デザイナーと一緒にプログラミングする最良のタイミング
よりよいインタフェースを作るためには、可能であれば、初期の段階、もしくはソフトウェアの外側ができた段階からデザイナーと一緒に開発するのが理想です。デザイナーは色や形といった外見のコスメティックな提案だけでなく、使う人の思考や嗜好、行動などを総合的に考えたインタフェースデザインのアイデアも出してくれます。デザイナーの多くは美術系の学校の出身で、そういった使う人の立場に立ったデザインの教育を受けています。近くにデザイナーがいない場合は、お金があれば外注してでもやるべきです。
普通は、プログラマー10人に対してデザイナー1人といった割合が多いかも知れませんが、Googleが買収した写真を扱うソフトウェアの会社は、その逆の割合で成功したそうです。
一番やってはいけないのは、ほぼ完成した段階で、「あとはかっこよくしてよ」とデザイナーに丸投げするパターンです。手遅れです。クソ建築をほぼ建てた後に、ル・コルビジエに頼んでもお手上げですよね。
また、プログラミングに限らず、プロジェクト全体を進める上でもデザイナーと一緒に仕事をすることは大変有益です。彼らは「デザインシンキング」と呼ばれる方法論を徹底的に訓練されています。デザインシンキングといっても、当たり前のことを当たり前に実行するわけですが、なかなか素人にはできません。デザインシンキングがビジネス系の研修でも取り上げられるようになって久しいですが、数日間教わっただけでは、なかなか身につかないと思った方がいいでしょう。研修を終えて、会場を一歩外に出た時点で半分は頭から抜けています。
また、デザイナーは発想法についても訓練を受けていますし、新しい発想法を常に模索しています。アイデアを出す会議のことをブレーンストーミングということがありますが、ボディストーミングという手法の開発に関わらせていただいたことがあります。お客さんからお題をいただいて、即興で演じる劇団の方と共同で取り組みました。
たとえば、未来の駅の改札機というお題を出されて、ひとりひとりが新しいシステムをイメージしながら改札を通っていく演技をします。頭で思いついてからそれを正しく伝わるように言葉にするのももちろん大切ですが、それでは得られない、伝えられないアイデアを出すことができました。
ところで、新しいことを考える研究室には、藤子不二雄の『ドラえもん』を全巻揃えている、という話をよく聞きます。ドラえもんの道具を一つでも実現したい、ということなのでしょう。ある企業の研究室では、秋本治の『こちら亀有公園前派出所』を揃えている、という話を聞きました。両津さんが試みては必ず大失敗するのも、新しいビジネスモデルの宝庫だといいます。この研究室はいつも斬新なアイデアを出していて、目標にしていました。
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