コホート研究の内的妥当性と選択バイアス

 これまでに繰り返し述べてきたとおり、臨床研究において内的妥当性の高い研究デザインはランダム化比較試験である。

 対してコホート研究に代表されるような観察研究の内的妥当性は必ずしも高くない。情報は「真実」のみならず「偶然」「バイアス」の3つの要素が互いに入り交じっていることは既に解説した。

 ランダム化比較試験では厳密なサンプル計算に基づき被験者数が決定されるため偶然の影響を受けにくく、ランダム化や盲検化を行うことでバイアスを制御することが可能となる。

 大規模なデータベースを解析したコホート研究では、ランダム化比較試験とは比較にならないくらい膨大な症例を研究対象とするため、解析者組み入れに関わる偶然の影響は小さい。このことはまた、コホート研究の外的妥当性の高さと表現されることもある(しかし他方で、数十万から数百万規模のデータベースを解析しているコホート研究では、解析の精度が極めて高く(つまり95%信頼区間の幅が小さい)、示された統計的有意な差が、実生活に影響力を持ちうる臨床的有意な差であるかどうかについて議論の余地もある)

コホート研究の内的妥当性を脅かすもの

 コホート研究の結果で大きな問題となるのが「バイアス」の影響である。バイアスは一般的に「選択バイアス」「情報バイアス」「交絡バイアス」の3つに分類することができる。この記事ではコホート研究における選択バイアスについて解説する。

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