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帰省の途中のとりとめ

 ひどく頭が痛いので、休憩のサービスエリアでホットココアを買って飲む。5分の休憩は限られているからそのまま高速バス内に戻って出発を待つ。戻ってくる人たちを待つと、運転手はカウンターを持って、かちかちと人数を数える。

 ひどい頭痛と昨日から頭を悩ましている異常な憂鬱感について、理由はわかっているのだけどあえてここにはそのことは書かない。私にできるのはこれをやり過ごすことだけで対抗することではないからだ。書いたってどうしようもない。赤が白になることはなく、赤は赤いままである。

 バスの中で、小野美由紀の短編集『ピュア』表題作を読む。
 女が男を(物理的に胃で消化し)食べる世界観のなかに自分を置くことができない。でもこれはこれで読み方としてありだろう。他人の物語を他人の物語として消費すること。
 ある人は、「その世界に自分も行ってみたいか」という観点からSFやファンタジーを読むらしい。
 そしてある人は、役割的な役割を与えられた登場人物を見ると嫌気がさすらしい。
「ピュア」など、なんだか知らないけど「男であるから」食われる男ばかり出てくるので彼らには憤激ものかもしれない。

 頭痛がひどいので「ピュア」だけ読んで本を閉じた。外はヤマザクラがぽつぽつと生えていて、全部が満開に見える。桜前線に異常はない。桜前線を飛び越えて私は帰省する。山を越えたら曇りの空が晴れて少しだけ心が晴れる。

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