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AIはプロダクトのUIをどう変えるか

先月、インドのバンガロールで行われたGoogleのイベント「Google I/O Connect Bengaluru 2024」で、アプリケーションの実行時に生成AIがUIを動的に生成し表示する「AI Generated UI」という仕組みが発表されました。

現時点のAI Generated UIは、ユーザーの意図に基づいてFlutterが動的にUIコンポーネントとレイアウトを構成し、ユーザーにパーソナライズされた最適なUIを表示するとのことです。

旅行計画アプリを例に、以下のような説明がありました。

旅行でやりたいことをAIに伝えると
Dreaming(表現がかわいい)
画像とテキストでおすすめのプランとUIを生成してくれます
興味のあるプランを選択するとAIが旅程を組み立て
予算などに合わせて旅程をパーソナライズできるUIを生成

ユーザーからの情報を元にAIが、追加で必要な情報を洗い出し、それをユーザーから提供してもらうためのコードを生成。コードを実行しブラウザでレンダリングしてデバイス上に表示します。

AIがUIをどう変えるか

「AI Generated UI」の一つの具体的な姿を目にすると、AIが今後プロダクトのUIをどう変えうるか、色々と夢想することができます。

現在のほとんどのプロダクトは、そのプロダクトが提供したい結果から逆算してプログラムが組まれ、そのプログラムを実行するために必要なデータを人が提供しやすいようにフォームなどのUIが予め設計されます。
人はそのフォームに情報を一つずつ入力していくことで、プログラムされた結果を得ることができます。逆に言うと予め設計されていない結果を得ることはできません。

一方で「AI Generated UI」を備えたプロダクトは、人が得たい結果をAIに伝えると、その結果を提供するために不足しているデータをAIが要求し、人がそれを提供するような形になります。
予め必要なデータがAIに提供されている状態であれば、AIは追加質問することなく、即座に結果を伝えることができます。

余談ですが、この「予め必要なデータが提供されている状態」を作ることがAI時代の肝であり、Apple IntelligenceがこれからのAI時代にもの凄い力を持ち得るだろうなと思っています。この辺りの話はまた別途考察したいと思います。

さて、予めプログラムされていない状況で、人が得たい結果をAIに伝え、データを提供するための最適なUIとはどのようなものか。多様な人・状況に応じてインプットが必要となるため、柔軟性のあるUIが求められます。

チャットUI、自然言語によるインタラクションはとても柔軟性がありますが、時に難解です。人間同士で会話をしていても、お互いの思考や獲得できた情報が100%一致してることは無く、時には大いなる誤解を生じた状態で会話が終了します。柔軟性があるが故に、会話に必要な情報が時に欠落し時に曲解されてしまうからです。
これはAI(LLM)とのコミュニケーションも同様です。

一方で、誤解を生じさせないためのUIとしてフォームというのは優れています。インターネット誕生以前より、紙面で必要な情報を取得する場合、「氏名」「電話」のような欄を設けて情報は取得されてきており、UIとしての耐久力はある意味普遍的なのかもしれません。

このように考えると、「AI Generated UI」がインタラクティブにフォームを生成するという形は、今後プロダクトのありようとして納得感があります。これからのプロダクトのUIは、なるべくAIが事前にデータを得られる状態を作った上で、得たい結果と最小限の追加データを提供することに適したものになっていくでしょう。

BtoBプロダクトのUIがどうなるか

かなりざっくりな分類にはなりますが、BtoCのプロダクトは「提供者側が定義した使い方」を前提としたUIとなっています。そのため、パーソナライズというのは主にコンテンツ部分で行われ、UI自体がカスタマイズされることはほとんどありません。

一方で、BtoBのプロダクトは「利用者側が定義した使い方」を前提としたUIとなっています。そのため、同じプロダクトであっても企業ごとにカスタマイズされることがよくあります。
大企業であれば、自社で独自開発することもありますし、SaaSであってもローコード、ノーコードでカスタマイズ可能なため、同じプロダクトでも利用する企業によってUI/UXが大きく異なることもあります。

しかし、柔軟性を持たせ、多様なニーズに合わせようとするほど、用途に応じた設計が難解になったり複雑なUIになってしまい、専門知識を持った人の力がなければ、そのサービスを従業員が使いこなせないようになってしまいます。
SalesforceやSAP Concurのようなグローバルで利用されるSaaSには公式の認定資格があります。

私は、このような多様なニーズに応えるが故の難解さ、複雑さを解決する一つの要素が、生成AIによる柔軟なUIの生成ではないかという仮説を立てています。
業種・業態・従業員情報などの企業の基本的な情報、その企業が求める要件などをAIに渡すことで、AIはその企業の業務にカスタマイズされたUI(と必要な機能)をSaaS上で生成して従業員に提供してくれる。
AIの提供するUI・機能に課題がある場合は、管理者やユーザーがフィードバックを行なって改善される。
さらには、そのSaaSを利用する企業のベストプラクティスを元に、全体的な改善が行われたり、自社にあったベストプラクティスを利用することができる。

実際にBtoBのSaaSプロダクトの開発に携わる身としては、このようなプロダクトの実現には、課題と困難がいくつも思い浮かびます。

ミスや遅れが許されない業務を支えるプロダクトとして、常に安定した使い勝手を提供できるのか。
プロダクトが間違いを誘発するようなことはないか。
却って使いづらいプロダクトにならないか。スイッチングコストが思ったより高いのではないか。

しかし、もの凄い速さで進化し続けるAIを見ていると、立ちはだかる課題や困難も乗り越え、このようなAIドリブンなプロダクトは近いうちに必ず実現できるはずと感じます。

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