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可処分時間と部活の相対的地位。部活に対する高校教員の「複雑」な思い。

僕は私立高校で教員をしていて吹奏楽部の顧問をしています。今日は部活動指導について書きたいと思います。

正直、部活動については複雑な思いがあります。

割と多くの教員が思っているかもしれませんが、今後の教員ってこんな感じになりそうですよね。

生徒が減る→学校の収入が減る→人件費下がる→給料下がる→副業するようになる→部活動の顧問をすることが大きな負担になる

この考えで行くと、部活動指導なんて早く学校から切り離されればいいのになぁと思うんですね。

ただ、やっぱり思うんです。「部活動って楽しいな」って。

生徒が一生懸命に一つの事に打ち込んでいるのを見るのはやっぱり好きです。そして、イベントとか僕も一緒に頑張っちゃたりして、イベント終わった後に、「何だか大変だったな」なんて生徒と話し合ったりするのって正直ステキです。

だから部活動に対しては本当に「複雑」な思いがあるわけです。部活に関わりたい気持ちと、自分の時間を確保したい気持ちでとても揺れています。

ちなみに現在、高校教育における部活の存在感は昔に比べて確実に落ちているように感じています。

僕の高校時代「部活」はほとんどの人にとって「絶対に入らなければいけないもの」であったわけです。

しかしそれはもう過去の話になりつつあります。

「部活」は「絶対に入らなければいけないもの」から「娯楽の選択肢のうちの一つ」に地位を落としています。

それはそうですね。現代はやること、やりたいことが多すぎます。

携帯ゲームは面白いし、youtuberは面白い動画をたくさんアップしている。楽しいことはたくさんある。

さらに、大学の合格定員数も減っています。だから勉強時間も確保しなきゃいけないわけです。

「自由に使える時間」の取り合いが始まり、時間の価値が上がっています。

だから最近、部活を辞める生徒の理由のほとんどが「自分の時間をもっと有効に使いたい」というものでした。

部活を運営する者にとってはキツイです。でもこの流れはおそらく変わらないでしょう。だとしたら新時代に合わせた部活をデザインする必要があります。

であるならば、僕らがしなければいけないことは、

「部活をやる」=「他の娯楽よりいけてる時間の使い方をしている」

と生徒に思ってもらうことしかありません。

そのためにやるべきことは

①活動時間の短縮
②スケジュールの明確化
③部活動のクオリティーの向上

この3つです。

①(活動時間の短縮)について:
ⅰ)休日の練習を半日に短縮
ⅱ)自主練習日の設置

活動時間が長時間になるとそもそも入部してもらえません。途中退部者も多くなります。人数が少なくなると部活が維持できないんです。

ただ部活を一生懸命にやりたい生徒もいるので、自主練習日を設けて、そのような生徒はそこで部活を頑張らせています。

勉強、やりたいこと、部活、家族の行事。これらがバランス良く出来るように部活の運営者は気を使う必要があります。

②(スケジュールの明確化)について:
ⅰ)二種類の予定表の作成
ⅱ)それぞれの予定表を早い段階での生徒への提示

予定表は2種類作成してもらいます。そしてそれらに早めの〆切を設けています。

A)部活動予定表(活動日と休みが記載されているもの)
B)練習計画表(次週の練習計画が記載されているもの)

Aは前月の10日までに必ず生徒のグループラインに配信するようにしました。(例:11月の予定は10月10日までに生徒に配信されます)

Bは前週の金曜日までに指揮者の先生に提出されます(金曜日に指揮者の先生が確認して土曜日に修正します)

部活動予定表を早く出すことで、生徒たちは休日を早めに把握して遊びに行くこともできます。同時に、早く予定を出すことで、生徒の時間を先におさえるという効果もあります。生徒が他にやりたいことよりも部活を優先する環境を作り出すわけですね。

また、練習計画表があれば、練習において生徒がいつまでに何をすればよいのかが明確になるので練習時間も効率化されます。

これらの予定表が早めに提示されることで、スケジュールに関する生徒の満足度はかなり上がりました。

③(部活動のクオリティーを上げる)について:
ⅰ)録音提出の導入
ⅱ)リトミックの導入

練習時間を短くした分、時間あたりの練習効率を高める必要がありました。そのためには自分の演奏を録音することが必要だと思いました。自分の演奏を客観的に聴くことが成長のために一番有効だからです。

また、リトミックを練習に大幅に導入し、生徒のテンションを上げようと思いました。テンション上げるだけで楽しいんじゃないかという単純な理屈です。そして、生徒のコミュニケーション手段としてもリトミックを使っており、今まで交流の無かった生徒同士が仲良くなるツールとして考えています。

これ以外にも練習における細かい工夫。保護者とのコミュニケーション回数の増加。部活のペーパーレス化など、とにかくたくさんの改善案を試しています。

正直言うと、「顧問は大変だな。面倒だな。」と思うこともたくさんあります。

でも、考えてみると、世の中に吹奏楽の顧問をやりたい人もたくさんいるわけです。もし今、「吹奏楽部の顧問をやっていい権利」を売りだしたら、数十万円でも売れる気がします。(※だったらその権利を誰かに譲渡して学校として身軽になった方が良いんじゃない?と思うこともありますが・・・)

そう考えて、「これはものすごいラッキーなことかもしれない」と思うようにしています。

そして個人的にはマネジメントという意味において、ものすごい大きな経験値を得ることができています。そういうプラス面も部活動指導にはあるかと思います。

とは言え、教員の個人的な時間をここまで使って維持するべきものなのかな・・・という思いもあります。

複雑です。そして煮え切らない感じですいません。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


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