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饒速日と瀬織津姫(消された物部王朝)

1.祓戸大神としての瀬織津姫


 瀬織津姫命(せおりつひめのみこと)は、日本を代表する神でしたが、物部王朝の饒速日(にぎはやひ)大王の后(正室)ですので、物部王朝の存在と共に記紀(『古事記』と『日本書紀』の総称)には載せられず、「消された神」「封印された神」と言われています。

 「瀬織津姫命」という御神名がどこに載せられているかといえば、中巨金連(なかとみのかねのむらじ)が祓戸大神を祀った佐久奈度神社(滋賀県大津市大石中町。天智天皇8年(669年)創建)に籠もって考えた「大祓詞」(おおはらえのことば。「中臣祭文」「中臣祓詞」とも。平安時代には、毎年6月(「夏越大祓」)と12月の晦日に、犯した罪や穢れを祓うため、中臣氏が朱雀門で奏上した)です。(平安時代の佐久奈度神社は、天皇の厄災を祓い、平安京を守護する「七瀬の祓所」の一社。)

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『大祓詞』は暗唱できる方が多いと思いますが、読まなければいけない時は、プリントを配布して下さるので、今までに暗記していなくて困った経験はありません。『祓詞』は唱えたことが無いです。もっぱら『略祓詞』ですね。何かあったら、「祓へ給え、清め給へ」の連呼です!

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※『大祓詞』
(前略)高山乃末短山乃末与里佐久那太理爾落多岐都速川乃瀨爾坐須瀨織津比賣登云布神大海原爾持出伝奈牟此久持出往奈婆荒潮乃潮乃八百道乃八潮道乃潮乃八百會爾坐須速開都比賣登云布神 持加加呑美氐牟此久加加呑美氐婆氣吹戸爾坐須氣吹戸主登云布神根國底國爾氣吹放知氐牟此久氣吹伎放知氐婆 根國底國爾坐須速佐須良比賣登云布神持佐須良比失比氐牟此久佐須良比失比氐婆 罪登云布罪波在良自登祓給比淸給布事乎天都神國都神八百萬神等共爾聞食世登白須

高山の末(たかやまのすえ)
低山の末より(ひきやまのすえより)
佐久那太理に落ち多岐つ(さくなだりにおちたきつ)
早川の瀬に坐す(はやかわのせにます)
瀬織津比売と伝ふ神(せおりつひめといふかみ)

実際に読む時は「せおりつひめ」と言うよりは、「しょーりつひめ」って感じですね。なお、「佐久那太理」は瀬織津姫を含む「祓戸大神」を祀った佐久奈度神社のことですが、瀬織津姫は川神ですので、全国、どの川でもOKです!

『大祓詞』の内容
罪や穢は川に流せばよい。川には瀬織津比売命がいて、海まで運んで下さる。海には速開津比売命がいて、呑み込んでしまう。呑み込まれた罪や穢は、海底の根の国・底の国へ通じる門(気吹戸)の門番の気吹戸主命が海底の根の国・底の国へ吹き払って下さる。すると、根の国・底の国にいらっしゃる速佐須良比売命という女神が全てを受け取って下さり、持ち去って封じて下さる。

参拝の方法
神社に参拝する時は、その前に穢を落とす必要がある。穢を落とすには、塩が必要で、イザナギは黄泉国の穢を海水で洗い流している。昔は海まで行ったが、後に「川は海に繋がっているから」として、神社の横の川で斎戒沐浴(さいかいもくよく)をしてから参拝するようになった。現在では手水舎で両手を洗い、口を漱げば良しとされている。
 なお、神社の境内に玉砂利が敷かれていたり、浜砂がまかれたりしており、その上を歩くことは、「海の上を歩いている=穢を落としている」ことと同義である。

穢の取り除き方
和紙の人形(ひとがた)に住所、氏名を書き、体をその人形でこすり、大きく息を3回吹きかけて、穢を人形に移し、川に流せば、あとは祓戸四神が適切に処理して下さる。ただ、この方法は、現在では個人情報保護法に抵触する。

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祓戸大神(はらえどのおおかみ。「祓戸四神」とも)
川:瀬織津比売命 ※「瀬」は「早瀬」で川

海:速開津比売命 ※開=海?

気吹戸(根の国・底の国への門):気吹戸主命

海底(根の国・底の国):速佐須良比売命

「祓戸(祓所、祓殿)」とは「祓を行う場所」のことで、「祓戸大神」とは、「祓戸に祀られている神」である。祭祀を行う場合、まずは関係者全員が境内の祓戸社の前に集まり、祝詞を奏上したり、お祓いをしてから祭祀を行う。

「祓戸大神」は、境内の祓戸社以外にも、佐久奈度神社や大行事神社などに祀られている。

2.川神としての瀬織津姫(弁財天との関係)

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 「弁財天」という表記は稲荷信仰(宇賀神)と結びついた結果(鎌倉市の銭洗弁財天宇賀福神社はその典型例)であり、本来は「弁才天」と表記する。「才」とは「学芸」、特に(川のせせらぎから)「音楽」であるので、琵琶を持っている。(『大日経』では「妙音天」「美音天」という。)
 桃厳寺(愛知県名古屋市千種区四谷通)の「ねむり辨天」は、「芸能人がお忍びで訪れる弁才天」として有名です。(フルーツ大福のお店じゃないです。)

 そもそも「弁才天」とは、ヒンドゥー教の女神・サラスヴァティー(Sarasvatī)という川神で、手にはヴィーナ(琵琶)や水瓶を持っている。

 瀬織津姫命は「祓戸大神」であり、川におられる川神であるので、日本のサラスヴァティーと言えるのであるが、瀬織津姫命=弁財天とする神社は、瀬織戸神社(静岡県静岡市清水区折戸)など数少ない。普通は、弁財天=市杵嶋姫命であり、瀬織津姫命=十一面観音である。

 愛知県の矢作川沿いの天白神社や静岡県の大井川沿いの大井神社には、瀬織津姫命が治水神(川の氾濫を防止する神)として祀られている。

 また、川には滝があるので、瀬織津姫命は滝神でもある。
・全国の滝には瀬織津姫命が祀られていたが、不動明王を祀って封印した。
・那智大社が式内社でない理由は、那智の滝神が瀬織津姫命だからである。
等の俗説がある。

3.水神としての瀬織津姫(龍との関係)


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 瀬織津姫命は、その名から「川の神」「早瀬の神」と思われるのですが、天照大神との関係から「もっと偉大な神のはず」だとして、川や滝に限らず、湖沼や、井戸や・・・要するに「水神」だとする説があります。

 「水神」は、蛇であり、龍ですので、瀬織津姫命=龍神説がありますが、ちょっと言い過ぎかと。
 静岡県御前崎市(浜岡原子力発電所の近く)に龍が棲む「桜ヶ池」があり、池の畔には瀬織津比咩命を祀る池宮神社(ご神紋は桜の「三葉三花」)がありますが、「桜ヶ池」の龍の正体は、瀬織津姫命ではなく、皇円阿闍梨です。
https://www.city.omaezaki.shizuoka.jp/kanko/watch_goaround/sakura.html
 ただし、『三国伝記』や『和漢三才図会』では、池の主を毒蛇としています。
https://note.com/sz2020/n/n8c4e5b0237d1

 八岐大蛇は龍であり、出雲国では斐川(氷川)、越国では九頭龍川、尾張国では木曽三川であり、
 龍=川=川神・瀬織津姫
というのですが、どうでしょう?(西洋のドラゴンは、9つの頭を持ち、火を吐く生物。製鉄技術と共に日本に伝わると八岐大蛇になったという。)
 アニメ『千と千尋の神隠し』(2001年)には、琥珀川の神・白龍が登場します。彼の名は「饒速水琥珀主(ニギハヤミコハクヌシ)」。饒速日と龍神・瀬織津姫の子という設定かな?

 ワタシ的には、龍は中国的で、蛇行する川を見ても龍ではなく蛇に見えます。風水師の「龍とは気脈」という説明の方が腑におちます。

 ワタシ的には、龍のイメージは、黒雲(雨雲、雷雲)の中から「雨」や「雷」と共に出てくる「空飛ぶ生物」です。それに、川は龍に見えないけど、稲妻は龍に見えます!

 日本で最初に全国の瀬織津姫を祀る神社を巡拝したのは出版社の社長さんですが、2人目(一説に3人目)はスピリチュアルな方で、瀬織津姫を祀る神社へ行ってはスピリチュアルな本を出されたので、感化された方が多いようで、ネットで「瀬織津姫」で検索すると、スピリチュアルな記事が多くヒットします。
 瀬織津姫を祀る神社へ行くと、空に「龍雲」(2017年NHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』で登場した龍の形をした雲)が立ち昇るのだそうですが、私の場合、龍雲らしき雲を見たのは、池宮神社が最初で最後です。


4.饒速日后神としての瀬織津姫(天照大神との関係)

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