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第12回 続々.誠意と奇跡

安祥寺に奇跡的に入れて貰えてなるほどこれでは参拝客は入れられないなと思いました。

寺はひどく荒れていたのです。
昨日の雨のせいもありますが、ぬかるみがあちこちにあり、木々も散在しています。   

しげしげと見ていると、先程の老人が来て、あんたさんは何しに来たんかな?と聞きます。

伊勢物語が好きで、と言うと、ああ聞いた事がある、と言います。  

私は何か拍子抜けした感じですが、老人は色々と案内してくれました。
平安時代が好きだと言うと遺構の堀が一つだけあると見せてくれました。

すっかり意気投合して歩いていると、老人は、あんたさんはいい時に来なさったと何度も言います。

最初は昨日の雨と違って晴れたからかと思いましたが、どうも違う様です。
何故ですか?と聞くと、

和尚さんが昔気質の人で本ばかり読んで寺の経営をしてくれない。土地も売ってしまった。

確かに横は洛東高校であり、昼休みか生徒の声が聞こえてきます。
昔は、醍醐寺とか従えとったらしいのに。それで和尚さんが絶対に人を入れて見せてはあかんと言うとったんじや。

そこで老人は笑顔で言いました。
それで今日はな、その和尚さんが留守なんじゃよ!

なるほど、それで入れて貰えたのかと私は合点しました。
それでこの寺を見てどうする積りなんじゃ?と老人はまた聞いてきました。

伊勢物語誕生という本を書いてみたくて、と言うと老人の表情はみるみる変わって号泣しだしました。

書いて下され!書いてこの寺をまた立派にして下され!と老人は哀願しました。
書きますからねと私は約束して安祥寺を去りました。

その後、醍醐寺ヘ行くとたくさんの人を使って拝観料も2種類取って経営は見事でした。

その1年後、私は伊勢物語誕生を出版できたのでした。

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