盲検化とPROBE法について

 ランダム化比較試験における情報バイアスを制御し、研究結果の内的妥当性を高める手法が盲検化であった。

 一般的なプラセボ対照ランダム化比較試験においては、研究に参加している被験者及び治療を担当している医師の双方を盲検化する二重盲検法(double blind)が用いられる。より具体的には、被験者も治療担当医も介入群、非介入群どちらに割り付けられているか分からないまま治療を受ける(治療を行う)ことで、結果に与えうる情報バイアスの影響を排除することを目的とした手法が二重盲検法である。

二重盲検法が適用できない研究

 ランダム化比較試験では常に二重盲検法が採用できるとは限らない。例えば、手術介入と薬物療法(あるいは経過観察)を比較するようなランダム化比較試験では、被験者や手術を担当する医師を厳密な意味で盲検化することは不可能であろう。厳格な血圧コントロール治療と標準的な血圧コントロール治療を比較するような研究も同様である。このように治療方針の比較を行う研究では二重盲検法が採用しにくいケースが多い。あるいはプラセボを用いず、標準治療単独と標準治療に新薬を上乗せした場合を比較するようなランダム化比較試験でも二重盲検は困難である。

❖二重盲検法の採用が困難なランダム化比較試験
①治療方針の比較(手術介入vs薬物療法、厳格治療vs標準治療 など)
②標準治療に対する上乗せ介入と標準治療単独の比較

PROBE法

 二重盲検法の採用が困難なランダム化比較試験ではPROBE(prospective, randomised, open-label, blinded endpoint)と呼ばれる手法を用いることが多い。

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 PROBE法は研究に参加している被験者、そして治療を担当している医師ともに、どんな治療に割り当てられているのか知っている(非盲検)。しかし、検討しているアウトカムを評価する人が、担当医から報告されたイベントについて、割り付けを知らされていないまま客観的に評価し、最終イベントとして確定していく。つまり、アウトカム評価者を盲検化することによって情報バイアスをコントロールする手法がPROBEなのだ。

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 しかし、検討しているアウトカムについて、アウトカムが発症しているにも関わらず治療担当医が「発症」と認知しなければ、アウトカムを最終的に確定するエンドポイント独立評価委員の判定対象にすらならない。例えば、実薬群でアウトカムの発症を治療担当医が発症と認知せず、エンドポイント評価委員に報告しなければ、本来はアウトカム発症としてカウントされるべきイベントがカウントされないという事態が起こり得る。このような事態を防ぐために、PROBE法採用試験では検討したいアウトカムを慎重に設定しなければならない。

PROBE法とアウトカム設定

 一般的に、PROBE法では「~による入院」といったような治療担当医の主観的要素が入り込むアウトカムの設定は不適切とされている。入院適用は医師の判断によって(恣意的に)変えることができてしまうからだ。実薬群に割り付けられているから、という理由で入院の適用基準を厳しめに評価したりと、アウトカムの判定に小さいくないバイアスがかかってしまう。こうしたバイアスが研究結果の内的妥当性を損なう大きな要因となるため、PROBE法採用試験では「死亡」など、誰が評価しても客観的に判断できるアウトカムの設定が望ましいとされる。

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PROBE法と二重盲検法の違い 

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