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第97回 「宇治十帖」の人々(1)

主人公薫は、身体からかぐわい香りが自然に出てくるという事からつけられています。そういう人も世の中にはいるのでしょうね。余談ですが、高島忠夫さんの奥さん、寿美花代さん(どちらも故人)の入浴した後のお風呂がとてもよい香りがするというので噂になっていて、友人たちが高島さんに入らしてくれと頼んだけれども高島さんは許さなかったという話です。

匂宮は全てにおいて同世代の薫に対抗心を持っています。だから香を衣服に焚き染めています。身分は天皇の皇子だから元々上なんですが。
大学時代、元々体臭が強い男子なんですが、更に余りお風呂に入ってないので遠くからでも、やって来たらすぐ分かり「匂宮が来たよ」なって言われてましたっけ(笑)

不思議なのは「浮舟の母」です。八の宮の北の方の姪だったのですが、北の方の死後、八の宮の愛を受け娘(浮舟)を産みます。しかし、八の宮は世を儚んで俗聖となるため娘を認知しなかったので、中将の君(浮舟母)は娘を連れて陸奥守の後妻となって東国に行きます。
ただ、「宇治十帖」の初めの「橋姫」では、八の宮は北の方を失って、俗聖に入ったとあり、浮舟の存在がないので、紫式部が後半になって中の君の異母妹の存在を考えだして挿入したという説もあります。

現実世界の摂関家の御曹司・頼通にも似たような事が起きていて、頼通は正室・隆姫を愛しますが子ができません。そして隆姫に仕えていた従妹(隆姫の母の兄・源憲定の娘)に手を付け、1025年、男児・通房が生まれます。隆姫はおかんむりだったみたいですが、後継ぎがやっとできたという事で周囲は大賑わいです。ただその通房も20歳で早世してしまいますが。

通房の誕生の3年後、頼通は味をしめたのか、今度は母の倫子に仕えていた、隆姫の姪祇子(異母弟・頼成ー具平親王と大顔の子ーの娘)に手をつけ、4男1女を儲けています。その4番目が後嗣となった師実です。

紫式部はよく事実を少し変えて物語の中に登場させ、読者が「ああ、あの事か」と思わせるのが好きだったようですが、(嫂・源典侍や頓死した大顔ー夕顔など)ただ前述の1025年は「宇治十帖」執筆にはさすがに少し遅い? それとも頼通が「宇治十帖」を読んで妻の親族もありかなと思ったかも知れません。(続く)

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