プラセボ効果とは?

 薬の効果は、その厳密な効果であるEfficacyEffectivenessに分けることができる。Effectivenessさらに、「プラセボ効果」「その他の効果」に分けることができるが、「薬の効果とは」でも指摘したように、両者を厳密に区分することもまた難しい。

 一般的に、プラセボ(偽薬)を投与したにも関わらず、疾病が改善したり治癒するというような、治療効果に良い影響をもたらす効果のことをプラセボ効果と呼ぶ。

プラセボ効果を視覚的に把握する

 厳密な意味でのプラセボ効果を視覚的に把握するにあたり、たとえば、慢性疼痛に対する鍼治療の有効性を検討したランダム化比較試験、39研究の統合解析の結果が参考になる。

Andrew J Vickers, et al : Acupuncture for Chronic Pain: Update of an Individual Patient Data Meta-Analysis. J Pain.2018;19:455-74.PMID:29198932

 この研究では非特異的筋骨格筋系疼痛、変形性関節症、慢性頭痛に対する鍼治療の効果の大きさを、偽の鍼治療と比較した場合と、無治療(治療なし)と比較した場合で検討している。なお、効果の大きさは点数で評価されており、数字が大きいほど大きな効果であることを意味する。

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 図に示したように、どの種類に疼痛においても、偽の鍼治療と比較した場合の効果より、無治療と比較した効果の方が大きい。このことはまた、偽の鍼治療と無治療で、疼痛に対する効果に差があるということだ。どちらも本物の鍼治療はしていないはずなのに、なぜこのようなことが起こるのだろうか。

 鍼治療の効果は大きく、①鍼そのものの効果 ②鍼治療という施術行為がもたらす効果 ③自然経過による痛みの緩和を含む①および②以外の効果、の3つに分けることができる。そして、無治療と比較した場合の鍼治療の効果①~③の全てを含むものであり、偽の鍼治療と比較した場合の鍼治療の効果①と③から成り立っているものと考えられる。この場合、「無治療と比較した場合の鍼治療の効果」から「偽の鍼治療と比較した場合の鍼治療の効果」を差し引くことで「鍼治療という施術行為がもたらす効果(②)」を見積もることができ、この効果こそが厳密な意味でのプラセボ効果に近しいものと考えらえれる。

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