仮説生成と仮説検証(一次アウトカムの考え方)

仮説の生成と検証 

 臨床研究は大きく仮説生成型仮説検証型に分けることができる。仮説生成型とは、文字通り臨床医学的な仮説の提起を目的とした研究であり、症例対照研究コホート研究などの観察研究、あるいは複数の症例報告を集めて定性的な考察を加える症例集積研究が該当する。これら研究から得られた知見はあくまでも臨床医学的な仮説であり、検証された仮説ではないことに注意が必要だ。

 これに対して基礎(医学)研究は基礎医学(科学)的な仮説の検証を目的とした研究と考えて良いだろう。ここで重要なポイントは基礎医学的仮説臨床医学的仮説、そして仮説生成仮説検証の区別である。なお、システマティックレビュー・メタ分析はエビデンスレベルが高いなどと言われることも多いが、上記分類上は臨床医学的な仮説生成のための研究という要素が強い。少なくとも厳密な仮説検証型の研究ではない

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仮説を検証するとは?

 「臨床医学的な仮説を検証する」とは、観察研究などから得られた臨床医学的仮説に基づき、予測される医学的介入効果の大きさを実験的環境下で検証することである。厳密な意味での仮説検証型研究は適切なサンプル計算に基づいて必要症例数を見積もったランダム化比較試験以外に存在しない

 有意味な研究結果を得るためには、研究に必要な症例数をあらかじめ見積もる必要がある。10人を対象にアンケート調査を行った結果と、1万人を対象にアンケート調査を行った結果、どちらが偶然の影響を受けにくいかを考えれば分かりやすいと思う。偶然の影響を排除し、常に正しい研究結果を得るためには、研究の組み入れ基準を満たす全ての人を対象に調査を行うことが必要である(これを全数調査と呼ぶ)。しかし、それではあまりにも現実的ではない。したがって、研究結果の有意味性を損なわず、かつ現実的な症例数で研究を行うことが一般的である(これを標本調査と呼ぶ)。

 必要症例数を見積もるプロセスはサンプル計算と呼ばれ、偶然による誤差(αエラーと呼ぶ)の発生確率を5%以下に、見積もり症例数不足による統計的検出力の低下度を10%~20%(βエラーと呼ぶ)に設定することが一般的である。

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 ランダム化比較試験が仮説検証型に分類できる所以は、盲検化や隠蔽化などによる内的妥当性の高さ(バイアスの制御)というよりはむしろ、厳密なサンプル計算(偶然の排除)によるところが大きい。いくら研究結果からバイアスが排除できたとしても仮説生成的知見と検証された仮説という知見では格が違う。したがって、パイロットスタディのように必要症例数の見積もりに適切なサンプル計算を行っていない研究は、たとえランダム化比較試験であろうが仮説生成型の研究である。なお、パイロット研究とは研究計画が適切かどうかを確かめたり、修正の必要がないかを調べるために行なう小人数の被験者を対象とした研究のことだ。

仮説検証のためのアウトカム

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