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第153回 文覚(もんがく)の挙兵の勧め

治承4(1180)年7月のある朝方、伊豆では僧・文覚が表情を強張らせて頼朝の所にやってきました。
頼朝は近習の安達盛長と共に対面しました。7年前に伊豆に流されてきた文覚は、すでに何回か頼朝とは会っていました。
最初は、頼朝の方から、懐かしき京から流されてきた僧がいるというので話を聞きにいったのが最初でした。そして文覚と頼朝は時期こそ違え、後白河法皇の姉、上西門院に仕えていた共通点がありました。
その朝、文覚は何か白い包みを首にかけていました。そしてそれを頼朝の前に置き、包みをおもむろに開くと、何と中から一つの髑髏(どくろ)が姿を現しました。
「これは亡き頭殿(こうのとの)-お父上の御印でございます。平治の乱の後、獄舎の下に埋もれていたのを拙僧が貰い受けていたのです・・・佐殿(すげどの)、以仁王の令旨を受け取った者への平家の追討軍は必ずここに来ます。貴方様は源氏の嫡男ゆえ、むざむざ殺される前に挙兵なさって下さいませ」

文覚の言葉に頼朝ははっと息を呑み、髑髏をまじまじと見ました。曲者の文覚が持ってきたものであるから怪しいと思いながらも、父のものだと言われるとやはり涙が出てきました。(続く)

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