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四行詩集 (2018年9月5日)

 奇跡を待つ

私はひたすらに待つてゐる
救ひの主の再来を
光が ふたゝび降り注ぐのを
祈りの手を組みつゝ待つてゐる


 弱き人のうたつた唄

私は弱いやうである
然(しか)し人には優しくできる
そのことを知つた時 私は
弱い人間ではないといふことも知つた


 祈り Ⅰ

かなしみが かなしみを呼び
ひとり 悶えてゐる時こそ
私は私の内なる神の
救済を求めて掌を合はす


 祈り Ⅱ

くづれゆくこゝろ
それをかきあつめて
父なる神にさゝげる
ふたゝび あるけますやうに と


 吹く風に

吹く風よ 踊るやうに
吹く風よ おまへの背に乗つて
どこか美しく 遠いところへ
私はいざなはれるまゝ飛んでゆきたい


 生きなほし

生きてゐるゆゑに
私はくるしい だが
私は生きてゆくだらう
もう一度 生きなほすやうに


 木のスケッチ

まつすぐに伸びる木のやうに
まつすぐに伸びる心がほしい
さう思つて スケッチ・ブックに
あこがれの対象をうつし取る


 首途

私の首途(かどで)を祝ふやうだ
日の光は今日もまぶしく
鳥はきらきらと歌ひながら
光の形を縫つてゐる


 Miroir

アスファルトに
照り返す日光は私への励まし
月光は私への慰め
アスファルトよ おまへは好い鏡だ


 やさしき人の歎き

元来私はやさしかつた
さういふ性質を持つてゐた
もう少し冷たくなれたら──
さう思つても 心はあたゝかいまゝだ


 (終曲)

神への無限の信仰と
やさしき心からの発生物
それこそ私の詩である
──いとしき人よ これを貴方に捧げたい

─────
2018.9.5
中村朱夏

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