未来に向けてのエール&はなむけ

内部監査/内部統制/ガバナンスに携わる方々へのアドバイス/メッセージとして日々専門職として思うところをまとめ、したためてみました。もしよろしければご参考いただきまして、皆様のさまざまなご判断の一助となれば幸いです。

1.自分事としてとらえる

「自分の車は誰でも喜んで洗車するが、レンタカーを洗車しようと思う人はいない」。取締役会にオーナー目線が必要な点を強調する目的で、バリュー投資家が海外のコーポレートガバナンス界でよく使う言葉です。自社を自分の家のようにとらえること。この意識と視点を持つとリスクの見逃しも少なくなるのでは。どこか他人事、はリスクに直結します。他社の不正事件の原因を見ていても、近年この点が特に増えてきているように気になります。パンデミック下のリモートワークやDXの推進もあり、サイバー攻撃が国内外で頻発していますがどこか他人事、ウチの会社は(これまで起きてないから)大丈夫、まさかウチの子に限って、な意識が蔓延しており危険です。健康と同じで失ってから人はその価値を再認識するものですが、痛い目に合う前に防ぎたい・防いで差し上げたいですよね。不祥事を起こしている「有名」「老舗」「大」企業の社員もまさかウチの会社が、ウチの部署は関係ないし大丈夫だよねという意識が多いです。この縦割り感が血(情報)の巡りを悪くし、コミュニケーションを妨げて不祥事の温床につながります。みずほ銀の5度に渡るシステム障害の原因も、組織内連携と外部ベンダーとのコミュニケーションがうまくなかったことが一因とされています。人生には、「上り坂・下り坂・まさか」の3つの坂があります。企業も同じ。私たちはまさかを意識して一段高いリスクアンテナを張ると良いでしょう。

2.変な犬いたらすぐ報告、血が出ているケースはすぐ止血を

監査中、ちょっとした違和感があればすぐ報告、そして目の前で出血(情報流出など)している場合は、バンドエイドをすぐ貼って止血してください。前者はパトロール強化、後者は応急措置による2次被害防止と換言できます。

3.モニタリングと監査の違い

ルール自体がおかしい、あるいは存在すべきなのに「ない」場合は積極的に改善提案を。法令改正やビジネスモデル変更など変化にキャッチアップできていないケースも含みます。会社の目的達成のためにあるべき統制があるかを見るのが本当の監査。既存ルールにあっているか否かを見るのはモニタリングに過ぎないのです。例えば。。。インサイダー取引をテーマに取り上げてみると。。。

【モニタリング】:インサイダー取引法等の準拠を確実にするもの

【監査】:方針、手続、研修、効果的なモニタリング統制、違反が発生した場合の懲戒処分の確立を確実にするためのレビュー

この違い、分かりますかね?

深みと価値提供感、求められるスキルが違いますよね。年を経るごとに到達するよう目指していってください。

3.正論も大事だが。。

人は感情の生き物であり、感情で動くものです。ロジカルシンキングがいつも効くとは限りません。夫婦喧嘩を想像してみてください。MBA的なロジカルシンキングはたいてい失敗し、さらに炎上します笑。「人を見て法を説け」という言葉もあります。私は外資系金融時代に「論理を用いて感情に訴える」手法を学び今でも意識しています。簡単に言うと海外用にはウイットに富んだユーモアやジョーク、日本人用にはシンプルに「笑かす」ということです笑。信頼感が高まり指摘事項やアドバイスも気持ちよく受け入れてくださる可能性が高まると思いますよ。

4.一つ上の視座で考えよう

最終レビューやプレゼンの中で、経営陣や部門責任者等からの問いに対し、

- このファイルにはこれこれ情報があります。以上。
- そこまで確認していません。
-  分かりません。そこまで知りません。。etc.

これは、プロとして失格。「ではどうするのか、どうしたらできるのか」が大事。「いつまで」にという期限も。心と魂を一つ一つのアクションに入れこんで、事務的に杓子定規には進めないこと。こもっていないことは相手にすぐ分かります。ハードル高く聞こえるかもしれませんがプロの世界では当たり前のことを当たり前にするレベルのこと。焦らず一歩一歩でokですので、皆さんそれぞれの長所を堅持しつつ更なる高みを目指していってください。

5. 経営陣が説明責任を果たせるようにサポート

何かが起こった際にきちんと社外へ経営陣が説明、例えば「ここまで統制構築して(企業努力し)防止していました」ができるようなエビデンスを伴った統制の確認を積み重ねていきましょう。

結び

限られたリソースでもさらに質を高めるやり方(知恵)はあります。例えば、各拠点のベストプラクティスの連携による改善促進やCSA(自己評価)活用などなど。楽しみながらご自身自らの頭を絞って編み出してみてください。

内部監査人は、監査対象部門にとって「この人の言うことなら、聞いてみよう!」と思わせるような相談できる監査人へ変わっていくことが大切です。(いわばコンサルタントへの脱却。ちなみにゴールまでを一緒に考えられる人なんかは必要とされる感が強いです。)このことが、会社全体にとってもより価値の高い内部監査やガバナンスにつながります。

以上です。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

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