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コンピュータ音楽のプログラミング

 学生の頃にジャズピアノを弾いていたり、音楽の認知過程を研究したり、ゲーム会社でBGMを作るアルバイトをしたりしていたことから、入社して最初の仕事はコンピュータ音楽の研究でした。大学では趣味と研究とバイトで忙しかったのですが、その3つが一緒になってずいぶん時間を有効に使えて幸せでした。
 はじめは、誰でも気軽に作曲できるツールなどを研究したり、当時流行りだしたパソコンで音楽を作ることができるDTM (Desktop Music)ソフトで音符を簡単に入力できるインタフェースなどを研究していました。
 そのうち、東京藝術大学の作曲家の先生と仕事をするようになり、現代音楽の作品のためのプログラムを書くことになります。とある会合で先生が講演されたとき、呼ばれてもいないのに懇親会に潜り込んで、意気投合したのがきっかけでした。東京、名古屋、ニューヨークなどのコンサートで、開発したソフトウェアを使った作品を発表しました。
 コンピュータ音楽と言えば新しい言葉に聞こえるかも知れませんが、バッハがサイコロを使った音楽を作ったり、19世紀末から20世紀前半の現代音楽などでは様々なテクノロジーを駆使したりしています。
 当時、日本のコンピュータ音楽の研究は、アメリカやフランスに比べて10年遅れている、と言われていました。ICMC (International Computer Music Conference)というコンピュータ音楽の国際学会に、日本からはほとんど投稿できていない、というのがその理由でした。そんなこととは知らず、藝大の先生と一緒にやった取り組みを投稿してみたら、幸いなことに通ってしまい、初めての海外出張となりました。今から思えば、日本は遅れているどころか、シンセサイザーなどの電子楽器は当時から最先端で、世界の音楽に大きな影響を与えていました。
 ここで開発したソフトウェアは、一般向けに使えるようにまとめて、製品化させてもらいました。このように、コンシューマ向けのことだけではなく、プロ向けに機能を考えることで、特徴的なソフトウェアに仕上がったと思います。

5. 藝大


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