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第57回 源為義、息子に処刑される(2)

為義は八男の為朝と去就を話し合っていました。
「京ではもう三百年も死刑はない。流罪で済むであろう」
為義は力なく何かに賭ける様に言いました。為朝は、
「そんな甘いものではないと私は思います・・・お別れでござる。父上、兄者方」
こうして為朝は一人北に向かって姿を消しました。為義と息子らは南の義朝の邸を目指しました。
 途中、義朝の方から輿が用意され、為義は長男の優しさに涙しました。為朝以外の息子たちも怪訝な表情を見せながら、ここは長兄義朝を信じるしかありませんでした。

朝廷では、信西が中心になって事後処理に臨んでいました。
「主上の温情により、降伏してきた者には罪を軽くする」
というお触れを信じて、武士たちが続々と投降してきました。
同時に信西の命令で、頼長の墓が検死のため、掘り起こされました。実は死んだと言って逃亡していないかどうか確かめたのです。
かつて「悪左府」と人々に畏怖されたその遺体は物の様に扱われ、そして無残にもその後、放置され、野犬の餌となりました。
「これは罪人の身体じゃ。決して手厚く葬ってなどはならぬ」
頼長の母方の伯父の僧はその命令に無念の涙を流し、嗚咽するのでした。

信西は秘かに清盛を呼んでいました。
「そなたに、叔父の平忠正を斬って貰えると義朝にも命令しやすい」
驚く清盛に、信西は不敵に笑っていました。(続く)


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