフォローアップ時の方が大きな効果を示す
● 国、組織環境、産業、参加者の特性など、様々な条件下で介入効果が観察されたため、普遍的といってよいだろう
● 介入施策の4つのタイプによる効果の大きさに、有意な差は見出されなかった
● 職場グループに対する介入に、効果の大きさとの有意な関連があった。職場グループに介入することによってコミュニケーションやフィードバックが活性化した結果と想定され、JD-Rモデルの考え方に合致する

2. 私的な解説/感想

ワーク・エンゲイジメント向上のための施策に関する研究はまだまだ進んでおらず、普遍的な理論は確立されていません。諸説乱立している状態であり、この論文でも介入の4つのタイプ別に以下のような説明がありました。

①個人の資源構築タイプ:自己効力感・レジリエンス・楽観性などに介入する施策。効果が大きかったものから全く無かったものまで、先行研究の結果は、バラバラ
②仕事の資源構築タイプ:自律性やソーシャル・サポート、フィードバックに介入する施策。先行研究では有意な効果が見出されるまでには至っていない
③リーダーシップ研修タイプ:組織の管理職を対象にリーダーシップに関する知識・スキル研修を実施する施策。部下のワーク・エンゲイジメントを調査し、効果を測定する。これも先行研究での効果はバラバラ
④健康増進タイプ:より健康的な生活スタイルや効果的なストレスコントロールの実現を狙った施策。例によって、先行研究での効果はバラバラ

結論としては、「どんな介入を行うかよりも、誰を対象にするかのほうが重要であり、職場単位で介入すべき」&「対象職場の現状・実態に合わせ、しっかりとカスタマイズした施策を企画・実施しましょう」といった感じです。全社一律の施策でワーク・エンゲイジメントを一気に高めよう、という考えは危険なので、ご注意ください。

3. 読後の余談

この論文のIntroduction部分でワーク・エンゲイジメントに関する研究の発展の歴史が1ページちょっとで簡単にまとめられています。様々な論文の位置関係を整理・把握するという観点から、ここを参照するだけでも意味がありそうです。

4. 関係性の高い論文

2022年2月26日 初稿作成

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