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【人事に効く論文】360度評価の結果を成長につなげられる管理職、つなげられない管理職

Heslin, P. A., & Latham, G. P. (2004). The effect of upward feedback on managerial behavior. Applied Psychology = Psychologie Appliquee, 53(1), 23–37.

1. 20秒で分かる論文の概要

360度評価に関連して、部下から上司への評価(Upward Feedback)の有効性について調査・検証した論文です。執筆者の一人であるHeslin教授は、マネジリアル・コーチングの研究で有名な方。オーストラリアのプロフェッショナルサービス企業税務部門の管理職70名を対象に部下から上司への評価を行い、その結果から以下の仮説が検証されました。

仮説①:部下から上司へのフィードバックが上司のパフォーマンスに及ぼす効果を、「自己効力感」が調整する
→ 支持された。自己効力感が、上司へのフィードバックとその後のパフォーマンス向上との関係を調整していた。上司へのフィードバック後のパフォーマンス向上は、自己効力感が高い人ほど大きかった

仮説②:部下から上司へのフィードバックが上司のパフォーマンスに及ぼす効果を、「学習目標志向性」が調整する
→ 支持されなかった。ただし、学習目標志向の高い管理職は、低い管理職よりもフィードバック後のパフォーマンスが高かった

ちなみに、部下から上司へのフィードバックによって、上司のパフォーマンスは有意に向上していたそうです。

2. 私的な解説/感想

どのように調査を行ったのか、もう少し詳しく説明しますね。
まず全体の流れとしては、対象70名の管理職を被験者群と比較群に区分し、以下の通り3回に分けて行ったそうです。
【time1】被験者群を対象に、部下から上司への評価を実施し、本人にフィードバック
【time2】time1の1か月後、自己効力感と学習目標志向性に関するアンケートを被験者群に実施
【time3】time1の6か月後、被験者群および比較群を対象に部下から上司への評価を実施し、本人にフィードバック

また、部下から上司への評価内容について、「仕事上の知識やスキルの習得を支援してくれる」といった32個の質問を用意し、1(ほとんどない)~5(ほとんどいつも)の5段階で部下に回答させたそうです。
なお、管理職本人へのフィードバックにあたっては、部下からの評価結果に基づいて行動開発目標・計画を策定し、実行に移すことが促されました。「目標のないフィードバックは行動にほとんど影響を与えない(Latham, Mitchell, & Dossett, 1978)」からだそうです。

3. 読後の余談

この論文から得られる示唆を念のため記しておきますと、それは「360度評価の結果を管理職の成長につなげるには、管理職本人の自己効力感が重要」ということです。自己効力感があれば、部下からの評価が厳しいものだったとしても、ちゃんと受け止められるのです。何となく分かりますよね。
360度評価はネガティブな結果につながりかねない側面があります(詳しくは以下のリンク記事参照)。となると、自己効力感が低い管理職に360度評価を行うのは、ちょっとやめておいた方がいいのかもしれません。

2024年4月13日 初稿作成

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