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いざなぎ流呪詛と呪詛返し

 『光る君へ』の源明子は、いざなぎ流呪詛で、藤原兼家を殺害した。そもそも、いざなぎ流呪詛とは、源氏討伐のための呪詛であるので、それを源氏の明子に使わせるとは、オシャレだと思った。

※いざなぎ流:安徳天皇付の占いが得意な女御が、「壇ノ浦の合戦」後、四国の山奥に逃れ、源氏討伐のために編み出した呪術や神楽の総称。藤原兼家が死んだ時にはまだ存在していないが、原型はあったのであろう。

(前略)やいは(刃)の剱を以て、くろきもかきわり、五臓をき(切)りやぶ(破)り、ち(血)をあやし、ち(血)花をさかせる、正めつ(消滅)させる、かげ(影)もないぞ、そくめつ(即滅)そばかと切つてはなす。

 いざなぎ流では「式王子」(陰陽道の式神)を放って、相手を切り刻む。
 対抗する呪詛返しの呪文は、いざなぎ流では「不動王生霊返し」になる。

もえんふどうみょうおう(不動明王)、かえんふどうおう(火炎不動王)、なみきりふどうおう(波切不動王)、おおやまふどうおう(大山不動王)、こんがらふどうおう(吟伽羅不動王)、きちじょうみょうふどうおう(吉祥妙不動王)、てんじくふどうおう(天竺不動王)、てんじくさかやまふどうおう(天竺逆山不動王)。
かやし(逆し)におこなうぞ。かやし(逆し)におこない(行い)おろせば(下ろせば)、むこう(向こう)はちばな(血花)にさかす(咲かす)ぞ。みじん(味塵)とやぶれ(破れ)や、そわか。
もえゆけ、たえ(絶え)ゆけ、かれ(枯れ)ゆけ。いきりょう(生霊)、いぬがみ(狗神)、さるがみ(猿神)、すいかん(水官)、ながなわ(長縄)、とぶひ(飛火)、へんび(変火)。
そのみ(身)のむなもと(胸元)、しほう(四方)さんざら、みじん(味塵)とみだれ(乱れ)や、そわか。
むこう(向こう)はしるまい(知るまい)。こちらはしりとる(知り取る)。むこうはあおち(青血)、くろち(黒血)、あかち(赤血)、しんち(真血)をはけ(吐け)。あわ(泡)をはけ(吐け)。
そくざ(即座)みじん(味塵)に、まらべや。てんじく(天竺)ななだんこく(七段国)へおこなえば(行えば)、ななつ(七つ)のいし(石)をあつめて(集めて)、ななつ(七つ)のはか(墓)をつき、 ななつ(七つ)のいし(石)のそとば(外羽)をたて(建て)、ななつ(七つ)のいし(石)のじょうかぎ(錠鍵)おろして、みじん(味塵)、すいぞん、おん・あ・び・ら・うん・けん・そわかとおこなう。
うちしき(打ち式)、かやししき(返し式)、まかだんごく、けいたんこく(計反国)と、ななつ(七つ)のじごく(地獄)へうち(打ち)おとす(落とす)。
おん・あ・び・ら・うん・けん・そわか(※)。

※おん・あ・び・ら・うん・けん・そわか:唵阿毘羅吽欠蘇婆訶。大日如来の真言。不動明王は大日如来の化身である。

 不動明王は強大な力を持つので、呪詛の正体をいざなぎ流の式王子だと見破って、いざなぎ流の呪詛返しをしなくても、「五体加持文」で十分である。

 この「五体加持文」に出て来る「呪詛神」が陰陽道の式神、いざなぎ流の式王子になる。




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