コホート研究とランダム化比較試験の妥当性

医学的な「効果」を検討する上で重要な研究デザイン的要素

 医学的な効果を検討するうえで重要な研究デザイン的要素に、集団を対象としていること比較妥当性に優れた対照群を設定していることの2点を挙げることができる。集団を対象とすることで、研究結果の外的妥当性を向上させることができる。さらに比較妥当性に優れた対照群を設定することで、研究結果の内的妥当性を向上させることができる。

❖医学的な「効果」を検討する上で重要な研究デザイン的要素❖
①集団を対象としていること(外的妥当性の問題)
②比較妥当性に優れた対照群を設定していること(内的妥当性の問題)

集団を対象とした研究デザイン(コホート研究)

 集団を対象とし、なおかつ比較対照群を設定した研究の中でも、最もシンプルなデザインがコホート研究である。コホートとは古代ローマの歩兵隊単位を意味する言葉が語源となっているが、統計学や人口学では、年齢や性別などの共通属性をもつ人口群を意味する。疫学的には一定期間にわたり追跡・観察される研究対象(被験者)集団と考えれば良い。

 コホート研究では研究対象集団曝露のある群ない群に分け、アウトカム(疾病など)の発症率を比較する。なお、疫学でいう曝露とは「特定の状態」を意味する言葉であり、例えば喫煙飲酒などをあげることができる。当然ながら、食習慣運動習慣なども曝露である。また、服用している薬についても曝露と捉えることができる。

 コホート研究は大規模な集団を対象としていることから外的妥当性は決して低くない。しかし、曝露群と非曝露群の比較妥当性についてはこの限りではない。つまり、曝露を有している集団と、そうでない集団の背景特性にギャップがあるということだ。例えば喫煙を曝露と考えた場合、喫煙している人は飲酒量も多く生活習慣も偏りがちかもしれない。したがって、喫煙をしていない人(曝露のない人)に比べて、喫煙の影響とは独立して潜在的に健康リスクが高い集団である可能性がある。

 また、スタチン系薬剤を曝露と考えた場合、スタチン系薬剤を服用している人(曝露のある人)は脂質異常症を有する健康リスクの高い人と考えることもできるが、医療機関を受診するような健康に関心の高い人であり、きちんと薬を服薬管理できる程度には健康状態が良好な人ともいえる。他方で、スタチン系薬剤を服用していない人(曝露のない人)は、脂質異常症を有していない健康的な人と考えることもできるが、健康診断のような予防的医療を受けないばかりか、そもそも医療機関の受診を意図しないような健康に対して関心の低い人かもしれない。あるいは、残された余命が限られており、スタチン系薬剤の適用がない人たち(つまり潜在的な死亡リスクが高い人)かもしれない。曝露群と非曝露群で背景特性が異なっている場合、スタチン系薬剤の効果を適切に比較することは困難となる。すなわち内的妥当性が大きく低下することになる。

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