アウトカム発症における偶然の影響と複合アウトカムの問題

 ランダム化比較試験において、最も重要なアウトカムが一次アウトカムであった。

 検証したいアウトカムの見積もり発症率に基づいて必要症例数が決まるという事は、研究結果の解釈においても極めて重要な論点である。膨大な症例数を10年間にわたり追跡しても介入群、非介入群ともにアウトカムの発症が0件であったとしたら研究として成立しない。そう言う意味では、ランダム化比較試験は発症頻度が稀なアウトカム(例えば若年層の死亡)の検討には向いていないともいえる。

ランダム化比較試験が示しているアウトカム発症とそのリスク

 ランダム化比較試験で検討されるアウトカムは、介入とは無関係に発生しうる。例えば死亡リスクを検討した研究では非介入群でも介入群でも「死亡」が発症するわけだ。介入効果とはおおよそ、標的アウトカムの発症を限りなくゼロにするものではなく、単位時間あたりにおいて、介入がない場合に比べてどれだけ発症頻度を減らせるかという相対的なリスクの度合いで示されるものある。

 この「単位時間あたり」というのが重要なポイントである。よくよく考えれば、あらゆる生命にとって「死亡」率は100%であり、人はいつか必ず死んでしまう。無限に追跡調査を行えば、介入しようが、介入しなかろうが、いずれ人は死んでしまうのである。ランダム化比較試験の結果は、追跡期間という単位時間当たりにおけるアウトカム発生状況のスナップショットと言っても良い。つまりこの場合、ある一時点から見れば「死亡」は先送りされているのであって、不死身の人が増えているわけではない

アウトカム発症と偶然の影響

 ランダム化比較試験において一次アウトカムを厳密に設定する目的の一つは、研究結果に与えうる偶然の影響を小さくするためであった。一般的にイベント発症率が小さいアウトカム(稀な疾患・合併症)ほど、偶然の影響が強くなる

 例えば、1000人中1人しか発症しないアウトカムであれば、1000人の選ばれ方次第では、アウトカム発症者が0人の可能性もありうるし、3人の可能性もありうる。この1000人の選ばれ方は全くの偶然によって決定されてしまう側面が強い。

 2000人を対象にランダム化比較試験を行ったとしよう。その結果、アウトカムの発症が介入群で1人/1000人(0.1%)、非介入群で2人/1000人(0.2%)だったとしても、リスクが半減するとは言い難いものがある。たまたま介入群でアウトカム発症が1人多かったら、あるいは逆に非介入群でアウトカム発症が1人少なかったら……容易に結果が覆ってしまうだろう。この場合、被験者数を増やすことで、偶然の影響を小さくさせ、より精度の高い解析を行う事ができる。

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複合アウトカムとその問題

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