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『どうする家康』に思う

総集編(12月29日)を見た。

第1章「始まりのとき」(午後1:05~2:14)
 駿府で平穏に過ごしていた松平元康が「桶狭間の戦い」を機に、乱世の荒波にのみ込まれていくまで。
第2章「試練のとき」(午後2:14~3:24)
 徳川家康&織田信長 VS 武田信玄の戦い。そして、徳川家康の正妻・瀬名&長男・信康を巡る悲劇。
第3章「躍動のとき」(午後3:29~4:39)
 織田信長が本能寺で討たれ、天下統一を果たした豊臣秀吉の時代。
第4章「覚悟のとき」(午後4:39~5:49)
 江戸に幕府を開いた徳川家康が、豊臣秀吉の側室・茶々、息子・豊臣秀頼との戦いになだれ込んでいく。


──やはりこのドラマは好きになれない。

コロナとインフルのダブルパンチ、世界的な紛争と物価上昇、壊滅的な気候変動「地球沸騰化」と、日本はもとより、世界全体が暗いムードに包まれた2023年──大河ドラマの主人公は、戦国の覇者・徳川家康であった。

──これは期待できるぞ! 戦国のスーパースターが東から照らす!!!

期待して裏切られた。
期待が大きかっただけに、ショックは大きい。

この暗い世界を照らしてくれるドラマを期待していたのであるが・・・。

 文芸評論家・末國善己氏の分析によると、歴史小説の家康像は、

  権謀術数を駆使する「狸親父」
   ↓
  我慢と忍耐を重ねて天下人になった「苦労人」(『徳川家康』)
   ↓
  人間味ある等身大の「凡人」(『どうする家康』)

と変化したという。
 『どうする家康』は、「徳川家康は、白兎→虎→狸と変わった」としたが、この「徳川家康=狸親父」からの脱却は、すでに山岡荘八が『徳川家康』でやってのけ、大河ドラマ化されたことにより、放送後の徳川家康のイメージは「苦労人」「ホトトギスが鳴くまで待つ堪忍の人」に変わっており。

──「ならぬ堪忍、するが堪忍」(出典不明の格言)

 武将隊は『海老すくい』ではなく、『堪忍をどり』を踊る。

最近の史学会の家康研究の方向は、

  伝説や伝承による神
   ↓
  一次史料による実像

であり、これを史学会では「徳川史観からの脱却」と呼んでいるが、私は「家康の人間化」と呼びたい。

 先に述べたように、既に「徳川家康=苦労人」のイメージが、遺訓
  人の一生は重荷を負ひて遠き道をゆくが如し。急ぐべからず。
  不自由を常と思へば不足なし。
  心に望み起こらば、困窮したる時を思ひ出すべし。
  堪忍は無事長久の基(もとい)、怒りは敵と思へ。

と共に浸透している。そして、「堪忍」の精神は、駿府人質時代に養われたとし、小説やドラマでは、駿府人質時代の苦労が強調される。
 ところが、現在の歴史学者は、
①「人質」は「監禁」ではなく、自由な「軟禁」。今川義元は、将来、徳川家康に、嫡男・今川氏真を支えさせようとし、学問や兵法を身に付けさせ、今川一族の女性・瀬名姫と結婚させた。
②徳川家康の「遺訓」は、徳川光圀の「人の戒め」の語調を池田松之介が整えて東照宮に奉納したものである。
と明らかにしているので、小説家やドラマの脚本家は、この最新の研究結果を取り入れ、「徳川家康=苦労人」ではなく、「徳川家康=凡人」として「人間・家康」を描くようになった。

 私が「令和の家康ドラマ」に求めているのは、「突出した政治家である偉人・家康の魅力を伝えるドラマ」であるが、私史観で、最も彼の凄さが表われていると思われる「大坂の陣(豊臣氏滅亡)~死去までの業績」が、このドラマでは深く扱われなかったことは、非常に残念である。「天下布武」と、敵を倒すことが出来る強い武将は現れても、「元和堰武」と、強い武将として敵を倒した後は政治家になり、約250年間にもわたる平和の世の礎を築くことが出来る人物は、そうそう現れない。

 また、『どうする家康』で神回とされるのは、徳川家康が主人公ではない回、つまり、戦国版『走れメロス』の鳥居強右衛門の回や、小豆の回であり、人気投票で選ばれたベストシーンの第1位は、「松本潤さんの安土城での(怒りをこらえての笑顔の)えびすくい」(第26回)であることから推測できるように、視聴者の願いと、脚本家の意図とに乖離が見られる。視聴者は、主人公が松本潤さんだと聞いて、「地味な苦労人」とは全く違う家康像、つまり、松本潤さんが輝ける「華のあるスーパースター」な家康を求めたし、そうなるはずだと思っていたと思われる。

 このドラマの徳川家康は、戦国のスーパースターではない。「どうする?」と悩み、家臣たちに助けられて天下を取った。最終回のエンディングでは、家臣たちが徳川家康にお礼を言った。このドラマの大きな流れからして、これは変だ。エンディングでは、家臣たちが(第1回の「桶狭間の戦い」の時のように)次々と「殿」と言い、徳川家康がお礼を言う流れになるはずだ。(総集編では、徳川家康の脳内の走馬灯になり、「暁の空」が流れた。しっくりした。)

 あと、駿府人質時代は、竹千代も瀬名姫も子役起用がよかったな。


大谷選手の動画を見たり、記事を読んだりするのが好きだ。
どれも大谷選手をリスペクトした内容だからだ。

今年は個人的にいろいろあった。人生初の入院、退職。
無職→Webライター(自称)。

今年の私の心の支えは、サポーターさんか、徳川家康になるだろうと予測したが、りりちゃんと同一視されたのかサポーターさんは現れず、『どうする家康』には失望し、結果的には大谷選手が心の支えになった。

──大谷選手は、400年後、大河ドラマの主人公になるかもしれない。

今回の大河ドラマでは、「主人公・徳川家康は、江戸時代は神でしたが、史実を調べたら、あなたと同じ凡人でした。『どうすればいいんじゃぁ』と悩み、家臣に救われていました」と描かれ、「今回の主人公は徳川家康ではなく、〇〇(家臣名)では?」と思える回が多々ありました。

400年後の大谷選手を描いた大河ドラマが「令和時代はユニコーンでしたが、史実を調べたら、打率3割(10回中、半数以上の7回もアウト)、手術して、仕事をしなかった長期離脱も複数回ありました。並みの選手と同じ凡人でした」だったら嫌だな。


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