緑内障の点眼液、ちゃんと「使わない」「使えない」問題にどう対応したらよいですか?

 慢性疾患用薬の効果は必ずしも大きなものではなく、心血管疾患予防に対する効果はスタチンで20~30%程度【1】、SGLT2阻害薬やGLP1作動薬では10~20%程度です【2】。新型コロナウイルスワクチンの予防効果が99.5%であることを考えれば、これら薬剤効果の小ささが良く分かると思います。

 しかし一方で、継続的な使用によって生命予後の改善が大きく見込める薬も少なからず存在します。1型糖尿病患者のインスリン気管支喘息患者の吸入用ステロイドはその代表でしょう。患者さんによっては、抗凝固療法ビスホスホネート製剤なども合併症リスクを大きく低下させる薬剤と言えるかもしれません。

 そして、もう一つ忘れてはいけない薬として、緑内障治療薬(点眼薬)があります。前回の記事でも少しだけ言及したように、同薬のアドヒアランスは決して高くはありませんでしたよね。

 実は、緑内障の点眼薬を使用している人のうち、約6割が適切に点眼できていない可能性も指摘されています【3】。たかが点眼液、されど点眼液です。今回の記事では緑内障治療薬(点眼薬)について、服薬説明に役立つエビデンスを紹介したいと思います。

緑内障点眼液のアドヒアランスはどんなもん?

 緑内障治療薬のアドヒアランスに関して、2005年に報告されたシステマティックレビュー【4】では、80%と良好なアドヒアランスを示した研究がある一方で、5%と非常に悪いアドヒアランスを示した研究もあり、被験者集団によって大きなばらつきを認めるという結果でした。

 また、2014年に報告された台湾の研究【5】では、新たに緑内障と診断された患者のうち、2年間にわたり点眼液を継続的に使用できたのは25%に満たないという結果でした。

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