見出し画像

鍾乳洞がどうやってできたか調べる

 山口大学で開催された隕石の研究者が集まる学会に参加したことがあります。近くにある秋吉台の巨大な鍾乳洞が圧巻です。天井から伸びる鍾乳石や、下から生える石筍、それらがつながった石柱なども美しいですが、小さな段々畑のような形の造形に魅了されました。秋芳洞では百枚皿という名前がついています。専門的には石灰華段丘 Travertine terraceと言います。百枚皿の前にボタンのついた小さな機械があって、押してみるとどうやって百枚皿ができたかの音声が流れます。ですが納得できません。何度も何度も押して聞いてみましたが、疑問が膨らむばかりです。
 そこで、大学に帰ってから、実験で再現してみようと試みました。本物の鍾乳洞は炭酸カルシウムが沈殿して、何百年という長い年月をかけて様々な形状を作ります。実験室で短時間で再現するために、溶解度が高く、温度に敏感な炭酸ナトリウムで代用しました。
 さらに、新たなモデルを確認するために、計算機でもシミュレーションするためのプログラムを開発しました。この結果を秋芳洞の館長でもあり、洞窟学会の会長でもあった先生にお見せしたところ、大いに気に入ってくださり、洞窟内の形状計測や水質分析を許可していただきました。休館日に作業をさせていただいたのですが、手間取ってしまって一日では終わりませんでした。次の日もやっていいよと言っていただいたので、観光客がたくさん見ている中、作業を続けました。猿山のサルの気分でした。

百枚皿


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?