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【人事に効く論文】仕事の要求度には2種類ある? → Linking job demands and resources to employee engagement and burnout

Crawford, E. R., Lepine, J. A., & Rich, B. L. (2010). Linking job demands and resources to employee engagement and burnout: a theoretical extension and meta-analytic test. The Journal of Applied Psychology, 95(5), 834–848.

1. 60秒で分かる論文の概要

JD-Rモデルに基づき、ワーク・エンゲイジメントを中心とする因子間の関係についてメタ分析した論文です。その結果から、「仕事の要求度は、ワーク・エンゲイジメントと直接関係するんだぜ、理論的には」という主張が展開されています。従来の多くの研究では、「仕事の要求度は、ワーク・エンゲイジメントとはあまり関係がない」という考え方が一般的だったところに、一石を投じたのです。
主張の内容についてもう少し説明しますと、同じ仕事の要求度でも、「挑戦的な要求(Challenge Demands)」はワーク・エンゲイジメントと正の相関があり、「阻害的な要求(Hindrance Demands)」は負の相関があるそうです (以下の絵がそのパス図です)。

挑戦的な仕事の要求

また、挑戦的な要求には「職務責任の重さ」「時間の緊急性」「多い仕事量」があり、阻害的な要求には「管理上の煩わしさ」「感情的な葛藤」「組織的な政治」「仕事資源の不足」「役割上の葛藤」「過多な役割」があるとされています。

2. 現場目線の解説/感想

メタ分析の論文だけあって、先行研究の紹介がかなり充実しており、JD-Rモデルの基本的な内容が網羅されていました。その意味では、JD-Rモデルを理解するのにお勧めの論文です。
また、本論文の主張の一つである「挑戦的な要求がワーク・エンゲイジメントを高める」という考えについて、自分自身の経験を重ね合わせると何となくしっくりきました。しかし、「多い仕事量」が挑戦的だとはどうにも思えません。そのあたりは、論文の中でもチラッと触れられており、理論の域をまだ出ていない主張という位置付けになります。

3. 読後の余談

この論文で最も共感した内容は「仕事の要求に対する従業員の最初の認識が、その後の取り組み姿勢や行動に大きく影響する(←かなり意訳)」という部分です。同じ仕事であっても、それを挑戦的↑とポジティブに受け止めるか、阻害的↓とネガティブに捉えるかで、結果が違ってくるということですね。
この部分を読んで私は「3人のレンガ積み」の寓話を思い出しました。同じレンガを積むだけの仕事でも、「レンガを積むだけ」「立派な壁を作っている」「後世に残る大聖堂建築の一端を担っている」といったように受け止め方が違うと、モチベーションが全く異なる、というあれです。世の中のすべての上司が、部下に仕事を付与する際に留意してほしいものです。

4. 関係性の高い論文

Demerouti, E., Bakker, A. B., Nachreiner, F., & Schaufeli, W. B. (2001). The job demands-resources model of burnout. The Journal of Applied Psychology, 86(3), 499–512.
Bakker, A. B., & Demerouti, E. (2017). Job demands–resources theory: Taking stock and looking forward. Journal of Occupational Health Psychology, 22(3), 273–285.

2022年1月29日 初稿作成

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