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【人事に効く論文】上司からのコーチングが、翌日の売上高アップにつながる? → Work engagement and financial returns: A diary study on the role of job and personal resources.

Xanthopoulou, D., Bakker, A. B., Demerouti, E., & Schaufeli, W. B. (2009). Work engagement and financial returns: A diary study on the role of job and personal resources. Journal of Occupational and Organizational Psychology, 82(1), 183–200.

1. 30秒で分かる論文の概要

仕事の要求度-資源モデル(JD-Rモデル)に基づき、ワーク・エンゲイジメントに関連する因子の日々の変動について研究した論文です。
ギリシャのファーストフード店の従業員45名を対象に、5稼働日連続で仕事の資源(自律性・上司からのコーチング・チーム組織風土)、個人の資源(自己効力感・組織内自尊感情・楽観性)、ワーク・エンゲイジメントと勤務シフトの財務リターン(恐らくは売上高)が調査されました。
データ分析の結果、有意性が確認されたのは以下のような内容です。
● 日々の自己効力感・組織内自尊感情・楽観性が、日々の自律性とワーク・エンゲイジメントの関係を媒介する
● 日々の自己効力感が、日々のコーチングとワーク・エンゲイジメントの関係を完全に媒介する
● 日々のワーク・エンゲイジメントは、日々の財務リターンの有意な予測因子だった
● 日々の自律性は、日々の財務リターンと負の相関があった (ファーストフードの従業員が自律性を感じるということは、店が暇だということかも)
● 前日の自律性が、翌日の自己効力感を予測した
● 前日の自律性とコーチングが、次の日の楽観性を予測した
● 前日のコーチングは、翌日の楽観主義を完全媒介として、翌日のワーク・エンゲイジメントに影響する
● 前日のコーチングだけが、翌日の財務リターンを予測した

2. 私的な解説/感想

上記1.の内容が少し散らかった感じになっているのは、この論文で想定されていた仮説の多くがデータ分析結果から支持されず、有意性が確認された内容を断片的に紹介したためです。調査参加者が40名少々とデータ数としては心もとなかったことが影響していると考えられます。また、ギリシャのファーストフード店の従業員という、極めて同質的な母集団のデータであることもやや気になります。
とは言え、上司からのコーチングが翌日のワーク・エンゲイジメントと財務リターンにまで影響を及ぼす、という示唆には面白みがありました。

3. 読後の余談

仕事と個人の資源は毎日変動し、それに応じて従業員の日々のワーク・エンゲイジメントが高くもなれば低くもなる。そして、日々のワーク・エンゲイジメントの積み重ねが組織業績に大きく影響する。
仮に上記が事実だとすると、企業における人材マネジメントとして注力すべきは、一日一日の仕事と個人の資源の強化ということになります。しかし、自社の人材マネジメントはそういった考えで設計されていますでしょうか。半期に一度の面談、あるいは1か月に一度の1on1ミーティング頼みになっていないでしょうか。日々の重要性に改めて気付かされる良い論文でした。

4. 関係性の高い論文

2022年2月7日 初稿作成

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