見出し画像

はじめに

 企業の多くがいま、分野を問わず、プログラミングなどの高度な情報分野に精通している人材を確保しようと躍起になっています。また、政府もこのような人材の育成に力を入れており、さまざまな施策を試みています。特にソフトウェアを開発するためのプログラミング教育は、高校や大学だけでなく、小学校でも進められています。
 これだけ一般的になったプログラミングですが、ではいったい、プログラミングって何なのでしょう。プログラミング経験のない方の多くは、プログラミングで何ができるか、どうやって作るのか、なんとなくおぼろげな印象しか持っていないのではないでしょうか。
 プログラミングとは、表現手段のひとつです。つまり、何か表現したいことがあって、それを文章や絵画でかたちにすることと同じだと思います。これまでプログラミングは、一部の専門家だけのものでした。しかしいまや、プログラミング言語も種類が増えて扱いやすくなり、またプログラミングをする環境も整ってきて、小学生でもプログラミングができるようになりつつあります。
 本書では、仕事や学校でプログラマーとかかわりがある方、デジタルトランスフォーメーション(DX)を進めようとしている経営者、プログラミングを子どもに習わせたいと思っている大人など、これからプログラマーになるつもりはないけれど、プログラミングが気になる人、プログラミングのさわりだけでも知りたい人、プログラマーとうまくつきあっていきたい人を対象に、さまざまな疑問に答えていきたいと思っています。
 本書で取り上げた内容は、プログラミングをまったく知らない私の友人からの質問に対してお答えしたことがベースになっています。プログラミング言語のハウツー本ではありませんし、最後まで読んでも何らかのプログラミング言語の習得に直接役立つわけではありません。ただ、本書では、私のこれまでの経験でプログラマーとして大事だと思うことをなるべく網羅したつもりです。それは、かつて私が悩んだり考えたりしてきたことでもあります。プログミラングとはどんなもので、どんなことにプログラマーが楽しんだり苦労したりしているかを知り、感じたうえでプログラマーとつきあうと、彼らとより円滑にコミュニケーションがとれるようになるでしょう。あるいは、プログラマーにドヤ顔できるようになるかもしれません。
 最近では、そこそこプログラミングができるようになるのは、それほど難しいことではありません。しかし、ある程度慣れてくるとすぐに、プログラミング以外の知識がたくさん必要になります。本格的に会社の業務としてプログラミングをするようになったり、あるいは大学の研究を進めるための手段としてプログラミングをし始めたりするようになると、さらにさまざまな問題に直面します。いろいろな立場の人と意見を調整する必要も出てきます。困った人もたくさんいます。
 それは、どのような仕事でも同じではないでしょうか。プログラミングをしない人にとっても、仕事をするうえで、あるいはDXを進めるうえで、私の経験が少しでも役立てば嬉しく思います。
 「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」(オットー・ビスマルク)という偉そうな言葉がありますが、そうはいっても人は経験しなければ学ばないものです。こう訳されていますが、オリジナルは経験も歴史も大切だというニュアンスがあるそうです。そうしたことから、本書では、私の経験だけでなく、これまで大学や職場で出会ってきたいろいろな人の経験も盛り込みました。プログラミングをめぐる、その愛すべき愚かさも含めて、是非、楽しんでください。

1.0 はじめに


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?