チェス

僕は毎日30分から1時間、チェスをする。「chess.com」というオンラインアプリがあり、世界中のチェスプレイヤーと対戦できる。もちろん時差はある。だから早朝にやるとヨーロッパ圏の人とよく当たるし、昼間だとアメリカの人とよく当たる。たまに電車でこのアプリをやっている人を見かける。たまにといっても年に2、3回だけど。


僕がチェスにハマったのは3年前のこと。海外旅行をしていて、何か日本に帰って自慢できる趣味を持って帰ろうと思ったのだ。最初は全然できなかった。動ける範囲が広すぎるし、何よりポーンが目の前の駒を取れないというのはショックだった。将棋も好きなだけに、桂馬とナイト、歩とポーン、ヤリとルークの区別が難しかったのだ。


チェスができるようになればかっこいいだろう、という気持ちだけで僕はチェスを毎日やり続けた。すると朝起きて朝飯を食べ、一息つくとスマホを開いてチェスをするという習慣がついてしまった。その習慣がつくのに1ヶ月もかからなかった気がする。


するとどうだろう、あの日から3年以上、僕は毎日チェスをやっている。これはあんまり良いことじゃないな、と思い始めたのは社会人なってからだ。仕事から帰って寝るまでの数時間、それは貴重な時間である。本だって短編ひとつは読めるし、映画も4分の1は観れる。にも関わらず僕はスマホを開くとすぐにチェスをしてしまう。癖なのだ。


ひどいのは休日だ。朝起きてご飯を食べてまたベッドに戻り、チェスをやってしまう。この時は最悪だと思う。でもアプリは消さない。チェスは他の何よりも「明確でスリリング」な遊びなのだ。


チェスの一番良いとことは「5分後には全てが終わっている」というシンプルさである。僕は大体3分の持ち時間でゲームをする。お互い持ち時間を使い果たしたとしても、6分以上には絶対にならない。最初はお互いの駒が平行に並んでいる。それがものの数分で優勢、劣勢になり、ある時には片方が泣き出してしまうほどのワンサイドゲームにもなる。チェスをしている時は何も考えなくて良い。何も、というのはつまり結婚、収入、余生、疫病、、、そういった類のことだ。チェスのプレイについてはもちろん考える。


他に面白いのが、相手の駒の動かし方でそいつの性格が分かるところである。例えば初手からナイトの前を動かせば天邪鬼、クイーンズ・ギャンビットなら保守的、、、という風に。国籍によってその性格が別れるのも面白い。フィリピン人は短いシンキングタイムで80点の動きをするし、スペイン人は後先のことをあまり考えない。ロシア人はいつでも相手を見下しているし、アメリカ人は何かと器用である。


今日もこの記事を書く前にチェスを3ゲームくらいやってしまった。電車に乗っている時は読書の時間が足りないと思うのに、それなら家でチェスをするなという話。戒めの記事。




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