バッハより前のクラシック音楽

 クラシック音楽は昔から好きだが、最近その中でもバロック以前の音楽が気になっている。具体的にCDを買い始めたのは、iTunesの履歴によると2016年とある。

 なぜ私がバロック以前の音楽に興味を持ったかと言うと、漫画家・つげ義春の影響だ。

 つげ義春は、私の割と好きな漫画家の一人だが、好きな音楽を語っているインタビューがある(芸術新潮 2014年01号)。聞き手である山下裕二氏(美術史家)の「クラシックではどのあたりが特にお好きなんですか?」という問いに、つげ義春はこう答えているのだ。

「バッハ以前です。バッハ以後は、作曲家の個性とかが出過ぎるでしょう。それ以前は教会音楽、神への捧げものでしたから。ベートーヴェンなど、個性を打ち出すものになると駄目なんです」

 この辺で、

 うわかっこいい!

 と思ってしまったのである。なんかもう、突き抜けていて非常によろしい。私も、「好きな音楽は」と聞かれたときに、

「バッハ以前です(キリッ)」

 と答えてみたいものだ。

 ウィキペディアによれば(安直ですみません)、つげ義春は「J.S.バッハ以前の音楽を愛好し、特に宗教曲、ルネサンス音楽には造詣が深く、現在に至ってもモンテヴェルディ、ドラランド、シャルパンティエ、タヴァーナーなどをよく聴く」のだそうである。もうこの辺の作曲家を全然知らないので、身震いがしてきた。

 とはいえ、バッハ以前の音楽ってなんだろうか?と思い、いろいろ調べてみた。

 とりあえず、デイヴィッド・マンロウから始めることにした。夭折した演奏家で、ロンドン古楽コンソートの主催者である。「ゴシック期の音楽」はほとんど合唱曲のような感じだったが、「中世ルネサンスの楽器」が実にいい感じ。

 あとは、友人のブログを参考にした。

 そこから派生していろいろ聞いてみたが、なんとなく感じたのは、私は声楽、宗教音楽がどうも苦手らしいということである。グレゴリオ聖歌とか。しかし、バロック音楽以前の音楽というと、イコール宗教音楽のようなものである。

 ちょっと選択肢間違えたかもしれない。とはいえ、宗教音楽以外の「世俗曲」と言われる曲もかなり残っている。だがその数は膨大だし、CDが日本では手に入らないとか、輸入盤だけだとか、そういうものもあるらしい。

 クラシックが怖いのはこういうところだ。「じゃあ、この山は低そうだからちょっと登ってみようか」と思ったら、かなりの急勾配で、頂上に付く前におそらく寿命が尽きてしまうだろう。バロック以前ですらこんななのだから。

 結局、今はバッハを聴いている。ブランデンブルク協奏曲、いいですよね…。

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