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このコンテンツがすごい!2022

はじめに

2022年は気が付けばソーシャルゲームばっかりしているうちに終わってしまいました。
これじゃあ「今年のアニメ10選」みたいなやつができない……ではソーシャルゲームをメインに振り返りをしたら良いのでは? と思い立ちモソモソ書き始めたのですが、意外と長くなってしまったのでnoteに投稿することにします。正直振り返りと言うよりも紹介・解説みたいになってるので、触れてない人にこそ読んでいただけると嬉しいです。
また真剣な萌豚としての気概を見せるため、各コンテンツごとに印象に残ったキャラクターをフィーチャーして魅力を解説しています。
ランキング形式での発表などはちょっと恐れ多いので、五十音順に並べることにします。
※重大なネタバレを含む場合があるためご注意ください。


アニメ・マンガ編

五等分の花嫁

映画公開のタイミングで履修したのだが……無駄に食わず嫌いしてて本当に損した。
ラブコメとしてはやや変化球で、個性豊かな五つ子ヒロインたちの五者五様の成長が描かれる。五つ子たちは壊滅的に成績が悪く、主人公は家庭教師として勉強を教えることになるが、実は五つ子の誰か一人とは幼い頃に運命的な出会いをしていた……という、いわゆる「あの時の女の子は誰なんだ」系ラブコメである。また、「五つ子は皆同じ顔」という設定を活かした入れ替わりトリックが随所で効果的に使われている。

「五つ子」設定は単にキャッチーで目を引くというだけには留まらない。
五人のヒロインたちは(ほぼ)恋のライバルであり、同時にかけがえのない家族でもあるというのが本作最大のポイントとなる。
ヒロイン間の横の関係性を無理なく自然に展開に落とし込めるという点で、これ以上最適なフォーマットはないだろう。
また、本作をおいしく味わう上で意識しておきたいのは「アイデンティティの確立」というテーマである。
過去の五つ子は皆同じ姿・似た性格をしているが、母の死や学校生活などを通じて少しずつアイデンティティ(やりたいこと・なりたい自分)が芽生えていく。
ここでも先述の「五つ子フォーマット」が活きてくる。スタートが同一な分、それぞれに起きた変化の度合いが一目瞭然なのである(中学の時点で一花はすでにショートカット、二乃は現在でもロングヘア等々)。
いわゆる「個性」というものが先天的に与えられがちな創作作品において、それがあくまで後天的に獲得したものとして描写されるのは特筆すべき点と言える。
では最初に五つ子を抜け出したのは誰なのか、またそれはなぜなのか……というのは本作の核心部分なので、気になった方はぜひ『五等分の花嫁』を読んでみてほしい。

・中野三玖
私が勝手に作品の大黒柱だと思っているキャラクターが三女の中野三玖。
物語を通しての変化が最も大きく、また最も明確な答えを得たという意味では真のヒロインと言っても過言ではない。
自分の好きなものに自信が持てなかった三玖は、主人公と関わるうちに自分の可能性に気付き、いつしか自分だけの夢を抱き、そして最後にはありのままの自分を好きになることができたんですよね……。
女の子が自分を好きになる作品は名作。


連盟空軍航空魔法音楽隊ルミナスウィッチーズ

アニメ10選ができるほどアニメを観ていないので一本で行く。
本作は『ワールドウィッチーズ』シリーズの最新作だが……なんと人類の敵「ネウロイ」とはほぼ戦わない。シリーズの設定・世界観を舞台に繰り広げられる、まさかのアイドルアニメである。
まったく前情報なしで視聴に臨んだのでもうこの時点で大横転してしまった。その発想はなかった。

ネウロイとの戦争に苦しむ人々の心を癒やすため結成された音楽隊「ルミナスウィッチーズ」は、いわゆるアイドルのライブのような公演をしながら世界中を巡っていく。
その過程で各キャラクターの故郷に寄っての当番回などもあり、最終的にルミナスウィッチーズの歌声はライブで全世界に響き渡ることになる。
まず「ワールドツアー」というコンセプトが、「世界中が共通の敵と戦っている」という状況を最大限に活かしたものであることに着目したい。
背景にあるネウロイの存在によって、主人公たちの「世界各地の人々を癒やす」という動機が常に明確であり、同時に受け手は「戦禍に苦しんでいる」というある種の画一性を与えられている。
この送受信の構造が強固であることにより、一貫したメッセージ性のあるアイドル活動を実現している。作中で「(音楽を)誰に届けたいか」という問いが繰り返されるのがまた象徴的である。

ルミナスウィッチーズは元々戦力外通告を受けたようなウィッチの寄せ集め部隊であり、平均的なウィッチより能力的に劣っている者も少なくない。
そんなウィッチたちがお互いの個性を認め合い、弱点を補い合いながら絆を深めていく様子が映像と音楽に乗せて鮮やかに描かれている。
さらに映像面に関して言うと、ウィッチ特有の編隊飛行やシールド展開をライブパフォーマンスとして取り入れており、独自の舞台演出が見所の一つとなっている。
また主人公ヴァージニア・ロバートソンの相棒・モフィを始め、「使い魔」をマスコット的な動物キャラクターとして配置していて、これがまた非常に愛くるしい。
そうした多彩な演出によって、現実の世界に苦しむ我々をもいつの間にか癒やしてくれているのが本作最大の魅力ではないだろうか。

・アイラ・ペイヴィッキ・リンナマー
ルミナスウィッチーズのリーダーで、ミラーシャからは「アイラ様」と呼ばれ激しく慕われている。
ミラーシャのアイラ様LOVE芸はともかく、アイラは元はエースウィッチだったが負傷が原因で前線を離れ、渋々歌手として活動していた。
ルミナスウィッチーズ結成にあたり、アイラはウィッチとしての在り方に悩み、迷いを深めていく。
しかしルミナスの仲間たちに癒やされたという村人の声を聞いて、今の自分にできるのは音楽を届けることだと気付き、「歌うウィッチ」として生きていく決意を固めるのだった。

派手なライブシーンなどに比べると画的には地味だが、私はアイラが「歌うウィッチ」としての新しい自分を受け入れるシーンがたまらなく好きなのだ。音楽が人を救うということがアイラの目を通して実感できるし、何よりウィッチシリーズの世界観でアイドルモノをやる確かな意義が感じられたからである。
エリーの帰郷回とどちらを挙げようか迷ったが、あちらに関しては下手に言語化する方が野暮に感じられてしまうためちょっと手が出せなかった。
エリー回も本当に至高の一話なので、本作未視聴の方はぜひ騙されたと思って10話まで観てみてほしい。


ソーシャルゲーム編

ウマ娘 プリティーダービー

実在の競走馬がモチーフとなっている、言わずと知れた大正義育成ゲーム。
毎月「チャンピオンズミーティング」(以下チャンミ)という対戦イベントがあり、ゲーム全体のメインコンテンツとなっている。
主にチャンミのために強いウマ娘を育てたり、強いウマ娘を育てるためのウマ娘を育てたりする。ゲームバランスとしてはイマイチで永久にオグリキャップが強い環境が続いているため、実装からしばらく経ったらチャンミで使用不可になるような、いわゆる「スタン落ち」制度を導入してほしすぎる。
現在までは、良くも悪くも育成シナリオが半年ごとに新設されており、主に最新のもので育成にあたるのが良いとされている。
これは飽きが来ないという点では優れているが、半年に一度育成に必要な人権を買い換えなければいけないということでもある。
かかる費用を鑑みると、石油王か修行僧でないとこのゲームを十全に続けていくのは難しいだろう。

一方、各ウマ娘の持つ育成ストーリーは秀逸なものが多く、限られた分量の中でしっかりまとめてくる印象を受ける。
トレーナーとの絆やライバルとの切磋琢磨、自身の叶えたい夢といったある程度共通の軸が用意されており、そこにどうアプローチしていくかにウマ娘の個性が表れてくる。
また、他バのストーリーにおいて株を上げるウマ娘も稀によくいるので、好きなキャラに関してはその周辺までチェックしておく必要があるだろう。
直近だとホッコータルマエのストーリーに登場したスマートファルコン先輩が偉大すぎた。天井して本当に良かった。

・スイープトウショウ
魔女を名乗る祖母の元で育てられ、その影響で魔法使いを目指すようになった。レースで勝てば魔法を体得できると信じている。(公式ポータルサイトより)
とにかくワガママで駄々っ子。トレーナーのことを「使い魔」と呼んで日々コキ使っている。
霊障などの超常現象が存在しているウマ娘の世界ではあるが、残念ながらスイープは本当に魔法が使えるわけではない。
しかしターフを駆けるスイープの姿は、トレーナーに衝撃を与え夢中にさせた。その心に確かな魔法をかけたのである。
数々のレースを経て、この「魔法」で世界中を魅了していく……というのがスイープトウショウの物語。

スイープトウショウを語る上で最も重要なのは、ストーリーを通じて築かれるトレーナーとの信頼関係である。
出会った時から魔法にかかっているトレーナーは、スイープのレースでの可能性を心から信じており、また彼女の信じる魔法を決して否定しない。
そんなトレーナーの献身に対して、その努力を認め徐々に信頼で応えてくれるようになるスイープがたまらなく愛おしい。
また、トレーナー視点でスイープの魅力を伝えるモノローグや、逆にスイープからトレーナーへの信頼が窺えるような言動など、シナリオ描写の上手さが特に際立っている。
特にノーマルエンディングでの、トレーナーへの最大級の賛辞とも言える一幕は必見。

真剣に使い魔やってて本当に良かった……


Fate/Grand Order

7周年記念でのアルク実装によりいよいよ「TYPE-MOONのソシャゲ」感が強まってきた。
年末にようやくメインストーリー二部七章前半が公開され、後半の展開に怯えている。前半だけでめちゃくちゃオルガマリーさんのこと好きになっちゃったけど後々つらい思いをしそう……。
ともあれ後半で「レジスタンスのライダー」さんの出番が無かったらさすがに消費者庁に訴えますからね。

・メアリー・アニング
メアリー・アニングは、イギリスの初期の化石採集者で古生物学者。(史実)
FGOでは「マンガで分かる!Fate/Grand Order」とのコラボイベント「連続活劇神話ミシシッピ・ミササイザーズ」で実装された。
同イベントにおいて、ヒーローであるバニヤンに倒されるべき存在として召喚されたとメアリーは思い込んでいたが、実際にはその逆だった。
元々アメリカ開拓期のほら話から生まれたバニヤンは、自然破壊の象徴である自分が打ち倒される神話を作ることで北米世界の調和を取り戻そうとしていた。
一方メアリーは縁のあるプレシオサウルスを相棒としており、確かな過去を生きた大自然的存在としてバニヤンと対置されているのが巧みである。
またサーヴァントとして現界したメアリーは生前の自らを古生物と重ねるような言動も見せており、せめて化石のように生きた証を遺そうと奮闘する姿に胸を打たれた。
あと長縄まりあさんの声が死ぬほど良い。


プリンセスコネクト!Re:Dive

コンテンツ全体のライトな雰囲気作りが上手く、どちらかと言えばお手軽に楽しめるタイプのスマホRPG。
自分でも真剣にやってるんだかやってないんだかよくわからない。
大抵のキャラクターは割と眼中にないが、マホ・イノリなど一部異常に刺さるキャラクターがいるためなんとか続けられているゲーム。
とりあえずクランバトルとかいう毎月のギルド対抗戦みたいなやつだけはちゃんとやっている。クランバトルはいかに理想編成を組めるかという持ち物検査なので、重要っぽいガシャはちゃんと回すように心がけている。
ただし無償石の配布量が尋常でないので、おそらく2022年はまったく課金せずに戦えたような気がする。

欠点と言うほどでもないが、本作にいまいちハマりきれない最大の要因は、おそらく主人公の異常性にある。
主人公・騎士クンは精神年齢が幼児レベルなので、人間的魅力がほとんど感じられない。他人との会話でも必然的に相手が主導権を握り続けることが多く、不自然なことこの上ない。
作品の顔とも言えるヒロイン・ペコリーヌなどは、一対一の会話にも関わらず立て板に水を流すように延々と独り言を続けることがあり、正直不気味である。
ただ、その空気ぶりというか人畜無害さを好ましく思う人も世の中にはいるのだろう……。

また本作に特有のポイントとして、イベントの演出やアニメーション、キャラクターソングなど遊び部分のクオリティがとても高く、その供給量も多いことが挙げられる。
日頃のイベント周回やミッション消化のモチベーションが労働に近しいことを揶揄して、私はこれを「プリコネの福利厚生」と呼んでいる。


・イノリ

口が達者なヘタレドラゴン。一応ギャングなのだが調子に乗ってやらかしてはボスに怒られる、頭が悪くなった両津勘吉みたいなキャラ。
そのポンコツぶりからお笑い要員として動員されることが多いものの、近2回の担当イベントでは目を瞠るような成長ぶりを見せている。

まず2021年に開催された「イノリSOS!! タイムトラベル・ドラゴンズ」。
ひょんなことからタイムリープができるアイテムを手に入れてしまい、その力で一度はギャングのビッグボスに君臨するもなぜかイノリは満足できなかった。
リープを繰り返す中、偶然ギャングになる前の自分と出会ったイノリは初心を取り戻し、自分自身の力でのし上がらなくては意味が無いことに気が付いたのだった。
過去の自分と対話して答えを得る作品は名作。

念願のビッグボスとなり調子に乗るイノリ

そして2022年に開催された「お宝頂戴! インビジブル・スティーラーズ」。
怪しいカジノを舞台に巻き起こる事件を通じて、普通の女の子・アユミとイノリは意気投合し友情を深めていく。
すったもんだの末、アユミはピンチに陥るがようやくドラゴン族として「覚醒」したイノリの力によって事件は無事に解決することになる。
ひねくれ者であるイノリにとって、アユミは初めての対等な友達であり、初めて「誰かを守るための力がほしい」と強く願ったからこそイノリに眠る真の力が目覚めたのである。
尊すぎ!!!!!!!!!!!!!!だんだんアユアユ(イノリは認めた相手に勝手にあだ名を付ける)に心を開いていくイノリかわいすぎ……。

記念すべき初アユアユの瞬間を収めた貴重なスクリーンショット

各イベントを通して、「逃げ腰で他力本願」だったイノリが「自分の力で立ち向かっていく」ようになり「大切な人を守りたいと願う」ことで覚醒に至るまでの縦軸の描写が本当に素晴らしい。
また、この成長を3年以上という長いスパンで腰を据えて表現できるのはソーシャルゲームというメディアならではの魅力と言える。
こうした長期的に積み重ねてきたことが結実してきているキャラは他にも散見される(アオイなど)ので、引き続きイベントストーリーには目を光らせておきたい。

ちなみにイノリのCVは藤田茜さん。相変わらず魂に直接突き刺さるような、強靱なヒロイン声をお持ちの方である。


ブルーアーカイブ

透き通るような世界観がウリの、日常で奇跡を見つけるRPG。
上記コンセプトの意味は正直よくわからないが、本作第一の魅力が独自の世界観にあることは疑う余地がないだろう。
舞台は近未来風の超巨大学園都市「キヴォトス」で、登場するキャラクターは皆どこかしらの学校に通っている「生徒」である。
主人公は「先生」としてキヴォトスを訪れ、生徒たち全員を手助けしていくことになる。キヴォトスはやたら治安が悪く、生徒たちは皆銃火器を持ち歩き偶発的な戦闘に備えている。
また生徒以外のモブは犬・猫・ロボットなどの姿をしており、生徒たちも見た目こそ概ね人型であれヘイロー(天使の輪)を持つ・異常に頑強であるなど人間離れしていて、我々の知る人間のような生物は存在しない。
一体この世界は何なのか、生徒たちはどのような存在なのか……という謎が最初に好奇心を掻き立てるフックとなっている。
さらに各学校はそれぞれに自治領や軍事力を有しており、生徒会およびそれに類する組織の長は国家元首に匹敵する権限と責任を与えられている。
このような壮大すぎる設定のおかげで、学園モノから戦争モノまで幅広いスケールのシナリオ展開が可能となっているのである。
「モブが人外」ということも相まって、生徒たちを中心に世界が回っているように感じられるのも特色の一つだろう。

肝心の生徒たちについて簡単に触れておきたい。
作中ではあまり言及されないが、翼があったり、獣耳と尻尾があったり、ツノがあったりと複数の種族(?)が確認されている。
また生徒たちは基本的に「部活」や「委員会」といった組織に所属している。イベントストーリーなどはそれらの組織単位でドタバタが展開されることが多く、その規模や活動内容はさまざまである。
ゲヘナ学園を例に取ると、治安維持部隊である「風紀委員会」のように重要な業務で常に多忙な場合もあれば、グルメのためならなんでもありの「美食研究会」のように好き勝手に暴れている場合もある。
性格・個性はもちろん、身体的特徴や課外活動においても多様性に満ちていることが生徒たちの魅力の源泉であると言える。

そして本作最大の特徴はなんと言ってもメインストーリーの一貫性にある。
本作のメインストーリーは各学校にスポットを当てていくオムニバス形式となっているが、そのどれもが一貫して同様のテーマ性を持っている。
「自分たちの日常や居場所を守ること」、このテーマが形を変えて繰り返し繰り返し表現されているのである。
これが意図的なものかは不明だが、ともすればちぐはぐな印象を与えかねないオムニバス形式において、メインストーリーとしての一貫性を担保する強力な軸として機能している。
今後メインストーリーが縦・横どちらに広がっていくにしても、この軸がブレない限り本作への信頼が揺らぐことはないだろう。

・聖園ミカ
「ブルーアーカイブはエッチなゲームではありません」を地で行く、重い十字架を背負った少女。メインストーリーVol.3「エデン条約編」第四章の実質的なヒロインと言える。
取り返しのつかない罪を犯し、罪悪感に苛まれ錯乱するも最終的には祈りによって人間性を回復する……というドストエフスキーの『罪と罰』みたいなキャラクターである。
ただし『罪と罰』とは違い、ミカの祈りはキリエ(罪人が憐れみを乞う歌)を歌ってはいるものの絶対者たる神に対しての祈りとは性質が異なる。
ミカは自らを罪人に貶めた張本人であるサオリとの対話を通して、憎しみ続けることを止め、サオリを赦し幸福な未来が訪れることを祈ったのである。
あんなに自己中心的だったミカが、身も心もボロボロに傷つきながらも一心に誰かの幸福を願う姿に心打たれない先生がいるだろうか……。

また、第四章では「先生」の教育方針というか子供観が強く示される。
先生の「子供には無限の可能性があり取り返しのつかない過ちなどない」という言葉は、ミカ・サオリのみならず私の胸にも深く刺さった。
一方、テロリストとして育てられ事件解決後は行く当てを失ったサオリに「自分の人生に責任を負え」と言い放つなど、誠実だが厳しい一面も見せている。ただそれは「自分の居場所を自分で選択しろ」という意味合いであり、「居場所を守ること」というテーマの一種の変奏とも言える。
たとえサオリが離れても、アツコがハッピーエンドを信じている限りアリウススクワッドの居場所はそこにあるのだと信じたい。

ところで先生の性別って不詳なんですけど、ミカの先生は絶対女性だと思うんですよね……。


マギアレコード

2019年8月から始まったメインストーリー第二部「集結の百禍編」がようやく完結した。
せっかくなのでこれを機に第二部全体を振り返ってみることにする。
第一部については概ねアニメ化されているので詳細は省くが、結論から言うと全員生存のうえ神浜市内でのみ魔女化しなくなった状態がアプリ版第一部の結末である。
第二部では、主人公・環いろはたちが魔女化しなくなった状態を全世界に広げようと決意することから物語が動き出す。またそれに対して協力的な集団や反抗的な集団、「魔法少女至上主義」を標榜する組織などさまざまな魔法少女たちが集結して争いに明け暮れることになる。
それらの各集団の出自や成り立ちは基本的にイベントストーリーで描かれるが、中でもユーザーが最初に触れるイベント「深碧の巫」の時点ですでに第二部の本気度とでも言うべき気概が溢れている。
「深碧の巫」では、山奥で暮らす「時女一族」の集落とそこで「巫」と呼ばれている魔法少女たちの苦闘が描かれる。
「時女一族」の集落は、伝統と称して魔法少女を騙しその「願い」を利用して私腹を肥やす老婆によって支配されており、3人の魔法少女たちがその支配・搾取構造を打ち破り里を脱出する……というお話である。
この「トリック」に出てきそうな集落の胸糞悪い顛末を読んだ当時の私は「二部はヤバい」と直感したが、果たしてその直感は正しかったことが今ならはっきりわかる。

第二部「集結の百禍編」は、簡単に言うとキモチの石とかいうドラゴンボール(それ自体に意思があるという点では四魂のかけらの方が近いか?)の奪い合いを目的としたバトルロワイヤルが大部分を占めている。
もちろん神浜市の地理を利用した戦略のぶつけ合いなども十分に見応えがあるのだが、二部のポイントはあくまで抗争を通して描かれる少女たちの鮮烈で苛烈な感情や思想にある。
例えば先述の時女一族のリーダーである時女静香は、善悪に過剰に固執するあまり一分の悪も許容できなくなってしまい、独善を貫くためにいろはたちと敵対することになる。
一方復讐に狂い鬼と化していた紅晴結菜は、精神世界において環いろはの曇り無き真心に触れることで再び希望を信じられるようになった。
また脳内彼氏との恋愛を世界に認めさせるために大規模なテロまで起こした藍家ひめなは、過激すぎた理想の果てに破滅寸前で仲間たちの献身によって救われた。
彼女たちは誰もが己の信念を貫くために命を賭しており、そこから来る緊張感がそれぞれの抱える想いに強烈なリアリティをもたらしている。
その思想・理想は必ずしも社会的・倫理的に正しいものとは限らないが、それは社会的規範に縛られているが故の反動でもあり、そうした社会との軋轢や葛藤が明け透けに描かれることも本作の魅力の一つと私は捉えている。

そもそも作品の主な舞台となる「神浜市」は東西で対立・分裂しており、経済格差や差別、不信といった不穏な空気が渦巻いている土地である。
この東西の対立を始め、家庭や学校でのトラブルなどの社会的諸問題が多くの魔法少女たちを抑圧しているという構図があり、社会との衝突は魔法少女の命題とも言えるものとなっている。
特に東西の対立については第一部の頃からの壮大な伏線となっていて、第二部で最も盛り上がったシーン(※個人の感想です)を導く最高の爆弾となる。みたま・十七夜が敵に回った瞬間の絶望感といったらない。

そして神浜アベンジャーズ結成へ……

幸いにも神浜市の民度については徐々に希望が芽生え始めているが、遡っては戦国時代に端を発する根深い問題であるため、引き続き予断を許さない状況が続いている。

ここで第二部に特有の語り口についても触れておきたい。
第二部では、中立の立場であり非魔法少女の佐鳥かごめによる手記というかたちで各章が始まることが多い。かごめはとある事情から魔法少女を取材して手記にまとめており、各陣営と冷静に会話ができる稀有な人物となる。
この手記による語りは、導入や結びだけでなく場面転換や時間経過のクッションとしても使用され各章に統一感をもたらしている他、何より物語を多角的に捉える上で非常に効果的に働いている。
さらに「多角的」という点で言うと、メインストーリーの裏側で展開される「アナザーストーリー」の存在も欠かせない。
アナザーはメインの補完的な内容が多く、各陣営の水面下での思惑や裏方・脇役の奮闘などが描かれることによって物語全体の奥行きが増しているのは間違いないだろう。
上記のような構成の妙によって得られる独特の没入感は、ソーシャルゲームならではの体験であり醍醐味であると考えている。

個人的には第二部完結と同時にサービス終了してもおかしくないと思っていたが、どうやら今後も展開が続くようで嬉しい限りである。
また、二部完結後はこれまでの積み残し課題を解決するような良イベントを連発しており、すっきり第三部へ進むためにもしばらくこの路線を続けてほしい。
……ハロウィンでみたま・十七夜、クリスマスでやちよ・みふゆって火力高すぎない?

・瀬奈みこと(と更紗帆奈)
瀬奈みことはメインストーリー第二部「集結の百禍編」のラスボス(魔女化後)で、第二部終了の直前に実装され、同時にイベント「サヨナラ・ストレージ」(と魔法少女ストーリー)でその過去が語られた。
同イベントでは瀬奈の精神が魔女化する以前、親友の更紗帆奈と過ごした数日間の出来事が切なくも鮮やかに描かれている。(瀬奈曰く「すべてが暗闇に包まれる前の一瞬の輝き」)
簡単に内容を説明すると以下の通り。

瀬奈と帆奈は、どちらも劣悪な家庭環境をきっかけに道を踏み外し、いわゆる正しい社会のレールから外れてしまっていた。
瀬奈は自分を排斥した「正しい社会」を憎み、恨みを抱えて生きていたが、帆奈はそんな瀬奈の心をなんとかして救いたかった。
自らの限界を悟った帆奈は、最後の力を振り絞って瀬奈へのメッセージを遺した。
それは瀬奈がこの世に生を受けたことを祝福し、新しい人生を生き直せるようにという願いが込められたものだった……。

このイベントで感情を失いすぎたせいで第二部ラストにはまったく身が入らなかった。せめて二部完結してからイベントにしても良かったのでは?
こんな思いをするのなら花や草に生まれたかった。

真面目な話、このくだりの最も特筆すべき点は「3年ごしの伏線回収がついに成された」ということである。
更紗帆奈は2019年5月のイベント「散花愁章」への登場に伴って実装された。同イベントでの当時の帆奈は完全に悪役で、その目的もよくわからないまま退場してしまい得体の知れない後味の悪さだけが残されていた。
しかし「サヨナラ・ストレージ」を以て我々はようやく知ることになる。数々の悪行の裏に潜む帆奈の真の想いを。
反社会的なポーズとは裏腹に、帆奈は善や正義の価値を信じていた。
またそれを証明するため、道を踏み外してしまった自分が悪役として討ち果たされることを望んだ。
何より社会に絶望し破滅を振りまこうとする瀬奈に、自らの死を通してその無意味さを示し、希望を信じられるようになってほしかったのである。

ところで瀬奈と帆奈は一見共依存的な関係性に見えるが、その実強い依存性を見せているのは瀬奈のみであり、帆奈にはある種の冷静さがあった。
「サヨナラ・ストレージ」では一時の享楽的な逃避行を経て、瀬奈は帆奈との破滅を望むようになるが、帆奈は最期まで瀬奈の幸福を願っていた。
このすれ違いがまた私の心を狂わせたのは言うまでもない。

不幸な境遇、社会からの逸脱、悲劇的な結末、そしてあまりにも尊い関係性……総じて瀬奈と帆奈はマギアレコードを煮詰めたような二人だった。
ifでも夢落ちでも何でもいい、何でもいいから瀬奈と帆奈が二人で穏やかに暮らせる世界を見せてくれよ……。


その他スマホゲーム編(おまけ)

シャドウバース

本格スマホカードバトル。
2022年は墓地の枚数を参照するタイプのネクロマンサーというクラスをよく使っていた。現環境では「スケルトンレイダー」と「ホーリーセイバー」のスタン落ちによるロスに苦しんでおりやる気が出ない。
ネクロに限らず、詰め将棋のように勝利までの点数計算をしている瞬間が一番楽しいゲーム。
まるで将棋だな。


第五人格

中国産の本格スマホケイドロバトル。
プレイヤーは一対四のハンター・サバイバー陣営にそれぞれ分かれ、追いかけたり追いかけられたりする。
とある声優さんが好きなゲームでプレイ動画を投稿されているのだが、全然意味がわからないのもなんかシャクだなと思ってやってみたらめちゃくちゃハマってしまった。ほぼサバ専で、上手ぶり厨なので主に玩具職人と機械技師を使っているが、一生五段から上がれずにいる。

またプロリーグの白熱ぶりがすさまじい。
戦略レベルの読み合い、チームでの連携、タイマンの駆け引きなど多層的なプレイヤースキルが発揮されるため大変見応えがある。
本国で流行の戦略やプレイングがやや遅れて日本の環境に輸入されてくるような風潮があり、そこに表れる国民性の違いなども含めて興味深く観戦している。


おわりに

ここまでお読みいただきありがとうございます。
おかげさまでようやく2023年を始められそうです。
当初の想定よりはるかにしっかりした紹介になってしまいましたが、ソーシャルゲームの奥深さが少しでも伝わっていれば幸いです。
あなたも(任意のソーシャルゲーム)を始めてみませんか?

また今年はなんとしてもアニメを観るつもりなので、年末にはきっとアニメ10選ができるはずです。でもソーシャルゲームの振り返りもしたいですね。
それでは、長文失礼いたしました。

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