結局読んじゃう芥川賞
「芥川賞が気にならない」という記事をちょっと前に書いたが、実はその1週間後くらいには芥川賞掲載号の文藝春秋を買っていた。やはり「限りなく透明に近いブルー」「赤ずきんちゃん気を付けて」のような作品が出てきてないかを確認しないと気が済まないのだ。
今回の受賞は2人。まず最初に「サンショウオの四十九日」の朝比奈さんの顔写真や経歴を見て「なんとなく難しそうな小説を書きそう」いう印象を持った。読み進めていくと、僕の好みではない小説であることがわかり、2,3ページで読むのをやめた。
松永K三蔵さんについては、名前、顔写真、経歴にまず興味をもった。こういう系の人には好感が持てる。またタイトルの「バリ山行」についても、僕は登山が好きなので、なんとなく親近感を持った。
読み始めて最初に感じたことは、「最近の純文学っぽい」ということだった。砂川文次、高瀬準子、「わが友スミス」の石田夏穂、永井みみ、前回の文藝賞の図野さん。テーマは違うけど、文章の流れ方が似ている。読みやすい。選評にもバリ山行が「抜群にリーダブル」というコメントがあった(リーダブルというのが最初何かわからなかったが、読み+やすいということか!僕はこういうカタカナが嫌い)。
この読みやすさというのは、僕としてはそれほどポイントが高くない。審査員も、「候補作の中では」という意味でこの読みやすさを挙げているのであって、本心から求めているのは、もっと不器用で、破綻した小説だろう。
とはいっても僕はこの頃、バリ山行を少しずつ読み進めている。会社の昼休みや、寝る前の15分くらいで。審査員が言っていたように、松永K三蔵さんの「奇をてらわない姿勢」には好感が持てる。それだけで十分、読めるのだ。
しかしこの「読みやすい」小説がこれからも主流になるなら、審査員も自然と奇をてらった「ちょっと面白い小説」に厳しくなっていくかも。少しでも気に食わない文章があると、それだけで「奇をてらわない、読みやすい小説」に負けそうだ。
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